2015年11月10日:その2

 10月10日(土)の未明。 ユネスコが「南京事件」に関する資料の登録を発表した。 新規登録申請は88件。 この日に登録が決まったのは「南京事件」を含む47件だった。 同時に申請されていた「慰安婦」の登録は見送られた。

 今後、日本政府として取るべき対応はハッキリしている。 それは、ユネスコとの協力関係の見直しを検討しつつ、ユネスコ記憶遺産制度の制度改革を主導していくということだ。

 先週、パリで行われたユネスコの総会に馳浩文科大臣が出席した。 日本の文科大臣が出席するのは実に10年ぶりのことらしい。 報道によれば、馳大臣は総会で記憶遺産の制度改善を訴えたとのこと。 ボコバ事務局長とも会談したと聞いた。 この件については、明晩のウェブ番組「直滑降ストリーム@cafesta」で大臣に直接、聞く。

 今、政府(文科大臣)は記憶遺産制度の問題点の洗い出しを急いでいるはずだ。 恐らく年内には、日本政府の提案(改革案)がまとまるのではないか。 日本政府としては、この改革案に賛同してくれるユネスコ加盟国を募り、執行委員会で提案を示す必要がある。 改革のための作業部会の設置も目指すべきだ。 こうしたプロセスの中で、「南京事件」の登録削除を求めていくことになるだろう。

 ユネスコの執行委員会は1年に2回、開催される。 次の執行委員会は来年の4月。 すなわち、次回の国際諮問委員会が開催される2017年の夏までに3回の執行委員会が開かれることになる。 ここが勝負の舞台だ。 2年後に再び申請される「慰安婦」関連の資料の登録を阻むのは、けっして簡単な作業ではない。 

 さらに言うと、現時点でどのくらいの国が日本が求めるユネスコ記憶遺産改革を支持してくれるかも良く分からない。 ここから日本の外交力が試される局面が続く。 与党としても、政府の取り組みを全力で後押ししないといけない。 機会があれば、外交部会や文科部会でも発言する。 ユネスコへの最大の拠出国として、加盟国政府はもちろん、ユネスコ事務局に対しても働きかけを強めるのは当然だ。 

 それでも、ユネスコへの分担金や拠出金の支払停止は「稚拙な戦略」と言わざる得ない。 その理由は、次回のブログ(その9)で解説する。


◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」