2021年9月30日:パート2

 20時30分。食後の紅茶を飲みながら、パソコンの電源を入れた。大きく深呼吸をした後で、総裁選に関するブログの続編を書き始めた。

 昨日の定例会見の後半で、今回の自民党総裁選の結果に触れた。岸田新総裁と3人の候補者(河野氏、高市氏、野田氏)への思いを語った後、自らの正直な心情を吐露した。

 「今度の総裁選で、私自身が本気で応援していた河野太郎候補が当選に届かなかったのは、とても残念でした。が、それでも、群馬県の党員投票では、河野候補が過半数(5割)を獲得してトップでした。この結果には、安堵しました。」

 「それもそのはず。ここまで知事が前面に出て支援した河野太郎氏が、万一、他の3人の候補者に遅れを取るようなことがあれば、(河野候補に申し訳が立たない上に)私自身(知事)の面目も丸潰れになるところでした。(苦笑)」

 「実際、河野太郎候補が出馬表明を行った直後から、自民党県議の皆さん(全員)はもちろんのこと、主要な職域団体の代表や地域の幹部の方々、県内12市の保守系の市議(ほぼ全員)の皆さん、県内の山本一太後援会役員等を含め、連日、大勢の自民党関係者や党員に影響力のある人たちに、電話で河野候補への支持を呼びかけました。」

 「加えて、最初から最後まで、地元事務所を挙げて、党員への電話作戦を展開しました。私の守備範囲である群馬県では、全力を尽くしました。だからこそ、群馬の党員選挙で勝てたのは、本当に嬉しかったです!」

 更にこう続けた。

 「それにしても、改めて、選挙とは、政治とは、恐ろしいものだと感じました。投票日当日の午前中に開かれた河野太郎氏の決起大会には、91名の自民党議員が出席したと聞いていました。当初は94名が来ると言っていたのが、直前で3名減ったとのこと。それでも、91票以上になることは間違いないと考えていました。」

 「河野陣営の分析では、国会議員票で(固く見ても)104票は取れると計算していたようです。が、第1回目の投票で、河野候補が獲得した議員票が86票に留まったことに、驚きを禁じ得ませんでした。」

 「最後の1日、2日で、恐らく20票、引き剥がされたことになります。特に、決起大会が終わった後、午後の投票までに更に5名が翻意させられたことになります。派閥の締め付けって、スゴイんだなと思いました。」

 「まあ、(24年も国会議員をやっただけに)政治とはそういうものだ、国会議員とはそんなものだと十分、分かっています。が、それでも、本当に嫌な世界だなと思ってしまいました。(苦笑)」

 ここまで書いて、前回の総裁選のことが頭を過ぎった。あの時は、菅総理が党内主要派閥の支援を受け、377票で圧勝した。岸田候補(89票)、石破候補(68票)を全く寄せ付けなかった。あれからまだ1年しか経っていない!

 もし世界が「新型コロナ感染症によるパンデミック」という予期せぬ事態に遭遇していなかったら、菅内閣は本格政権になっていたに違いない。厳しい状況の中でも、菅首相は、数々の難問に立ち向かい、幾つもの実績を上げた。まさに「プロの仕事師」だった。

 しかしながら、新型コロナ問題への対応で人気を落とし、内閣支持率はジワジワと下がり続けた。総選挙が近づくにつれ、「菅総理のもとでは、次の選挙は戦えない」という声が(選挙基盤の弱い若手を中心に)起こり始めた。その動きは、「菅総理が党役員人事を刷新し、総裁選の前に解散に打って出る可能性が高い」みたいな報道を契機に、一気に加速した。

 え?練達の政治家である菅総理が、党内の空気を読み違えたわけではない。上記のシナリオは、総理の側近たちが「様々な可能性の中のシナリオの1つとして検討していた」だけだ。もともと、党内の多くの議員たちが、「支持率の低い菅総理を変える」キッカケを探していた。遅かれ早かれ、こうした展開は不可避だった。

 何度も言うが、自分も国会議員だった。しかも、24年のキャリアを持つベテラン議員だ。総選挙を控えた衆院議員の人たちの心理は、痛いほど良く分かる。口でどんなにカッコいいことを言おうが、選挙に落ちたら元も子もない。特に、常在戦場の衆議院議員の「生存本能」は、凄まじいほど強い!

 近いうちに選挙があると分かっている状況の中で、内閣支持率が低下すれば、どうしても「新しい総理にすげ替えよう」という動きになる。そのことは、十分、理解している。

 が、全て分かってはいるものの、「たった1年前に圧倒的な多数で選んだ自分たちの総裁(総理)を、国民からの支持が下がっている(=これでは次の選挙に勝てない)という理由で、何の逡巡もなく引き摺り下ろそうとする」行動には、強い不快感を覚える。永田町の外から見ているから、尚更だ。

 「誰が総理をやっても大変だったこの1年、菅総理がどれほど必死に国民を守ろうとして頑張って来たか、本当に分かっているのか!」と思ってしまう。ましてや、菅総理に物心共にお世話になって来た議員たちの中にも、菅総理を降板させる動きに同調していた人たちもいたようだ。情けないとしか言いようがない。「だから、あなたたちは選挙が弱いのだ!」と申し上げたい。

 先日、ある若手議員が、こんな趣旨の話をしていた。

 「菅総理が総裁選への不出馬を表明してくれたお陰で、本当に助かった。自民党にとっては、ある種の神風だ。総裁選によるメディアジャックが功を奏して、自民党への関心が高まり、政党支持率も上昇している。このまま新しい内閣で総選挙に突入すれば、必ず自民党が勝つ。野党もさぞかし焦っているに違いない!」と。

 確かに、ここまでは自民党が思い描いたような展開になっている。この数週間、野党の存在感は薄まる一方だった。知事として「政治の安定を望む」姿勢は変わらない。が、ここ数日の動きを見ながら、こう思わずにはいられない。

 「本当に、そこまで上手くいくものだろうか?!総裁選効果に沸き立つ今の自民党に、驕りや油断はないだろうか?!」と。

 熱いミルクティーを飲んで、少し休憩する。この続きは、次回のブログで。

      <2020年、菅総理圧勝の総裁選からまだ1年>