2017年7月23日

 22時20分。先ほどNHKから速報が流れた。「仙台市長選で民進、社民が支持した郡和子氏が当選確実」とのこと。思わずため息が漏れた。

 気分を変えるために、カロリーゼロのスプライトを飲んだ。(ふう)気を取り直して、本日のブログを書く。

 正直に言うと、「やはりダメだったか!」という感じだ。終盤、自民党と公明党が応援した菅原候補がかなりの追い上げを見せた。苦しい情勢ではあるが、最終3日間の展開によっては、逆転も不可能ではないと思った。一縷の望みにかけていた。

 ただし、仙台市内で感じた空気感から、直感的に「投票率が上がる(=無党派層が動く)と当選は難しくなる」と感じていた。残念ながら「中央の政治状況(安倍内閣の支持率急落を招いている様々な問題)が今回の市長選に負の影響を及ぼした」ことは間違いない。

 歴史的な惨敗を喫した東京都議選の総括(?)が、どんな形でいつ行われるのかは知らない。が、東北の中核とも言える仙台市での敗北も深刻に受け止める必要がある。敗因を細かく分析し、対策を練るべきだ。それも早急に!

 よもや「普通なら盤石のはずの横浜市長選挙」で現職が危なくなるような流れにはならないだろうと思うものの、その後の茨城県知事選、愛媛3区の補欠選挙には、少なからぬ影響を与えるだろう。地方選の連敗という負の連鎖を、どこかで断ち切らねばならない。

 都議選での惨敗、内閣支持率の急落、仙台市長選挙の敗北はどれも容易ならざる事態だ。なぜ負けたのか?選挙の戦略は正しかったのか?今後の選挙に何をどう生かしていけばいいのか?手遅れにならない前に、一度、党内で全議員の率直な意見を聞く場面を設けたほうがいいと思う。

 国民に対して、自民党がオープンで、自由に発言出来る政党であることをアピールする機会にもなる!

 少し前のブログにも書いたが、もう一度、繰り返す。「国民の厳しい声を真摯に受け止める!」とか、「次の衆院選挙は大変だ!」などと言いながら、自民党に「真の危機感」が感じられない。国民からの高い支持を背景に「前人未到の国政選挙4連覇」を成し遂げた安倍政権の下で、すっかり緊張感を無くしてしまった気がする。

 最近、こう思わずにはいられない。「自民党の多くの衆院議員は、あの2009年の『悪夢のような政権転落選挙』をすっかり忘れてしまったのではないか?!」と。「今の大半の自民党参院議員は『4回の選挙で一時は50人もいた同期が次々と落選し、最後は4人になってしまった』参院選挙の厳しさというものが分かっていないのはないか?!」とも。

 2009年の夏。党幹部でも閣僚でもなかった山本一太は、仲間の応援のために全国を飛び回った。遊説カーでマイクを握り、雨の中で現職候補と並んで街頭演説をやり、あちこちの決起大会で言霊を炸裂させた。

 結果は自民党の惨敗だった。300議席から119議席に激減した。結党以来、初めて衆院第1党の座から転落。いわゆる「小泉チルドレン」は10名を除いて壊滅。現職大臣も次々に落選した。

 自民党が獲得した119議席のうち、選挙区の議席は64。すなわち、小選挙区では64人しか当選出来なかった。46人は比例復活だった。そこに純粋比例9が加わって、やっと119に達したのだ。

 後から振り返ると、自民党の議席が100に届いたのは幸運だった。もし100に届いていなかったら、党が瓦解していた可能性もある。その後の再生もなかっただろう。

 過去のブログでも同じことを言った記憶がある。永田町の選挙研究家を自認する山本一太の目から見ると、実は「本当に選挙の強い自民党議員」はそんなに多くない。上記のデータが示すように、2009年の政権交代選挙では、小選挙区で当選した議員は64人だけだった。言い換えれば、無党派層の反乱という暴風雨の中でも勝てる議員は70人に満たないということだ。ましてや、逆風を跳ね返して圧勝した自民党候補はごく少数だった。

