2015年9月21日

 複数のマスコミの最新の世論調査によると、安倍内閣の支持率と不支持率が再び逆転したようだ。 が、依然として4割近い内閣支持率を維持している。 

 現時点でも国民の7、8割が説明不足と考えている重要法案が成立した直後にしては、支持率の落ち込みは予想より少なかった。 政権としては「想定の範囲内」だろう。

 もうひとつ特筆すべきは、自民党の政党支持率が大して下がっていないこと。 さらに言うと、最大野党である民主党の支持率もほとんど上がっていない。 法案に反対した野党にとっても、期待外れの数字だったのではないか。

 さて、前々回のブログで触れた「山本一太フライング事件」の真相に加え、参院での平和・安全法制の審議中には言えなかったことを、もう一つ「直滑降」の空間に残しておきたい。

 参院の特別委員会の審議では、平和・安全法制に合憲性があるという答弁を繰り返していた横畑法制局長官が、毎回、槍玉に上がった。 テレビ中継入りの集中審議でも、一般質疑でも、野党の委員たちから厳しく追及された。 

 「過去、内閣法制局が積み上げて来た憲法解釈を変えていいと思っているのか?」「法解釈の最後の砦である内閣法制局が政権にすり寄って使命を放り出すつもりなのか?」「憲政の歴史に汚点を残してもいいいのか?」等々。 容赦のないヤジや激しい批判が浴びせられた。

 横畑長官には申し訳ないが、この展開はやむを得ない。 自分が法案に反対する立場だったら、全く同じことをやったはずだ。 これまでの法制局の答弁との関係を徹底的に質したに違いない。 今回、内閣法制局長官に攻撃を集中させたことに関して、野党の戦術を批判するつもりはない。 

 ただし、「内閣法制局こそ法案解釈の権威であり、その見解は『不磨の大典』である」かのような主張をする某民主党議員の質問には、違和感を感じざる得なかった。 

 そりゃあ、そうだろう。 民主党が権力の座にあった頃、具体的に言うと鳩山総理と菅総理の時代、「政治主導」を掲げ、「憲法解釈は内閣が解釈論を国民、及び国会に示すべきだ」と主張していたのは他ならぬ民主党自身なのだ。 事実、内閣法制局長官に憲法解釈に関する国会答弁をさせなかった時期があった。 あの時のことはよく憶えている。

 2010年6月8日の朝日新聞に次のような記事が掲載された。
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<法令解釈担当は官房長官に>

「内閣が責任を持った憲法解釈論を
 国民のみなさま方、あるいは国会に提示する」

8日、菅政権の組閣発表の会見。官房長官に決まった仙谷由人は、よどみない口調でこう述べた。

「憲法解釈は、政治性を帯びざるを得ない。その時点、その時点で内閣 が責任を持った憲法解釈論を国民のみなさま方、あるいは国会に提示するのが最も妥当な道であるというふうに考えている」

 鳩山内閣と同じく、内閣法制局長官に憲法解釈などの国会答弁をさせない方針を続ける、その理由の説明だった。前行政刷新相の枝野幸男が兼ねていた「法令解釈担当」を自分が引き継ぐとも表明した。(後略)
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 昔のエピソードを持ち出して来て、「民主党のやっていることは矛盾だらけだ!」なんて悪口を言うつもりはない。 でも、これだけは言っておきたい。 与党時代の民主党も、かつて内閣と法制局のあるべき関係について、真面目に悩んでいた時期がある。 そのことは、ぜひ、国民の皆さんに知っておいて欲しい。


◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」