2020年7月12日

 移動時間や通勤、通学者の数、観光客の傾向等から考えると、首都圏に位置する群馬県は、北関東で最も「東京に近い」と思う。が、そうした状況の中でも、群馬県は「相当に踏ん張っている」気がする。

 7月12日時点で、これまで陽性(県内感染者)が確認されたのは155名。入院中が3名。なくなった方は19名だ。すでに終息した伊勢崎市内の高齢者施設での集団感染さえ起こらなければ、今も感染者は80人台、死亡者も数名のはずだった。

 ちなみに、先週の定例会見で、その施設の集団感染の原因や対応策を検証した報告書を発表した。この結果を踏まえ、県内の高齢者施設への対策を、より強化していく方針だ。

 ここのところ、東京都を含む1都3県(千葉、神奈川、埼玉)で、新規感染者が再び増え始めた。都道府県を跨ぐ移動制限はすでに解除しているものの、群馬県内の状況は(今のところ)落ち着いている。

 もちろん、これは群馬県知事の力ではない。県民1人1人が「新しい生活様式」を実践してくれているからだ。知事会見でも毎回、言っていることではあるが、改めて知事の感謝の気持ちを記しておく。

 県民の皆さん、外出自粛を求めた際も、休業要請を行った時も、大変なご負担をおかけしました。お陰様で、県内の感染は(ひとまず)収束している状況です。皆様のご協力とご努力に、心から感謝を申し上げます。

 県民の協力と言えば、昨年、知事就任早々にCSF(豚熱)の脅威に晒された。その際も、県内の養豚農家の人たちを中心に、必死の努力をしていただいた。本州では最大の飼育豚数を誇る群馬県で、豚熱は1匹も発生していない。

 野生イノシシの防護柵の整備に関する県と関係市町村との連携も、極めてスムーズだった。江藤農水大臣の「豚熱への対応に関しては、群馬県は全国のモデルになる」という発言は、とても嬉しかった。

 もちろん、(飼育豚へのワクチン接種が行われているとは言っても)、まだ豚熱の危険が去ったわけではない。こちらも、引き続き感染防止対策をお願いしている。

 それにしても、さすがは義理人情を重んじる地域柄。群馬県民は(他の都道府県も同じだと思うが)真面目で、ルールを守る意識が高い。他人を思いやる気持ちも人一倍、強い感じがする。何かあれば、県民一丸となって立ち向かえる県民性だ。

 知事として、(というより群馬で生まれ育った100%ピュア群馬県人として)群馬県民であることを誇りに思う。

 ただし、県民の方々に、これだけは分かっていただきたい。コロナウイルスを根絶することは難しい。すなわち、社会経済活動が増えれば、感染のリスクは高まる。もっと簡単に言うと、どれだけ対策を徹底しようと、ある程度の陽性者は出るということだ。何度も言って来たように、「ニューノーマル」とは、感染のレベルをコントロールしながら、社会経済活動を続けていく世界のことだ。

 繰り返しになるが、最も重要なのは、感染が発生した時の対応だ。システムの面でも、県民の意識の面でも、「冷静かつ迅速に新型コロナを封じ込め、周りへの影響(風評被害やいじめ等)を最小限に抑え込む」ための態勢を整えることが肝心だ。

 だからこそ、県旅館衛生同業者組合による対応マニュアル策定には意味がある。そもそも群馬県の温泉地で、「まだ1人も感染者が確認されていない」のは、ちっちゃな奇跡だと言っていい。県独自の観光キャンペーン(愛郷プロジェクト)で、賑わいの戻っている地域もある。いつ陽性者が判明しても不思議はない状況だ。

 そりゃあ、そうだろう。少し前のブログにも書いたが、例えば、首都圏から無症状の陽性者が県内の観光地に来たとしよう。たまたま滞在中に、そのひとに症状が出て感染が判明するケースは十分、考えられる。観光地や宿泊業者がどれほど感染防止対策を徹底しようと、防ぎようがない。感染が判明した途端に、大騒ぎになる。これは、観光地に限ったことではない。

 加えて言うと、ここ最近の1都3県での感染再拡大の波は、遠からず群馬県にもやって来ると覚悟しておいたほうがいい。

 東京では、昨日の段階で、新たな感染者が3日連続で200人を超えた。今までなかった現象だ。特に気になるのは、感染経路を特定出来ない人が100人、いることだ。

 それでも、群馬県としては、現時点で東京への移動制限(注意喚起はしているが)をかけたり、現在の警戒レベル1を引き上げるようなことはやっていない。その理由は、次回のブログで。