2020年5月12日

 昨日、経済・社会活動の再開にあたっての群馬県独自の基準(ガイドラインの原案)を発表した。本日の地元紙(上毛新聞)の1面や大手新聞の群馬版でも、大きく取り上げられている。産経新聞は全国紙の一面で言及してくれた。

 資料を読み返してみたが、知事の冒頭説明と使用したスライドは、かなり分かりやすいと思う。そのまま掲載させてもらう。

《経済活動再開に向けたガイドライン(原案)の冒頭説明:5月11日:臨時会見》

 これから、群馬県独自のガイドラインについて、ご説明させていただきます。

 今後、このガイドラインに従って、5月16日から、経済活動を一部、再開していきたいと考えています。その後、東京を含め、群馬県と経済的な結びつきが強い地域での感染が収まった段階で、更に経済活動を再開させていく方針です。その際には、学校についても、週2〜3日の範囲で再開をしていきたいと考えています。順調に感染が抑制された場合ですが、最短で6月1日に、この『学校の一部再開』という段階に移行できると考えています。

             <ガイドラインのポイント>


 ガイドラインは、大きく言うと、現状を評価する判断基準と、警戒度に応じた行動基準の2つの要素から構成されています。

 判断基準には、「客観的な数値 」と「総合的な状況 」の2つがあります。他の都道府県では、数値基準のみで判断するところもあるようですが、数値だけでは評価しきれない項目もあるため、より包括的な基準を定めました。
 
 そして、警戒度に応じた行動基準を4段階で設定しました。 現在は、警戒度4の状態です。様々な判断基準に基づいて、2週間ごとに状況を評価します。判断基準を満たしている場合には、 警戒度を1つずつ下げていくという仕組みです。

 警戒度を下げていく際には、1段階ずつ進めていくことになりますが、大規模なクラスターの発生など、急激に感染状況が悪化した場合には、2週間の評価期間を待つことなく弾力的な評価を行い、警戒度を即時に引き上げるという対応も取っていきます。

 このガイドラインの作成にあたっては、9日に感染症危機管理チーム会議を開き、専門家の方の意見を頂いています。この場をお借りして、多忙の中、知見を頂いた専門家の皆様に御礼を申し上げます。

 この判断基準について、詳細を説明します。
 
      <警戒度移行の判断基準①〜客観的な数値>


 判断基準には、「客観的な数値 」と 、「総合的な状況 」 の大きく2つのものがあると説明しました。まず、前者の数値による基準から説明します。

 感染状況を判断するため、新規感染者数、経路不明の感染者数の割合、PCR検査数に占める感染者数の割合である陽性率の3項目を設定しました。

 加えて、医療提供体制を判断するため、重症例に対応するECMO等の使用状況と病床の稼働率の2項目を定めています。

 これまでの状況を分析した結果や、今後、医療提供体制を逼迫させないという観点から、この5項目の設定を決めました。

 今後の体制整備の進展に応じて、項目の中身や基準の内容は随時見直していきたいと考えています。

             <各項目の推移>


 具体的に、各項目の推移をまとめたグラフです。今後、県民にわかりやすいように、毎日ホームページ上で更新していきます。

              <患者の入院状況>


 患者の入院状況について、これまでも会見で発表してきました が、これも、毎日ホームページ上で更新していく予定です。

   <警戒度移行の判断基準②〜総合的状況>


 現実の動きは数値だけで計れるものではないため、本県では、 数値によらない総合的な状況をもう一つの判断要素として取り入 れています。

 群馬県の感染の特徴としてまず挙げられるのが、陽性者の約半分が介護施設の関係者であり、亡くなられた方のほとんどが入居されていた高齢者ということです。介護施設に対しては、特に注意を払う必要があると思っています。
 
 また、群馬大学の協力を得て、実行再生産数を独自に計算しています。加えて、特に重要な点として、交通の要衝である本県の地勢的な事情に鑑み、東京や近隣県の状況にも注目しなければならないと考えています。

 次に、警戒度に応じた行動基準について説明します。

         <行動基準の緩和>


 まず、行動基準のポイントです。現在は、警戒度4に位置づけられます。5月16日から、警戒度3の段階に移行したいと考えています。警戒度3では、クラスターの発生リスクが高い場所を除いて、 外出自粛や時短営業を解除します。ただし、不要不急の移動は最小限とすることをお願いすることになります。

