2021年12月30日:パート2

 夕方。高崎駅周辺のカフェで、熱いロイヤルミルクティーを飲んでいる。家では、絶対に作れない代物だ。ふうむ。自宅で本格的な「ロイヤル」を味合うためには、あの「ガーッ」という音と水蒸気の出る不思議な機械(?)を買うしかないな。

 どうでもいいことだけど、あの機械の音、ほぼ100%、声で再現出来る。お見せ出来ないのが残念だ。

 今日はコートではなく、ジャンパー姿で市内を視察中。あちこちで、いろいろな笑顔に出逢った。それだけで、気持ちが明るくなる。来るべき「オミクロン株」の急拡大を想定しつつ、あらゆる手段で県民を守らねばならない!そのことを、改めて心に強く誓った。

 さて、年内に書いておかねばならないブログが山ほどあることに気がついた。ここから大晦日にかけて、「量産体制」に入る。

 取り敢えず、子豚への豚熱ワクチンを巡る報道に関するブログの続編(その④)から始めよう。

 12月25日、宮城県の養豚場での患畜が確認された。この農場からの出荷に関係していたのは、11県の26農場。群馬県でも、2つの農場に送られていた31頭の殺処分が確定した。

 翌26日、上記の2つの農場における31頭の殺処分を含む防疫措置が完了した。その後の状況も、注意深くモニターしている。影響が広がっていないことを祈るばかりだ。

 12月12日(パート2)のブログで、その③を記した。その中で、12月2日付けの地元紙(上毛新聞)の社会面に掲載された「子豚へのワクチン接種」に関する記事を取り上げた。その内容について、幾つか誤解を与えかねないと懸念する以下の3つの点を指摘した。

(1)県が政府(農水省)に対して、適切なワクチン接種時期の明示をお願いし続けていること。
(2)政府の7月の方針を農家に通知しなかった群馬県の対応は、他の多くの養豚県と同じであったこと。
(3)この記事の内容が、県と養豚農家との信頼関係を揺るがす方向に働く可能性があること。

 このブログの末尾に、「その③」の内容を添付しておく。合わせて読んでもらえると、分かりやすいと思う。

 先ずは(1)に関して追記する。11月25日に農水省を訪問。新たに就任したばかりの金子原二郎農水大臣と面会した。金子大臣には、「政府から、科学的根拠を踏まえたワクチン接種に関する指標とそれに基づく接種の適期の明示」をお願いした。

 過去の豚熱発生時における農水省の支援には感謝しつつも、政府からは「どのような検査結果に基づいて、農家に接種適期を示したらいいのか?」という点に関して、明確な方針が打ち出されていなかったからだ。現時点でも、その状況は変わっていない。

 群馬県は、母豚、子豚、さらに肥育豚の抗体保有状況を検査し、獣医師と相談しながら、農場ごとの適期を判断している。が、農場によっては、子豚の移行抗体の消失が早まっている場所もあれば、50日齢60日齢まで消失しない農家もあるのが実態だ。

 加えて、同一農場内でも、移行抗体の消失がバラついている場合がある。だからこそ、国からの明確な指示を求めて来た。すなわち、豚熱ワクチン接種の適期に関して、科学的に立証された統一的な基準は存在しない!その事実を、農家の皆さんや県民の方々に、改めてお知らせしておきたいと思う。

 (2)に関しても、「その③」で述べた内容を捕捉しておく。12月2日付けの上毛新聞の記事にあるとおり、本年7月、農林水産省が、従来の「日齢50日~60日」としていた接種時期の基準を「前倒しについて、より柔軟に対応することが適当」とする通知を発出したのは事実だ。

 県としては、この通知の内容を事務的な伝達と捉えた。そのため、文書をそのまま全農家に転送するのではなく、家畜衛生保健所を通じて、個々の農家の皆さんに、個別に丁寧な説明を行いつつ、引き続き対策を進めるという対応を取った。

 しかしながら、この時点で、養豚農家の方々に、「一律にやるのではなく、個別に対応する」という県の方針を、明確に伝えるべきだった。毎日、豚熱発生の恐怖という塗炭の苦しみに晒されている農家の方々の不安や焦燥を考えると、情報共有の努力と配慮が足りなかった。この点は、率直に反省している。

 確かに、記事が言及している茨城県では、8月の段階で、その時点での県独自の分析結果と国の方針を、併せて農家に通知している。が、記事に登場する栃木県、岐阜県においては、国の方針に関して、農家に特段の通知は行っていない。基本的に、群馬県と同様の個別対応を行なっていることを確認した。群馬と違うのは、栃木と岐阜では、夏以降に豚熱が発生していないことだ。もっと言うと、豚熱のワクチン接種を実施している大多数の県でも、茨城県のような通知は行なっていないと分かった。

 改めて、次の事実を、養豚農家の皆さん、県民の皆さんにご理解いただきたい。それは、「豚熱のワクチン接種は、早ければ良いという簡単な問題ではない」ということだ。実際、早すぎると抗体が出来ず、適切な効果が得られない場合もある。

 思い返して見ると、当時、農政部からは、次のような報告を受けていた。

 「個々の養豚農家の意見を聞いても、『ワクチン接種を一律に前倒しした方が良いというデータはなく、個別に判断する必要がある』との意見が多数を占めています。こうした声も考慮しつつ、養豚協会とも連携しつつ、取り組んでいるところです」と。知事として、必死に頑張ってくれている担当部局(現場)からの報告を信用するのは、当然のことだ。

 こうした様々な状況を勘案の上、群馬県としては、国の通知を受けて「接種時期を一律に早める」という方式より、「農場ごとに検査を実施した上で、適切な接種のタイミングを割り出し、適切なタイミングで接種を行う」方が、むしろ丁寧な対応だと判断した。

 実務的には、農家の状況に応じて、前倒し等を含め柔軟に対応を行っていたという報告を受けている。事実、4例目、5例目が発生した農場では、前倒しでのワクチン接種を実施していた。

 同時に、県として「適切な接種時期」を割り出すための独自の検査・分析も、並行して続けていた。幾つかの理由で時間はかかったものの、11月に何とか、その結果がまとまった。そこで、1つの参考として、養豚農家に周知させてもらった。

 今回の件に関しては、上記のような経緯がある。が、前述したように、国の通知が出た後、速やかに、その時点での県としての方針を、文書等を通じて、養豚農家の皆さんに正確に情報提供すべきだった。毎日、大きな不安を抱えながら耐え抜いている農家の皆さんの心情を考えると、明らかに知事の配慮が不足していた。

 加えて言うと、農家の人たちに県の検査結果を報告するやり方やタイミングに関しても、熟慮が必要だった。農家の皆さんに不安を与えてしまったことに関しては、知事として、大変、申し訳なく感じている。だからこそ、会見で率直にお詫びを申し上げたのだ。

 あ、そろそろ家に戻らないと。この続きは、その⑤で。