2021年6月12日

 夕方。高崎の自宅にいる。ジャズを聴きながら、本日最初のブログを書き始めた。

 約2年前、群馬県知事に就任した。暫くの間は、夢中で走り続けていたが、半年経った頃から、仕事のペースが分かって来た。その頃から、少なくとも「週2日の休み」を確保しようと考え、その方針を発表したこともあった。知事自らが、働き方改革の先頭に立ちたいと思っていた。

 しかしながら、その計画は、見事に頓挫した。1年も経たないうちに、新型コロナ感染症が発生したからだ。以来、ほとんど休暇のない生活を余儀なくされている。が、この問題を収束させるまで、知事には週末なんてない。1日も休めないし、休まない。そう思いつつ、日々を過ごしている。

 今日は、昼過ぎに外出。高崎市の街中を歩き回った。天気のいい、暖かい日だった。高崎駅の構内にも、駅周辺の大型商業施設にも、先週の土曜日より人が多かった気がする。

 13時前後のカフェやレストランは、思った以上に賑わっていた。市民の人たちの笑顔を見ると、ホッとする。反面、ちょっぴり心配だ。政府と調整しつつ、経済活動制限措置の適用を判断しなければならない知事の心境は、いつも複雑なのだ。

 午後。武藤健康福祉部長と連絡を取り合った。本日、県内で判明した新型コロナ新規感染者は6名。前橋市が2名、藤岡地区が2名、伊勢崎地区と高崎市が、それぞれ1名だった。経路不明は1名。変異株も見つかっている。60代以上の感染者は4名。

 新たなクラスターが発生した可能性もある。新規感染者は少ないものの、油断は禁物だ。病床稼働率は、(昨夕の時点で)21、1%まで下がっている。

 この流れだと、群馬県に対する「まん延防止等重点措置」が解除される明日(13日)までに、病床稼働率が「ギリギリ2割を切る」こともあり得る。ここまでは、明らかに重点措置の効果が表れていると言えそうだ。心配なのは、解除後のリバウンドだ。

 このブログの末尾に、第3波以降の県内感染状況の経緯を示したスライドを添付した。今の第4波がこのまま落ち着いたとしても、2ヶ月以内(?)に、更なる第5波に見舞われるケースも想定しておく必要がある。だからこそ、ワクチン接種を急ぎたいのだ。

追伸:熱い紅茶を飲みながら、この1週間を振り返って見た。幾つかのことを反省した。
 
 先ず、「世の中は、嫉妬深くて、気難しくて、ランクコンシャスな(自分が少しでも軽く扱われたと感じたら途端に騒ぎ出す質の)人々で溢れている」という事実を忘れていた。

 いや、もっと正直に言うと、忘れていたのではない。「どう対応すべきかを分かっていたのに、自身の感情が必要な行動を妨げた」というのが正確な表現だ。

 日頃から、「知事が偉いわけでも何でもない。知事は群馬県を良くするための手段だ。群馬県と県民のためになることを実現するためなら、プライドを捨て、感情を押し殺し、誰にだって頭を下げる」などと言っておきながら、不愉快なことを避けた自分がいた。

 ああ、根っから正直なのだ。知事として、まだまだ修行が足りない。(深く反省)

 それでも、捨てる神あれば、拾う神ありだ。もちろん、どんな政治家の周りにも、何かあれば邪魔してやろう、騒ぎを大きくして足を引っ張ってやろうと狙っている「政敵」と呼ばれる人々がいる。逆に、正反対の人々もいるのが救いだ。

 難しい立場に追い込まれたり、窮地に陥った時に、庇ってくれる(助けてくれる)人たちがいる。立場は違っても、「新しい群馬を創る」という志を共有出来る人々も、確かに存在している。

 困った時に力を貸してくれる本当の仲間を、どれだけ発見し、どこまでの信頼関係を築いておくことが出来るのか?それが、どれほど大事なのかを痛感した1週間だった。

 もう1つ、胸に刻んだことがある。新型コロナ感染症との戦いではないが、知事にも、ある種の「ゲームチェンジャー」が必要だということだ。

 知事としてはとても幸運なことに、市町村長の中にも、県議の中にも、職域団体、業界団体の幹部の中にも、個人的に好きな人が大勢いる。こちらが好きな相手には、嫌われているはずがないと(勝手に)思い込んでいる。

 が、それだけに、自分の中には、ある種の「甘え」がある。知事自らが、誠意を尽くして説明すれば、きっと分かってもらえるという勘違い(誤った期待?)がある。人には皆、それぞれの立場というものがある。全てが「義理人情」で動くわけもない。

 これからも、35人の市町村長、1人1人の県議との関係を大切にしていく。いや、これまで以上に、コミュニケーションの努力を積み重ねていくつもりだ。

 が、同時に、いざという時には、「県民に伝わっていなかった事実」を伝えることで、内外に知られていなかった真実を発信することによって、世の中の流れ(県民の意識=世論)を変えられるような情報発信力と覚悟を、常に磨き続けておかねばならない。

 信義や情は、とても大切だ。が、誰もが自分と同じ感覚を持っているわけではない。どこか周りのフワッとした好意に甘えている自分自身を、見つめ直す必要がある。

 

 「他人に甘えるな!これからは、もう絶対に油断するな!」自らに、そう言い聞かせた1週間でもあった。

 

       <第3波終了から約2ヶ月で再発した第4波>