2019年5月24日:パート2

 4月5日に公開された映画「麻雀放浪記2020」は、出演者のピエール瀧氏が麻薬取締法違反の容疑で逮捕されるなど、劇場公開前に何かと注目を浴びた。そもそも、今、日本の映画界で最も勢いのある白石和彌監督がメガホンを取り、実力派の斎藤工さんが主役を務めた作品なのだ。

 期待が高かった割には、興行成績が思ったより伸びなかった(?)ようだ。公開館数が少なかった(約50館)影響もあったとは思うが、(個人的には)ちょっぴり残念だった。試写会で見せてもらったが、スゴく面白かった。細かいアラを探せばキリはないが、日本映画が失っていた「熱」を感じさせる「やんちゃな映画」だった。👍

 実は東映関係者の要請で、劇場用のパンフにコラムを寄稿した。この依頼はとても嬉しかった。子供の頃から映画が大好きで、将来なりたい職業の1つに「映画監督」を挙げていた山本一太が、公に映画評論をする初めての機会だったからだ。ちなみに、コラムの原稿を書いて送ったのは、ピエール瀧氏の事件が起こる前だった。


 劇場公開日の1週間ほど(?)前に、出来上がったパンフが事務所に送られて来た。それを見て驚いた。夜中に大急ぎで書いた原稿が全く修正されていなかった上に、見開きの2ページを使って掲載されていたからだ。(驚)これは家宝(?)として大事に保管しておくことにする。(笑)

 白石監督、東映の皆さん、群馬の映画を創る時は、自分がもし「次の知事」になれたら、ロケ誘致にも力を入れたいと考えています。群馬の映画を創る時には、ぜひ力を貸してください!!

 劇場用パンフに載ったコラム「日本人よ、もう一度、野生の生存本能を呼び覚ませ!」は以下のとおり。

 

「COLUMN」

日本人よ、もう一度、野生の生存本能を呼び覚ませ!

参議院議員 山本一太

 

 闇市や賭博やヒロポンが横行する敗戦直後の東京から、2020年の東京にタイムスリップした主人公の坊や哲。哲が暮らしていた戦後の混乱期は、庶民にとって厳しい時代。人々は貧しく、生きることに精一杯だった。それでも、どん底から這い上がり、復興を成し遂げていくあの頃の日本人には、逞しさがあった。1人1人の人生にドラマがあり、波乱があった。毎日が、明日をも知れぬ危険と隣り合わせだった。逆境の中だからこそ、ある種のロマンがあった。

 戦後の経済成長で、日本は豊かになった。「平和」や「安定」は当たり前になり、安定志向に走る若者は、夢を追わなくなった。ところが、今、日本は新たな危機に直面している。映画の中でも示唆されている安全保障環境の激変、国境を超えたサイバーテロの脅威、少子高齢化の進行、AIの進化がもたらす社会の変容、世界的な民主主義の機能不全現象等の試練に日々、晒されている。

 にもかかわらず、多くの日本人はそのことに気がついていない。奇想天外な娯楽コメディー作品という形を取りながらも、この映画のメッセージは、危機感の欠如した日本人に警鐘を鳴らしているのではないかと感じた。「日本人よ、もう一度、野性の生存本能を呼び覚ませ!」と。

 かつての日本映画には、社会を変えるメッセージ力があった。娯楽としての側面もちろん、人々の想像力を掻き立て、心を解放させ、社会通念や意識を変え、ひいては新しい文化を生み出す影響力さえ持っていた気がする。ところが、いつ頃からか、すっかり元気が無くなった。批判や反発を恐れるあまり、表現を過度に自主規制しているように見えてしまう。社会風刺など時代遅れだと言わんばかりに。そこに登場したのがこの映画だった。「待ってました!」と思った。

 いち映画ファンとして、「麻雀放浪記2020」に言いたいことは山ほどある。現実離れしたシナリオ、あまりに大雑把な設定、もう少し頑張って欲しいCG…。権力批判(?)も中途半端だ。ただし、エンタメとしては、文句なく面白い!

 主演の斎藤工さんの味のある熱演、AI搭載アンドロイドを演じたベッキーさんの女優としての恐るべき潜在力、ドテコ役のももさんの超自然な演技、脇を固める竹中直人さん等の実力派スタッフの怪演等々、見どころは満載だ。麻雀というゲームの醍醐味も十分に伝わってくる。日本映画全体がもっと「やんちゃになる」きっかけになるのではないか?!

 え?国会議員試写会で「東京五輪中止」という設定への批判が出たことで、公開されない可能性もあったらしいって?!白石和彌監督にしては、この内容でも遠慮し過ぎだと思う。(笑)次回の続編(?)は、国会審議で本当に問題視され、それこそ上演中止にになるような「更に尖った」作品を期待している。