2017年7月21日:パート2

 東京に向かう新幹線の車中にいる。某県議の県総合表彰祝賀会で祝辞を述べ、再び軽井沢駅から新幹線に飛び乗った。政治家忍法「とんぼがえりの術」だ。

 政治家山本一太の感覚は間違っているだろうか?自分の目には、周りの自民党議員たちが、安倍政権をめぐる現状を(口では「大変だ!」などと言いつつも)「軽く見過ぎている」と思えてならない。都議選の歴史的敗北を受けた今回の内閣支持率続落は、思った以上に深刻だ。

 このままだと、来週の閉会中審査、それに続く内閣改造という流れの中で、国民の心が安倍内閣から更に離れていく可能性がある。

 場合によっては、これだけの実績を残している政権が「支持率2割を切って死に体になる」という最悪のシナリオさえ起こり得る!そして、政権失速のペースは、多くのひとが思っている以上に早いかもしれない。

 その危機感が、この「苦言シリーズ」を掲載させているのだ。

 過去4年間、第2次安倍政権は何度か試練に見舞われた。が、女性閣僚が2人続けて辞任した時も、国民を辟易とさせた醜聞に見舞われた大臣を総理が庇い続けた際も、国民の賛否が分かれる重要法案を成立させた時期も、今のような形で支持率の低下が続くことはなかった。大半の国民が安倍総理を信頼していたからだ。

 TBSの「ひるおび」でも言及したが、総理の高い支持率を支えていたのは、極端に右寄りの人々ではない。そもそも、ほとんどの日本人は極右でも極左でもない。穏健な保守感覚を持つ人たちなのだ。職業や立場は違っても、毎日、真面目に仕事をし、額に汗して頑張っている人々なのだ。

 安倍政権は、そうした「普通の感覚を持つ」一般の国民の信頼を失いつつある。今まで安倍首相を支持し、安倍内閣の実績を評価していた多くの日本人が、今までは頼もしく見えていた総理の指導力や行動力を傲慢に感じている。これまで安心感を抱いていたリアリストとしての総理の感覚にある種の不安を覚え、清廉でウソがないと感じていた総理の言葉に疑いを持ち始めている。

 そうじゃなかったら、5割から6割を維持して来た国民からの支持が、こんな短期間で3割を切るわけがない!不支持率が5割に達するはずがない。いったん嫌われてしまったひとに、もう一度、好きになってもらうのは難しい。相当の努力が要る。

 安倍総理の人間性や美学をよく知っているだけに、「国民の7割が安倍首相の加計学園の獣医学部新設問題に関する説明に納得していない!」という世論調査の結果は、かなりショックだった。敬愛する菅官房長官のイメージが一部、間違って伝えられていることも極めて残念だ。

 先日、「直滑降ブログ」の読者からメールが届いた。「一太さん、総理が苦しい時だからこそ、徹底的に安倍政権を擁護すべきではありませんか?苦言を呈するのではなく、偏向報道を繰り返し、国民を惑わすアンチ安倍のマスゴミの劣化と陰謀を攻撃してください!政府の対応には全く問題はありません。悪いのは改革の抵抗勢力である文科省と獣医学会です!!」

 この要望に応えて、山本一太が、「安倍総理には反省する理由もなければ、国民にお詫びする必要もない。今、問題にされているあらゆる問題に関して、政府の方針や説明には全く問題がない!」「都議選の惨敗や内閣支持率の急落は、全て安倍政権を引き摺り下ろそうとする偏向メディアの策謀だ!」「文科省の官僚が作成したあらゆるメモは事実無根!大臣や副長官の主張が100%、正しい!」と発信したとする。

 この種の発言で、安倍内閣に対する国民の信頼を本当に回復出来るなら、喜んでそうする。が、全くの逆効果だ。(苦笑)一部の人は喜ぶかもしれないが、大半の国民は政府与党に対する嫌悪感を強めるだろう。国民の半数が安倍内閣にNOと言っているのだ。先ずは反省の姿勢を見せない限り、どんな正論を言ったところで、聞いてもらえるわけがない!

 安倍政権にも自民党にも、確かにある種の「奢り」があった。自分はそう思う。様々な問題に関して、有権者にもっと丁寧に説明すべきだった。そう感じたからこそ、安倍総理自身が記者会見で率直な反省を言葉にし、「指摘があれば、その都度、真摯に説明責任を果たしていく」と明言したのだ。

 来週は総理出席の下で、衆参の予算委員会(閉会中審査)が行われる。この審議も含め、今後、総理には「真摯に説明責任を果たす」という約束を実践して欲しい。いったん離れた支持者を取り戻す手段は、総理自身の言葉で誠実に真実を語ってもらうこと。これ以外にはない!

 たとえば、今、7割を超える国民が「稲田防衛大臣は辞任すべきだ!」と考えている。自分も含め、多くの同僚議員が地元で同様の意見(というより批判)に晒されていることは間違いない。

 前々回(?)のブログでも触れたが、任命権者として「あくまで稲田大臣を守る姿勢を崩さない」のは、いかにも信義に厚い総理らしい判断だ。ここが安倍総理の魅力でもある。

 ただし、国民が納得する「続投の理由」が必要だ。そうじゃないと、支持率はさらに下がる。総理が自らの美学にこだわるあまり、肝心の安倍政権が求心力を失ってしまったら元も子もない!それこそ国益を損ねる。

 あ、もう東京駅。この続きは「苦言:その11」で。