2016年3月18日

 午前6時。 朝の熱い紅茶を片手にMacのキーボードを叩き始めた。 今日は午前11時から総務会がある。 郵政民営化に関する政令改正については、いろいろな意見が出るだろう。 残念ながら、今回は最後までいられそうにない。 官邸で菅長官とのアポがあるからだ。 戻って来たら議論に間に合うか…なあ。

 2年半前、あの週刊誌報道の直後に佐田玄一郎衆院議員が衆院議院運営委員長を辞任した。 山本一太の参院選挙の少し前のことだった。 参院1区選対の役員を自ら辞退した佐田氏は、その後、半年近く(?)政治活動を休止した。 地元の会合に出ることも自粛していた。 

 政治家がこの種の試練に遭遇した場合、(記者会見で謝罪や説明はしなかったとしても)少なくとも地元の支持者の人たちを回って謝罪し、事情を説明する。 当然のことだ。 動揺している選挙区の県議や市議のところにも駆けつけるだろう。 ましてや、あの記事のインパクトは、あまりに強烈だった。  
 
 政治生命に関わる問題を指摘された政治家が本当に生き残ろうと思ったら、真っ先にやらねばならないことは決まっている。 早急に各地域の自らの後援会を招集し、そこでお世話になって来た支持者に頭を下げて心配をかけたことをお詫びし、真相や経緯を誠実に説明し、続投(?)の決意を訴え、支持者の方々の理解を求める。 その上で、議員本人からの謝罪と説明を受け入れた後援会に「変わらぬ支持」を表明してもらうことだ。 

 残念ながら、佐田玄一郎衆院議員のケースでは、このプロセスが完全に欠如していた。 そうしなかった理由はよく分からない。

 毎週末、群馬1区、特に前橋市と利根・沼田地域を回る度に、「佐田さんからは何のお詫びも説明もない!」「年明けから地元の会合に出ているようだけど、あの件について一言もない。何事もなかったかのように挨拶している。どういうことなんだ!」といった批判の声を聞くようになった。 特に佐田代議士をずっと応援して来た人たちが怒っていた。

 それでも、当時、(自分が知る限り)前橋選出の県議団の中に、「現職の衆院議員を引きずり下ろそう」などという雰囲気はなかった。 支持者への説明には窮していたとは思うが、きっとそれぞれの県議が各々の後援会の集まり等で「佐田衆院議員にお詫びや説明をしてもらう」機会を作ろうとしていたのではないだろうか。 

 過去のブログでも触れたが、3人(当時は4人)の県議は全員が情に厚くて、心優しい上州人なのだ。 よほどのことがない限り、「現職の国会議員を差し替えてくれ」なんて言うわけがない。 この頃、「何を言っても佐田氏が耳を貸してくれない」という話も聞いた憶えがある。

 佐田衆院議員の立場からすると、役職を辞めたことで責任を取ったという感覚があったのかもしれない。 が、群馬県民、特に今まで佐田氏を応援して来た支持者の人々は、あの週刊誌報道から2年半が経過した今も「本人が全く説明責任を果たしていない」という認識のままだ。 多くのひとが、「依然として本人からまともな謝罪もなければ、納得出来る説明も聞いていない」と考えている。

 衆院群馬1区をめぐる2度目の騒動の源泉は全てここにあると言っていい。 ある時、佐田後援会のある大幹部がつぶやいた。 「もう佐田さんのことは応援したくない。後援会の役職も辞めさせてもらった。オレは一太さんのことだけやる!」と。 「昨日、自宅のポストに本人の名刺だけ置いてあった。でもね、約束も取らないで来たって、説明したことにならない。逃げてるんだ!」とも。 同じセリフをあちこちで聞くようになった。 長年、佐田議員を応援していた人たちまでが急速に離れているように見えた。 「00地区の佐田後援会は解散した」という話も伝わって来た。

 そうした批判や離反の広がりが尋常ではないと感じた。 何度かご本人にこの状況を伝えようとも考えた。 が、先輩議員だけに言いにくかった。 話したところで聞いてもらえないだろうという気持ちもあった。 が、しかし、迷惑がられても言うべきだった。 同じ群馬選出の国会議員として反省している。

 週刊誌報道から1年半後の12月に衆院選挙があった。 12月解散の流れが強まる中で、佐田玄一郎衆院議員に対する地元の反発も膨れ上がっていった。 特に、自分たちの支持者を説得しなければならない県議団と苦しい時代も自民党を応援してくれた支部党員の憤懣は頂点に達していた。 

 これはさすがにマズいと思って、佐田衆院議員とアポを取った。 議員会館事務所でご本人と会った。 次のように申し上げた。 「前橋が大変なことになっています。僭越ながら、もっと1区の県議の人たちを大切にされたほうがいいと思います。先生の支持者も怒っているし、自民党支部の役員の反応も厳しいです。このままだと公認候補を差し替えろという動きになるかもしれません!」

 佐田氏からこんな返事が返って来た。 「あのね、小選挙区制度なんだから、現職の自分が出ると言えば、誰も出られないんですよ!」と。 危機感が全く感じられなかった。 それ以上は何も言えなかった。 が、その後、これ以上の行動を取らなかったことも後悔している。

 恐れていたとおり(というか予想したとおり)、自民党前橋支部でも、1区県議団でも、「現職の支部長である佐田玄一郎衆院議員の公認申請は支部として行わない」という方向が打ち出された。   

 たしか公認申請問題を話し合う自民党前橋支部の役員会だったと思う。 会議が始まる直前、会議室の前で1人1人の出席者に頭を下げる佐田玄一郎氏の映像がテレビのニュースで流れた。 その映像を見て、こう思わずにはいられなかった。 

 「今になってこんなことをやるくらいなら、なぜ、あの時、自分の話をちゃんと聞いてくれなかったのだろうか?(ため息)」と。 ちなみに、この前橋支部の会議では、「佐田氏を推薦しない」という意見が大多数を占めたと記憶している。

 あ、お湯が沸いた。 もう1杯、ミルクティーを飲む。 この続きはその6で。


◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」