2021年1月5日:パート2

 夕方。武藤健康福祉部長に電話した。今日はこちらからの連絡。きっと忙しくて報告する暇が無かったのだと思う。

 本日、県内で判明した新規感染は41名。相変わらず、東毛地域が多い。陽性者が少し若くなって来ているようだ。東京は1278人で2度目の1000人超え。

 今週も苦しい戦いが続く。力を合わせて、粘り強く対応していくしかない。

 明日(6日)の午前11時から、県内の保健所長との3度目の意見交換会をやる。各地域の現状を聞くと同時に、保健所職員の人たちを激励する。現場はギリギリの状況が続いている。人員配置を含む応援体制は強化しているものの、引き続き必要な支援を行なっていく。

 15時からは、新型コロナ関係部局超会議もセットしてある。報道によると、明後日(7日)にも、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県に緊急事態宣言が発令される見込みとのこと。現状の分析を行うと共に、今後の県の対応を協議する。

 さあ、年始にしか書けない「失敗談」のシリーズを完結させてしまおう。

 問題のBS番組(生放送)が始まった。冒頭、番組キャスターから国のクールジャパン戦略についての簡単な説明があった。それを受けて、2人のゲスト出演者がそれぞれの立場を説明した。その後、若手評論家が、こんなふうに仕掛けて来た。

 「クールジャパンって、言いますけど、じゃあ、山本さんは具体的にどんなアニメや漫画が世界にアピールすると思っているんですか?」

 その言葉を聞いて、やや戸惑った。何を言うべきか、一瞬、迷ったからだ。頭の中では、瞬間的に次の台詞が組み立てられていた。

 「そうですね。いろいろあるけど、私が今、最も注目しているコンテンツは、週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画『鬼滅の刃』です。自分のブログでも書いていますが、大正時代という設定がいい。随所に着物が出て来るのも、クールジャパン的だと思っています。」

 「加えて、なぜか世界的に人気筋の吸血鬼(鬼)との戦いがテーマですし、何より兄妹の絆を描いている点も、(特にアジア圏では)ウケると思います。近い将来、きっとアニメ化され、大きな話題を呼び起こすと見ています。」

 「それと、皆が知っている『NARUTO』ですが、先週、『2・5次元ミュージカル』の舞台を見て来ました。すでにブレイクしている素材でも、戦略や伝え方を変えることによって、世界へのアピール力を増加させるやり方も十分あると感じています。」

 しかしながら、「国会議員として、多くの視聴者が分かりやすいと感じる発信をしなければならない」というつまらない良識(バランス感覚)が、この台詞を押しとどめた。2秒ほど間を置いて、実際に口から出て来たのは、次のような言葉だった。

 「そうですね。(漫画やアニメで言えば)やっぱり『ワンピース』とか、『NARUTO』とか、『攻殻機動隊』なんかは、世界に誇れるクールジャパンのコンテンツだと思います。」

 それを聞いた若い評論家は、ここぞとばかり更なるジャブを打って来た。

 「え?それじゃあ、山本さんは、具体的に、押井守監督の攻殻機動隊の中のどの作品が、クールジャパンだと思っているんですか?」

 瞬間的に頭に浮かんだのは、映画「GHOST IN THE SHELL 」だった。が、最後の「SHELL」が出て来なかった。そこで、ついこう言ってしまった。

 「例えば、STAND ALONE COMPLEXとか…。」

 その言葉を聞いて、若手評論家が「待ってました」とばかりに、追撃をかけて来た。

 「あれは押井守監督の作品ではありません。神山健治監督ですよ。」

 こちらも軽いジャブで応戦しようと思って、さらに墓穴を掘る。こんなやり取りが続いた。

 「あ、そうだったかもしれません。押井監督は『インノセント』でしたね。」「いや、山本さん、映画の題名は『インノセント』ではなく、『インノセンス』です。」

 その指摘を聞きながら、こう思った。

 「あ、間違えちゃった。映画『インノセンス』、14、5年前(?)に都内の映画館で封切られた際、オンタイムで見ていたのになあ。あの映像美は、心に焼き付いている」と。

 2つの発言とも、前日に少し復習しておけば、起こりえないミスだった。朝倉海選手VS堀口恭司選手のタイトルマッチに例えれば、最初に思いがけない「カーフキック」(ふくらはぎへのローキック)を2度、もらったようなものだ。

 え?大晦日の試合のように、そのままTKOされたわけではない。が、最初にベースを崩され、相手に勝負の主導権を握られた気がする。その後も議論は続いたが、全体として劣勢だったことは否めない。「まんまと相手の作戦に引っかかった(相手の土俵に乗ってしまった)」という感じだった。

 その後も番組の中で、しばしば「キャスターを無視して2人のゲストが議論を交わす」場面が続出した。司会者も会話に入れなくて、困っている様子だった。(ごめんなさい。)後で聞いた話だが、この番組に対する視聴者の評価は、思ったほど悪くなかった(?)らしい。

 番組が終わった後、「最初からこんな展開が許されるなら、もっと違う戦い方があったなあ」と思って反省した。

 例えば最初に「鬼滅の刃」の話題を出していたら、その後の討論は、全く違う展開になっていたかもしれない。もし相手がこの時、この人気漫画をよく知らなかったとしたら、「え?こんなに注目を集めている漫画さえも知らないのか。それでよくクールジャパン政策なんて語れるものだ」と畳み掛けていたに違いない。

 そのまま左右のフックを連打しながら、(時々、アッパーも混ぜつつ)コーナーに追い詰めていた可能性もある。そもそも、コンテンツの知識でこの人物に劣っているとは、到底、思えなかった。

 が、この時は、番組の時間枠とか、番組キャスター(司会者)の立場とか、視聴者への配慮とか、そんな常識は無視して、「確信犯的に作戦を遂行した」相手の戦術が優っていた。政治家としては、とてもいい勉強になった。

 幸か不幸か、自分の周りでこの番組を見ている人は、ほとんどいなかった。当時、国会議員として携わっていた様々なプロジェクトを手伝ってくれていた友人(今の群馬県のメディア戦略アドバイザー)から、こう言われたくらいだ。

 「一太さん、なぜ、あんなに遠慮して喋ってたんですか?『朝まで生テレビ』みたいにガンガン、突っ込めば良かったのに」と。

 それでも、このちょっぴり悔しかった失敗談は、このブログに永久保存しておきたい。

 さあ、夕食の時間だ。