 次の警戒度2まで下がった場合は、都道府県をまたいだ移動が再開され、学校についても週2〜3日で始動させていきます。新たな生活様式が大前提となりますが、この段階で、ほぼ全ての経済活動が可能となります。

 最も低い警戒度1では、高齢者や基礎疾患のある人も、社会との交流が認められます。高齢者施設や病院でも、訪問者との面会が出来るようになります。

              <行動基準>


 個人に対するものとしては、「外出」「県外移動」「イベント」を、 事業者に対するも のとしては、「 休業等 」「 勤務形態 」 を項目として示しています。自粛をお願いするものは「×」、条件付で認めるものは 「△」、活動を認めるものは「○」と表記されています。

 現在の警戒度4から、警戒度3に移行した場合には、接待を伴う夜間の飲食店、屋内運動施設(フィットネスジム)、ライブハウス、カラオケなど、過去にクラスターが発生するなどリスクが高い場所を除いて、外出自粛や時短営業の要請が解かれます。

 また、イベントについても、10人以下の小規模なものは可能と判断されます。

 ただし、ここが非常に重要な点ですが、外出や営業を認めるのは、感染防止対策を徹底し、新たな生活様式を実践している場合に限ります。冒頭の基本姿勢の2点目で説明しましたが、十分な基準が整備されていない業界においては、性急な営業再開を避ける必要があります。

 韓国において、再開したナイトクラブで、数千人に及ぶ感染のリスクが報道されていますが、こうした事態は 絶対に回避しなければいけません。

 この警戒度3の段階では、国から3密が揃うとして感染のリスクが高い場所とされている居酒屋や飲食店についても、時短営業が解除されます。しかし、ここでも感染防止対策を徹底するこ とが前提です。

 それぞれの事業者が高い責任感を持ち、感染防止対策を徹底して頂くとともに、対策がなされていないお店には 近づかないように、県民の方々にも注意をお願いしたいと思いま す。

 警戒度2への移行の大きな判断要素は、東京での感染リスクが 抑制されていることです。この段階で、東京を含む県境をまたい だ移動を可能とします。また、不要不急の外出も再開可能として います。フィットネスやカラオケなど、感染のリスクが高いとさ れている場所についても、営業再開を認めます。

 警戒度1では、高齢者や基礎疾患をお持ち方などハイリスクな方も社会との交流を再開します。また、高齢者施設や病院での訪問者の面会も可能となります。

          <新しい生活様式の実践>


 政府の専門家会議の提言では、新規感染者数が限定的となった地域であっても再度感染が拡大する可能性がある長期戦に備え、感染拡大を予防する新しい生活様式に移行する必要があるとの提言がなされています。

 スライドにも示した実践例に基づき、県民一人一人が新しい生 活様式を実践することにより、段階的に社会経済活動を緩和した場合においても、感染症の拡大を防ぐことが出来ます。そしてそのことが、皆さんご自身はもとより、皆さんの大事な家族や友人を守ることにつながることにつながるものと考えます。
 
 そう考えると、県民をあげての新しい生活様式の実践を推進していくことは極めて重要だと感じています。

 また、事業者の皆さんには、より高い意識で、新しい生活様式に基づいた感染防止対策を徹底して頂く必要があります。

          <休業要請の大前提>


 先ほど説明したように、警戒度に応じて経済活動を再開していく方針です。しかしながら、その大前提となるのは、それぞれの事業者の責任において、感染防止対策を徹底していただくということです。

 このため、各業界団体等が主体となって業界毎のガイドライン を作成してもらい、事業者の皆さまには、そのガイドラインを目安に、感染拡大を防ぐための対策の徹底を求めていきます。

          <感染防止対策:例1>


 感染防止対策について、例えば、飲食店に対しては、個室や座敷席等の多人数での使用自粛や座席配置の工夫など、「三密」 環境を徹底的に排除することをお願いすることになります。
    
             <感染防止対策:例2>


 入店時の手洗い等の励行や、従業員の健康管理等、衛生面や健康面の管理を徹底することも重要です。 あらゆる面で、万全の感染防止対策を講じる努力を求めたいと思います。

          <学校の段階的な再開について>


 県内の小中高に関しては、5月31日まで休校措置を継続している状況です。先ほどの説明のとおり、警戒度2に移行出来るようになった段階では、学校を段階的に再開していくことになります。東京などの抑制状況にもよりますが、最短で6月1日になる可能性があります。

