2020年5月7日:パート2

 知事に就任して9ヶ月余り。どこにいようと、全身全霊で生きている。朝から晩まで、フル回転の状態だ。そうでなくても「小さな頭脳」は(許容量を超えて)ショート寸前です。

 毎晩、寝る前にアコギを抱えて、イーグルスとかボンジョビを大声で歌っている。どの知事にも、それぞれのストレス解消法があるに違いない。

 今日も即応態勢。感染症対策危機管理チームの日程が決まれば、いつでも県庁に足を運ぶ。さすがに今日は、難しそうだ。必要なことは、電話協議で済ませよう。

 先ほど、親しい友人に携帯メールを送った。世の中にたった1人、自分のことを本当に理解し、応援してくれる人がいれば、どんな苦しい状況も乗り越えられる。人間って、そんなものだ。

 さて、新型コロナウイルス対策に関する日本政府のこれまでの対応は、(現時点では)国際社会であまり評価されていないようだ。特に国内のマスコミからは、安倍政権に対するバッシングばかりが目立つ。野党も政府批判一色だ。

 欧米の報道や有識者の論文等を見る限り、台湾や韓国、シンガポールあたりが、新型コロナ封じ込めの成功例みたいに捉えられている。もちろん、スウェーデン政府による独自のアプローチも注目を集めている。(個人的には、成功して欲しいと願っている実験だ。)

 各種のメディアでも、「どこか勝ち組で、どこが負け組か?」とか、「新型コロナ問題で大きく株を上げたひと、逆に評価を下げたひと」みたいな切り口の報道が増えている。いわゆる知識人が、新型コロナ対策に関して「都道府県知事に通知表を付ける」ような記事も、時々、目にするようになった。

 その度に、こう思わずにはいられない。「何と短絡的な評価だろう。対ウイルス政策が『成功したのか、失敗したのか?』を判断するには、まだ早過ぎる」と。

 そりゃあ、そうだろう。新型コロナウイルスとの戦いは長期戦だ。場合によっては、何年も続く。これからどんな展開が待っているのか、正確に予測出来るひとは誰もいない。たとえ今回の感染流行の波を抑えられたとしても、11月にはより毒性を増した(?)感染症の第2波に見舞われるかもしれない。

 現段階で、対策の成功例として言及される国々の実情を見てみよう。台湾はともかくとして、韓国が勝ち組になるとは限らない。輸出依存の経済だって、相当に傷んでいる。ましてや、「新型コロナウイルスへの迅速な対策で感染を早期に収束させ、世界全体に貢献した」と胸を張っている中国では、複数の地域で「2段階目のロックダウン」(都市封鎖)が行われていると報道されている。シンガポールの情勢も、(よくデータを見ていくと)楽観を許さない面がある。

 今後の事態の推移によっては、「日本の対策が再評価される」可能性もないとは言えない。確かにPCR検査数が少ないのは問題だ。「なぜ、日本政府が早期にPCR等の検査体制を十分に整えられなかったのか?」その理由は、5月4日に発表された政府の専門家会議による状況分析・提言(18ページ)の中で、明確に説明されている。このブログでも、どこかで詳しく解説したい。

 それでも、日本の状況が「欧米諸国ほど酷くなっていない」ことは、紛れもない事実だ。10万人あたりの死者数も遥かに少ない。全く油断は出来ないが、まだ医療崩壊が起きていない証拠でもある。

 少し前のことになるが、欧米のある有力シンクタンクの研究者たちの間で、内々の意見交換が行われたと聞いた。議論のテーマは、「ポスト新型コロナ世界の勝者はどの国か?」というもの。この時、複数の研究者から出た名前は、「中国と日本」だったそうだ。

 この議論の中で、中国が推された理由は、今後、世界が恒常的に直面するかもしれないパンデミックを抑える決め手が「国民の行動をどこまで監視出来るか?」であり、それが出来る社会体制であること。日本が浮上した理由は、「最小限の私権の制限と比較的少ないダメージで、この危機を乗り越えられる可能性があるから」だって。この話を聞いた時は、なるほどと思った。

 残念ながら、現時点では、この論調も相当に変わっているはずだ。「見えない敵」の正体が次第に明らかになりつつある中で、感染の状況もウイルスに関する認識も、猛スピードで変化を続けている。

 加えて言うと、政治は「結果責任」だ。例えば、少し前まで、あちこちで、「初期の対応が的確だった」と絶賛されていた北海道で、(鈴木知事はスゴく頑張っていると思うが)いち早く2度目の流行が発生している。

 今後の展開によっては、来年の今頃、政府や地方自治体による新型コロナウイルス対策の評価が、ガラッと変わっている可能性すらあると思う。

 そもそもマスコミは、何かを一気に持ち上げたら、どこかで必ず叩く。国民生活への深刻な影響が出て来るのは、これからだ。当然、誰もが苛立つ雰囲気になっていく。何かのきっかけで、世論の風向きも急激に変わる。

 だからこそ、「常に先手先手の対策を考えながらも、落ち着いて発言する。」「スピード感を重視しつつも、慌てずに行動する。」知事のこの基本姿勢は、山本一太知事チームにも共有されている。

 長期戦に耐え得る態勢を作るためには、何が必要なのか?就任9ヶ月のルーキー知事として、他の都道府県の動きをどう見ているのか?群馬県の特徴、知事自身の強みや弱みをどう認識しているのか?そうした認識を踏まえ、どんな戦略で新型コロナ問題に立ち向かっていこうとしているのか?

 この際、こうしたことを、県民の方々にしっかり伝えておきたい。この続きはその2で。

 さあ、無理のない筋トレの時間だ。背筋と腹筋を鍛える。