2020年3月28日

 昼過ぎ。食休みの間に、ブログを更新する。

 館林厚生病院が3月26日(木)に民間検査機関に委託したPCR検査は56件。そのうち、本日、1名の方の陽性が確認された。新たな感染者の発生に関しては、今日16時から、健康福祉部長による記者会見を行う。

 ここ数ヶ月の週末のいつもの風景ではあるが、朝から健康福祉部長、首席補佐官、ネット戦略アドバイザー等と、電話で頻繁に連絡を取り合っている。先ほど、宇留賀副知事ともメッセンジャー(facebook)で意見交換した。

 盟友の須藤和臣 館林市長からは、少し前に携帯メールが届いた。「須藤市長、情報共有、ありがとうございます。よく連携を図りながら対応していきましょう」と返信した。

 群馬県の場合、1例目の感染者となった保育士、4例目の医師の他は感染経路の目星がついている。東京都のように感染経路の追えない患者が急増している状態ではない。 前回のブログでも触れたが、群馬県は「爆発的な感染拡大に至らないギリギリの状態」で踏ん張っている。

 が、危機的なシナリオも想定した準備が必要だ。どんなタイムテーブルで、何を整えなければならないのか?どうやったら県民を守れるのか?連日、知事室で真剣な議論を続けている。

 知事として、県民の方々の不安は良く分かる。「とにかくPCR検査を増やして欲しい。そうじゃないと安心出来ない」という気持ちも理解出来る。

 「37.5度以上の熱が4日以上続いた場合」という医学的観点からの方針は踏まえつつ、県民の人たちに対して、様々なチャンネルで、「これは4日間は病院に行かずに我慢してくださいという意味ではない。熱が続かなくても、強い倦怠感や息苦しさなどの症状が出た時は躊躇せず相談を」とも呼びかけている。

 加えて、新たな設備の導入や民間検査機関への委託等を通じて、より多くのPCR検査を行える体制も整えて来た。濃厚接触者に関しては、「症状の出た人をPCR検査の対象にする」という基本的な考え方は維持しつつ、状況に応じて、検査の基準を広げていくことも重要だ。感染をめぐる新たな状況も踏まえ、県として今後もPCR検査の数を増やしていく。

 ただし(そうは言っても)、このブログでも一貫して述べて来たように、「闇雲に検査の数だけ増やしていけばいい」というものではない。この点は、県民の皆さんにも、ぜひ分かっていただきたいと思う。

 前例のない危機(グローバル世界におけるパンデミック)に直面している今、政治リーダーに求められるのは、有権者を喜ばせる派手なアピールではない。専門的な知見に基づく冷静な判断だ。自分はそう考えている。

 新型コロナウイルス対策の危機管理チームの会合で、改めて専門家の方々の意見を聞いた。少し前にYouTubeで生放送した「Ask知事!」でも、県の衛生環境研究所長から、「そもそもPCR検査とは何か?」「なぜ症状の出た人を対象に実施しているのか?」を、詳細かつ分かりやすく解説してもらった。

 PCR検査がウイルス感染を調べるための重要なツールではあることは間違いない。が、この検査は完全ではない。いわゆる「擬似陰性」の人々が逆に市中に感染を広げる可能性だってある。オーバーシュート(患者の爆発的増加)に見舞われている国々の状況も十分に分析した上で、現場の医療崩壊を避けるための方策も同時に打ち出していく必要がある。ちなみに、(自分の記憶が正しければ)欧州の医療先進国は、「軽症者はPCR検査しない」という政府方針を明確にしている。

 何度も言うが、(予断は許さないものの)群馬県では、まだ「爆発的な感染拡大」は起こっていない。県や市町村の努力、何より県民の人たちの協力のお陰で、「何とか抑え込んでいる」状況だ。

 現段階で最も重要なのは、「感染経路を特定する」ことだ。口で言うのは簡単だが、とても一筋縄ではいかない。保健所の権限には限界があることに加え、プライバシーにも配慮しなければならない。それでも、知恵を絞って、感染ルート解明に力を注いでいく。

追伸:YouTube Premiumで、毎日のようにニューヨーク州のアンドリュー・クォモ知事の記者会見を見ている。メディアでは、米国の新たなヒーローになりつつある。発信がとても戦略的だ。政治家として勉強になる部分が多い。

 が、それでも、名物知事のお馴染みのフレーズを聞きながら、ふと思った。「クォモ知事がこんなふうに賞賛を浴び続けられるかどうか、後々の評価がどうなるかは、まだ分からないな」と。

 

◇新型コロナウイルス感染症について(群馬県)
https://www.pref.gunma.jp/02/d29g_00243.html

◇群馬県の新型コロナウイルス感染症患者の状況
https://www.pref.gunma.jp/07/z87g_00016.html