 学校の再開は、小児向けの医療体制が特に脆弱なことや、米国などで川崎病に似た新たな症状が報告されていることなどから、特に慎重な対応が必要だと考えています。そうした様々な要素を勘案しつつ、子供の学びを続けるため、再開を模索していくことになります。

 再開に向けた取組として、まず、各学校で、「群馬県版学校再開に向けたガイドライン 」 に基づき 、「 新しい生活様式 」(例えば、毎朝の検温、身体的距離の確保、3密の回避など)に従った行動がとれるよう徹底するとともに、児童生徒を複数のグループに分け、曜日や時間を限定して登校させる分散登校から実施していくことにしたいと考えています。

 5月1日の文科省通知を受けて、「群馬県版学校再開に向けたガイドライン」も改訂を行います。改訂のポイントは、同居家族の検温や体調確認、座席の間隔を1〜2メートル、学級を2〜3 の小グループに分けるといった点や、学校行事の考え方などです。

 また、ICT等の活用は特に重要だと認識しています。パソコン1人1台の環境を整備するため、県立高校において年度内の配備を進めます。同時に、市町村立小中学校においても、同様の対応を強く求めていくつもりです。

          <段階的な学校の再開>


 分散登校については、はじめは、週に2〜3~日程度とする計画です。その後、状況を見ながら、午前と午後のグループに分けるなどして週5日、登校させます。更に感染状況等が改善されれば、 通常の登校という流れを検討しています。部活動等についても、 3密の回避等を徹底した上で、段階的に再開していくこととします。

        <学校再開後の教育活動>


 臨時休業による学習の遅れを心配する声も多くあります。そのため、県立学校では、夏季休業を活用し、補充のための授業や進学・就職のための補習等を実施したいと考えています。小・中学校については、県内で足並みをそろえる形で、授業日としての活用を市町村教育委員会と相談しつつ、検討していくことになります。

 また、修学旅行や文化祭などの学校行事については、延期・ 縮小なども考えていく必要があると思っています。

 以上申し上げて来たように、児童生徒の安全安心を確保しながら、学校の教育活動を前に進めていく方針です。

 こうしたガイドラインに沿った対応を進めていくために基本となるのは、検査体制や医療提供体制の整備です。最後にこの点に関して、説明させていただきます。

           <検査の拡充>


 PCR検査数については、全国と同様、群馬県でも検査数が伸び悩んでいます。厚生労働省は今月8日に、「相談・受診の目安」から発熱の表記を削り、間口を広げました。群馬県も、それに合わせて対応しています。

 今後、必要な人が、適切なタイミングで検査を受けられるよう、 さらなる人員の増強を行います。さらに、PCR検査センターの開設、医療資材の確保を進めるなどの方策を通じ、1日あたりの検査数100件を目標とする体制の構築を目指します。検査を実施する施設を増やすことで、さらなる拡充を図っていきます。

 加えて、抗体検査や、これから承認される抗原検査についても研究を行い、どう活用出来るかを検討します。

 次に、医療提供体制の整備について説明します。

           <医療体制の整備>


(1)重点医療機関の設置

 5月8日現在、運用可能病床数は165床となっています。感染者が減少傾向のため、病床稼働率は減少傾向にあります。が、秋冬に向け想定される第2波を想定すると、更なる病床の確保が必要となります。

 多くの感染症指定医療機関等は、感染患者への医療提供のみならず、二次、三次救急医療も担っており、医療従事者が疲弊しています。今後、感染症指定医療機関等の負担をさらに軽減するため、主に中等症患者を集中的に受け入れる重点医療機関を設置したいと考えています。

(2)重症者用病床の整備

 現在、重症病床が23床、またECMOが7台という状況です。 秋までに、重症病床40床、ECMOを14台まで増やすことを目標に掲げたいと思います。 また、重症患者に対応できる人材を育成すべく、医療従事者研修を県独自で実施する計画です。

(3)宿泊療養施設の拡充

 4月28日に150室の宿泊療養施設を開設されました。これまで、延べ11名の利用者があり、現在は、8名の方が入居しています。

 医療機関の負担軽減のために、宿泊療養施設の整備が不可欠です。 当面1300室を目標としていますが、需要に合わせて、さらなる拡充を図っていく予定です。