2020年5月2日

 午後、高崎の自宅でパソコンを起動させた。今日も県内で30件以上のPCR検査を実施する。夕方には、結果が判明する。

 知事になると、いろいろなひとが近づいて来る。日頃からお世話になっているひと、恩義があるひとならともかく、(例えば)過去に1度しか会ったことのない人物が、知事といかにも親密であるかのようなことを周りに吹聴する。よくある話だ。

 何度も言っているように、自分は「胡散臭い人物」と親しく付き合うようなことはしない。そう決めている。ましてや、今は知事という立場だ。過去に利権絡みの問題を起こしたり、選挙を利益誘導に使うような「いわゆる政治ゴロ」みたいな人間に、近くをウロウロさせたりしない。首長としての心得の基本だ。

 不透明な利権には全く関わっていないので、誰かに弱みを握られているということもない。さらに言うと、何かを仕掛けられたら、真相を全て暴露出来る自前の(ちっちゃな)「発信装置」も持っている。そのことだけは、ここに記しておく。

 さて、4月30日の記者会見で発表した補正予算の全体規模は、約891億円となった。

 主な内訳は、以下のとおりだ。

(1)感染拡大防止策と検査・医療体制の整備:約66億、
(2)雇用の維持と事業の継続を支援するための取り組み:約789億
(3)子どもたちが安心して「学び」を続けるための取り組み:約30億
(4)相談体制や情報発信の充実・強化:約1億
(5)機動的な対応が必要な事態への備え(予備費):約5億

 「知事のブログで内容を分かりやすく説明して欲しい」という声が多い。出来るだけ簡潔に解説する。

 まず(1)の「感染拡大防止策と検査・医療体制の整備」に関して言うと、感染拡大防止策として、介護施設などにマスクや消毒液を配布する。マスク等の物資を県民が均等に購入出来るようにすることが大事だ。そのためには、不足するマスク等の医療物資の割り当てを決め、購入管理等を行うシステムの構築が急務だ。

 例えば、マスク購入のためのクーポン券を発行する都道府県もあるようだ。が、群馬では、ICTを活用した全国初のシステムを構築したい。現在、(台湾等の事例も研究しつつ)県庁内で詳細を詰めている。この新たな仕組みは、災害発生時にも活用出来るものになるはずだ。

 (2)の「雇用の維持と事業の継続を支援するための取り組み」の具体的な中身については、過去のブログでも触れた。休業や営業時間の短縮に協力していただいた事業者の方々を対象に、事業継続のための支援金として、20万円を支給する。

 加えて、中小企業の資金繰りを支援するため、国の緊急経済対策に盛り込まれた施策を活用し、実質無利子・無担保の「新型コロナウイルス感染症対応資金」を創設する。

 国の制度では、無利子期間が「最初の3年間」となっているが、新型コロナ倒産を防ぐため、全国初の一歩踏み込んだ措置を決めた。すなわち、無利子期間を7年に延長する。融資枠は過去最大の2000億円だ。

 この施策に関しては、中小企業の資金繰りを早急に支援するため、中小企業振興資金特別会計予算の約739億円の増額を(本日付けで)専決処分させてもらった。

 (3)の「子どもたちが安心して『学び』を続けるための取り組み」も重要だ。県立高校等におけるICTを活用した教育に必要な機器(コンピュータ等)の整備は、群馬でも計画的に進めて来た。にもかかわらず、1人あたりのPC整備台数は全国42位。明らかに、出遅れている。

 新型コロナウイルスとの戦いは、長期戦の様相を呈している。オンライン授業の必要性を考慮すれば、県のネット戦略も、(これまで全く力の入っていなかったSDGsと同様に)思い切った方向転換が求められる。

 具体的には、子どもたちが安心して「学び」を続けられるよう、ノートパソコンの整備を前倒しする。目指すは、全国で初めて「1人1台、ノートパソコンを使える」環境の実現だ。ちなみに、佐賀県はタブレット+キーボードで、これを達成している。

 将来的には、生徒が自らのパソコンを持ち込んで授業に活用する「BYOD(Bring Your Own Device)」を導入することも目標に掲げる。そうなれば、県内の高校生が簡単にオンラインの授業を受けられるようになるからだ。

 併せて、小中学校のICT環境の整備を行う市町村を支援する。具体的には、授業支援ソフトウェアの購入費用を補助する。県全体の教育のICT化を進めるに際しては、市町村ともよく連携していきたい。

 加えて、高校生等に対する奨学給付金の対象者を家計急変世帯に拡大する。教育費等の負担を軽減するためだ。

 (5)の相談体制や情報発信の充実・強化と(6)の機動的な対応が必要な事態への備えとして、予備費を5億円、増額する。

 最後に、大事な話を付け加えておく。それは、補正予算の財源をどう捻出するかということだ。

 ひとことで言うと、新型コロナウイルスから県民を守るための「危機突破予算」を組んだ。厳しい財政状況の中でも、かなり大胆な対策を予算案に盛り込んでいる。財源確保のためには、先ず国が緊急経済対策の中で創設した新たな交付金を最大限に活用する。当然のことだ。

 さらに不足が見込まれる分は、財政調整基金を41億円、取り崩すことを決めた。その方針を前提に、今回の予算編成を行なっている。

 前述したように、新型コロナウイルス問題は、長期化する恐れもある。県内の今の経済状況を考えると、県税収入が落ち込むことは必至だろう。財政運営は益々、厳しくなる。もちろん、政府に対しては、引き続き交付金の積み増しを要望していく。

 ただし、同時に、来年度予算編成に向けた事業見直しも避けて通れない。場合によっては、今年度の既決予算についても、必要性が無くなった施策、不要不急の事業を見直すための検討をやらざる得なくなるかもしれない。

 次回のブログに続く。