2020年5月9日:パート2

 

 夕方。県庁の知事室にいる。18時から感染症危機管理チームの会議がある。ええと、今日は土曜日か。最近、曜日の感覚が無くなって来た。

 午後からの協議で、社会・経済活動の再開に向けた基準の内容やPCR検査の方向性について議論を重ねた。明後日(5月11日)は、補正予算案に関する本会議質疑&採決もある。その後の知事会見は、かなり重要なものになるだろう。

 ここからは、前回のブログの続き。政府が5月14日の専門家会議による分析結果を受け、「どんな基準で、どの都道府県の緊急事態宣言を解除するのか?」は、よく分からない。が、新型コロナウイルスに関する最近の動向を見る限り、群馬県が解除対象県の1つになっても不思議はないと考えている。理由は次の4つだ。

(1)昨日の会見で、西村経済再生担当相が、「5月6日までの1週間、新期患者が出ていない県が17県ある」と指摘した。群馬においても、昨日(5月8日)までの11日間、新たな感染者は(群馬県内で交通事故を起こし、後に死亡した栃木県在住の1名を除くと)ほとんど発生していない。

(2)陽性者ゼロが続いたことで、県内のPCR検査実施数に対する陽性率(4.9%)、実効再生産数(0.42)が低下している。

(3)人口10万人あたりの死者数(18名)は多いものの、そのほとんど(16名)が、クラスター(集団感染)に見舞われた伊勢崎市内の有料老人ホーム「藤和の苑」の入居者だ。もっと言うと、県内の感染者総数の147名の半分近くを、この1ヶ所の施設の関係者が占めている。

 そして、この施設での感染拡大は、その後、ほぼ封じ込めている状態だ。事実、本件の濃厚接触者に対する健康観察は、今日にも終了する。

(4)入院が増えず、退院が増えたことで、医療機関への負荷が減少傾向にある。現時点で、目標としていた病院の180床のうち、163床を確保。宿泊療養施設はまだ150室だが、目標(1300室)に向けて準備を急いでいる。

 それでも、知事としては、「全く油断出来ない状況」と感じている。「まだ感染拡大が止まったとは言い難い東京都に近い」という事情があるからだ。何度も言っているように、東京での流行が続く限り、群馬での感染収束は難しいと見ている。

 加えて言うと、万一、藤和の苑クラスのクラスター(集団感染)が再び発生するような事態になれば、医療体制はあっという間に逼迫する。まだ準備が不十分だ。

 ふと思った。「西村さんは、知事である自分の慎重姿勢も考えた上で、あえて群馬県への言及を避けてくれたのかもしれない」と。考え過ぎか、な。

 正直言うと、昨日、西村大臣が栃木県や茨城県には言及したものの、群馬県を挙げなかったことに関しては、ちょっぴり複雑な心境だった。

 だって、そうでしょう?曲がりなりにも「県内の感染状況が落ち着きつつある」のは、県民の方々の理解と協力があってのことだ。一瞬、県民の努力が過小評価されているように感じた。  

 逆に、「群馬県の名前が出なくてホッとした」部分もあった。そんなに楽観出来る状態ではないと考えているからだ。解除可能性のある県として言及されただけで、県民の緊張が一気に緩んでしまうことを心配した。

 14日まであと6日間。県内の感染状況を注意深くウォッチし、政府の判断を見極める。その上で、知事としての対応を決めていくつもりだ。

追伸:先ほど、本日のPCR検査に関する報告が届いた。検査の実施数は43件。全て陰性だった。過去12日間で新規感染者1名(?)ということになった。