 過去のブログで勝手に認定した「自民党選挙最強5人衆」(安倍晋三総理、石破茂衆院議員、河野太郎衆院議員、小泉進次郎衆院議員、小渕優子衆院議員)は、あくまで例外なのだ。その事実をけっして忘れてはならないと思う。

 2009年の選挙で落選した多くの前職が、安倍総理の人気のお陰で復活した。その後、安倍政権下の選挙で連勝し、念願の(?)閣僚に抜擢されたひともいる。そのうちの1人がある会合で、「オレは選挙が強い!誰が出ても問題ない!」みたいなことを話していたと聞いた。「これこそ『一強多弱』が生んだ危険な慢心だ。党全体がこうなっているのかもしれない!」と思わざる得なかった。(苦笑)

 13年以上のキャリアを持つ議員の選挙力を図る有力な指標がある。それは、中選挙区時代の実績だ。中選挙区で他派閥の自民党議員と戦い、常に4、5番目の順位(ビリに近い順位)で当選していた議員は「選挙に強いタイプ」とは言えない。本物の選挙力を持った政治家は、複数区でもトップ当選する。野党になっても勝ち続ける。そういうものだ。

 こうした中選挙区では苦労していた議員の人たちが、小選挙区の調整(自民党候補が1人に絞られるプロセス)を経て「選挙基盤が安定した」途端に、(ビリのほうで当選していたことはすっかり忘れて)「オレ(私)は選挙が強い!前回もこんなに勝った!」みたいなことを言い始める。(笑)若手議員に向かって、「君は選挙区での努力が足りない。これじゃあ勝てないよ!」などと上から目線で説教したりしている。

 こんな場面を目の当たりにすると、「政治家って、つくづく慢心しやすい生物なんだな」と思ってしまう。(笑X2)その度に自分自身に言い聞かせる。「過去4回の参院選挙は全てトップで圧勝した。毎回、得票も増やして来た。でも次回は激戦必至だ。負ける場合もある。後悔を残さないように、あらゆることをやっておこう!」と。

 先日、ある若手議員から選挙のアドバイスを求められた。いつもの台詞を繰り返した。

 「どんな選挙にも活用出来る戦略なんて存在しない。選挙区によって事情が違うし、有権者の文化も違う。議員の個性も違う。自らの特徴を生かした戦術を自力で編み出すしかない!」

 「その点で言うと、守るべき鉄則が1つある。それは選挙の弱い先輩議員の助言を絶対に聞かないことだ!(笑)」

 あらゆる選挙を勝ち抜いて来た安倍総理、菅官房長官、二階幹事長は、けっして「2009年の悪夢」を忘れていないはずだ。にもかかわらず、自民党全体に漂うこの「危機感の欠如」は何なのだろうか?!どう考えても「一強多弱」に慣れ切ってしまったせいだ。そうとしか考えられない。

 自分も含め、1人1人の自民党議員が、もっと謙虚に国民の声に耳を傾けるべきだ。そうじゃないと、内閣はジリ貧になっていく。次の国政選挙で、自民党は再び強烈なしっぺ返しを受けることになる。都議選の警告を見逃してはならない。

 

 え?自民党の支持率は野党に比べてまだ十分高いし、民進党の人気も下がっているって?!自民党以外の受け皿(選択肢)が出来た瞬間に、今は高止まりしている党の支持率もガクッと落ちるだろう。

 自民党の全議員、同志の人たちに改めてこう申し上げたい。「あの政権交代選挙を忘れるな!」と。比例復活で胸に付いた議員バッジは半分の価値しかない。何度も言うが、2009年の選挙では64人しか当選していないのだ。無党派層が本気で怒ったら、どんな組織選挙を展開しても為す術がない。現時点では参院最強の山本一太だって、簡単に吹き飛ばされてしまう。

 

 今こそ、苦しかった野党時代の「初心」に戻るべきだ。