2021年4月5日

 昼過ぎ。この後、豚熱の件で支援をお願いする複数の県知事に電話する。

 少し前に、県の獣医師会長にも連絡を入れた。今後の対策を考える上でも、獣医師会との連携は欠かせない。豚熱の現場での作業には、県職員、市町村の職員、自衛隊員の方々に加え、建設業協会の関係者にも協力をいただいている。改めて感謝を申し上げたい。夕方には、最新情報が届くはずだ。

 午前10時。群馬県立女子大学の入学式に出席した。全体の出席者数、席の配置やマスクの着用、消毒等、感染防止への十分な配慮や対策を講じた上での開催だ。昨年は新型コロナの影響もあって、入学式は中止を余儀なくされた。今回、学校側の努力で入学式を実施出来たことは、新入生にとって本当に良かったと思う。

 来賓として祝辞を述べた。主催者側の方針に従って、10分間で纏めた。少し早口になってしまった。(ごめんなさい。)

 知事のスピーチでは、英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エジュケーション」の世界大学ランキングに言及。5年連続で1位の座を守っている英国のオックスフォード大学の教育の強みが、「Critical Thinking」(直訳すると「批判的な思考?」)にあると説明した。

 「『Critical Thinking』を批判精神と訳すのは、ちょっと違うと思います。私なりに解釈すると、自分が置かれている立場や世の中の状況を客観的に分析し、把握する力のことだと考えます。その時の自分にとって何がベストの選択なのかを自らの判断で決め、自らの判断で踏み出せる能力のことだと解釈しています。」

 「皆さん、ご存知ですか?オックスフォード大学を卒業した著名人に聞いたのですが、人生の幸福度や満足度は、その人のIQの高さや学歴には関係がないということです。対して、『Critical Thinking』が出来る人ほど、人生の幸福度が高いという調査結果があるそうです。すなわち、(成功しても失敗しても)自分の判断で決めて、自分の意思で前に進む。ここが最も重要なのです。」

 この後、自らの意思で知事になった際の体験や新型コロナ感染症、豚熱との戦いにも触れつつ、「大学でのこの4年間で、ぜひ『Critical Thinking』を身に付け、自分の人生を自分で決められる人になってください」と語りかけた。

 併せて、こうも付け加えた。

 「ただし、『Critical Thinking』とは、現状に甘んじることではありません。世の中の厳しさに怯んで、縮こまる(冒険しない)ことでもありません。自らの意思で一歩を踏み出すことです。最後に私の最も好きな言葉を皆さんに贈りたいと思います。」

 「皆さん、スペインの作家、セルバンテスの『ドン・キホーテ』という小説をご存知でしょうか?騎士道物語を読み過ぎて現実と物語の区別がつかなくなった地方の貧しい郷士が、冒険の旅に出る物語です。」

 「この小説をもとに作られたミュージカル『ラマンチャの男』が、1965年に初めてブロードウェーで上演されました。私はこのミュージカルがスゴく好きで、米国の大学院に留学していた頃も、ニューヨークの某国連機関に勤務していた際も、何度も見に行ったものです。」

 「そのミュージカルの中で、劇中に登場する作家、セルバンテスが発する有名な台詞があります。それは、次のような一節です。」

 「では、本当の狂気とは何なのか?!夢ばかりを追って現実を見ないのは狂気かもしれない。逆に、現実ばかりに目を向けて、夢を持たないのも狂気だろう。しかし、世の中で最も憎むべき狂気は、あるがままの自分と折り合いをつけて、あるべき姿のために戦わないことだ。」

 「この4年間、どうぞ自由に、奔放に飛び回ってください。その中で生涯の友人や自分が人生で本当にやりたいことを見つけてください。皆さんの大学生活が素晴らしいものになるよう心からお祈りして、私の祝辞とさせていただきます。」

 あ、古田岐阜県知事に電話する時間だ。

          <県立女子大学入学式でのスピーチ>