2019年12月1日

 今日から12月。令和元年の夏に始まった知事としての怒涛のような全力疾走の日々も、いよいよ今年最後の1ヶ月に突入した。一昨日の県議会の一般質問でも述べたように、本当に濃厚で、中身の詰まった4ヶ月間だった。24年間の政治生活の中で一度も体験したことのない感覚だ。(ふう)

 1%の後悔も残したくない。あと1ヶ月、全身全霊で駆け抜ける!!

 さて、昨日のブログで、逝去された中曽根康弘元首相のことを書いた。翌日、ある読者の方から、こんな趣旨のメールが届いていた。

 「一太知事のお父さんは福田派だったから、あまり中曽根元総理とはお付き合いがなかったかもしれません。でも、もし中曽根元首相について何か印象に残った話があったら、もう少し教えてもらえませんか?」

 分かりました。ご要望にお応えして、今回も中曽根元首相のことを書かせていただきます。

 信じてもらえないかもしれないが、よく「山本一太の強みは(何と言っても)演説力だ!」と言われる。もちろん、贔屓目もあるとは思うが、地元の支持者の人たちは、「どの国会議員より、言葉に力がある。話も面白いし、説得力もある。どんな会合でも、一太さんのスピーチが一番、印象に残るよ!」と言ってくれる。

 「そうそう、オレは演説が得意なんだ!」なんて自慢するつもりはない!(笑)世の中には、もっと雄弁な人が大勢いるはずだ。が、正直に白状すると、選挙演説でも、様々な行事の挨拶でも、冠婚葬祭のスピーチでも、今、周りに「このひとは本当に喋るのが上手い!」「言葉に魂が宿っている!」と感じる政治家は、ほとんどいない!

 大抵の議員は、どこかで聞いたようなエピソードを、どこかで聞いたような表現で長々と喋る。簡潔明瞭にはほど遠い。(ごめんなさい!)だから、ちっとも印象に残らない。

 安倍首相のダボス会議の英語の基調講演は素晴らしかった。米国議会の両院合同会議での英語の演説も歴史に残る名演説だった。2つとも間近で聞いたが、思わず身体が震えた。インドの国会でのスピーチも格調が高い。読み返すたびに、感銘を受けるほどだ。

 総理の話はいつも面白いし、演説のスタイルもカッコいいと思う。が、ご本人が雄弁家かと言われれば、それは少し違う気がする。

 小泉純一郎元総理の短くてインパクトのあるフレーズ(いわゆるサウンドバイト)も心地良かった。「演説とはパッション(熱)だ!」ということを、改めて教えられた。が、このひとを一種の天才だと感じたことはあっても、演説の天才だと思ったことはなかった。

 亡父山本富雄が生涯の師と仰いでいた故福田赳夫元総理の演説は、「上手いとか下手とか」いう次元を超えていた。(笑)地元で何度も演説を聞いたが、元総理が現れただけで、聴衆が沸いた。ニコニコしながら喋っているだけで、皆が満足だった。こういう政治家は、他に思い浮かばない。

 故小渕恵三元総理の言葉には温かみがあった。優しいだけではなく、実はとてもユーモアセンスのあるひとだった。ウィットのある話ぶりで、よく聴衆を盛り上げていた。

 それでも、尊敬する福田赳夫元総理や小渕元総理が「演説の達人だった」という印象はない。

 振り返ってみると、自分が「このひとは本物の雄弁家だ!」「思わず演説に引きこまれる!」「独自の世界を持っている!」「とても勉強になる!」と思った政治家は次の3人しかいない。亡父の山本富雄と石破茂元自民党幹事長、そして中曽根康弘元首相だ。

 24年前、父の急逝を受け、初めて参院選挙に立候補した。自民党公認候補が山本一太1人に絞られたこともあり、中曽根康弘元首相にも応援に来ていただいた。

 その時の演説は、今でも忘れられない!言葉の1つ1つに迫力があった。応援演説の冒頭は、こんな言葉で始まった。ハッキリと憶えている。

 「皆さん、たった今、30代の山本一太候補がこのステージまで駆け上がってきました。どうですか、若鮎のような活きの良さでしょう!(笑)政治家にとって最も大事なのは覇気。人間はいくつになっても覇気がなければ、何も成し遂げられない!山本一太君はそのエネルギーを持っている!」

 中曽根元総理の覇気は、政界を引退された後も全く衰えなかった。文章にも気迫が溢れていた。「すごい!」としか言いようがない。晩年も自分の演説を録音して、内容をチェックされていたと聞いたことがある。とても真似が出来るものではない!

 群馬県知事として、今後も様々なメッセージを県民に届けていく必要がある。中曽根元首相には及ぶべくもないが、言葉の力を研ぎ澄ませる努力を続けていきたい!!

 さあ、夕食を食べないと。明日は県議会の一般質問2日目。食後の紅茶を飲んだら、答弁資料を読む。