2015年7月3日:パート2

 今の状況を考えれば、自民党執行部が党所属の若手議員に対して、「メディア出演については慎重に!」とアドバイスするのは当然だ。 他の出演者の顔ぶれを調べ、「どんな議論の流れになるのか?」「どう報道されるのか?」という分析もせず飛び込む若手がいたとすれば、それこそ「感性が鈍い」としか言いようがない。 微妙なタイミングだと感じれば、普通は先輩議員や党に相談する。 これもごく自然な展開だと思う。 

 が、だからと言って、自民党執行部は、TV局から出演依頼を受けた政治家本人が「どうしても出る」というのを、無理やりに押さえつけたりはしない。 最後は議員本人の判断だ。

 過去にも、自民党幹部から「テレビに出るのは極力、控えるように」みたいなお達しが回ったことはあった。 が、それでも必ず自らの判断で出演するひとたちがいた。 そのことに対して、党本部が何らかの処分をしたなどということは、全く記憶にない。 

 ガッカリさせるようで悪いが、自民党に「恐怖政治」などというものは存在しない!(断言) そんな組織だったとしたら、そもそも山本一太や河野太郎のような政治家が生き残っているはずがないではないか!(笑)

 この数年、政治家のTV出演(+政治報道番組)自体が少なくなっている。 ワイドショーにおける「政治ネタ」の重要度や頻度も、明らかに減っている。 それも原因の1つではあると思うが、大臣をやる前に比べると、地上波のTV番組にはあまり出なくなった。 が、小泉内閣とともに始まったTV政治全盛の時代には、1ヶ月に10回近くブラウン管に登場したこともあった。

 今、振り返ってみると、本当にいろいろな番組に顔を出した。 中には、不必要な露出もあった。(反省) 当時、マンスフィールド研修プログラムで事務所に来ていたFBIの捜査官が、「国会議員がバラエティー番組に出るというのは、日本独特の現象だ」と話していたのを思い出す。

 が、それでも自分は、党からの「自粛要請」(?)を受けてTV出演を取りやめたことはない。 出演をOKする時も、受けない時も、全て自分で(日程の都合や戦略的判断を踏まえて)決めていた。 「出るなら出る!」「出ないなら出ない!」 今もそうだ。

 たしか2003年だったと記憶している。 当時の自民党幹事長は、小泉総理の大抜擢で誕生した安倍晋三衆院議員(現・総理)だった。 その頃、TV朝日の何かの報道をめぐって自民党執行部が激怒し、「TV出演、特にテレ朝の番組に出ることは極力、控えて欲しい」という趣旨の文書(?)が発出された。 そんな憶えがある。 報道担当の副幹事長か誰かに確認したところ、「最後はそれぞれの判断に任せる」ということだった。

 たまたまこの騒動(?)の前に、テレ朝の「朝まで生テレビ」から出演依頼をもらっていた。 安全保障政策に関する議論だった気がする。 「自民党から誰かが行かねばならない」と思って、出演を承諾していた。

 ところが、上記のお達し(?)が流れた直後、本会議場の外で遭遇した参院自民党の某幹部に、「山本さん、今月のテレ朝の番組には出ないよね?もし出たら、後はないぞ!」と恫喝された。 「ポストなんていらない!」とトンがっていた40代の山本一太は、速射砲のように反撃した。 

 「いいえ、私の判断で出るつもりです。何か問題があるんですか?」「何だ、その言い方は!」「何だとは何だ!」 そこから、喧嘩腰のやり取りになった。 ちなみに、その時、やり合った議員は、次の選挙で落選した。 時代感覚が完全にズレていたからだ。

 当日の「朝まで生テレビ」(午前1時25分~)が始まる1時間ほど前に、安倍幹事長から電話がかかってきた。 「あ、一太さん?今日の『朝まで生テレビ』、出るんだね?」と聞かれて、「ハイ、幹事長。自民党の代表として出るつもりです」と答えた。 

 その言葉を聞いた安倍幹事長は、(落ち着いた声で)「そう。分かった。一太さんは苦しくても党の立場を踏まえて発言するひとだから、信頼している。出るからには、頑張ってやってください!」 さすがに安倍幹事長は懐が広いと思いながら、「しっかりやって来ます」と返事をした。

 20年間、自民党の国会議員をやってきた経験を踏まえて、もう一度、言わせてもらう。 TVに呼ばれた政治家が、「オレは(私は)どうしても出る!そのほうが党のためになる!」と言い張れば、党の執行部は強引に圧力をかけて止めたりしない。 が、しかし、そのことによって生じた影響や結果については、全てその議員本人が責任を取らねばならない。 ごく当たり前のことだ。

 すなわち、ある議員が党幹部のアドバイスを踏まえてTV出演をやめたとする。 それを「党の圧力で断念した」というのは誤った表現だ。 様々な状況を踏まえて、その議員本人が判断したということに他ならない。 

追伸:
1.過去20年間、苦しい時も踏みとどまってきた自民党に、「オレは(私)は本当にあのTV番組に出たかったが、党からの圧力でどうしても行けなかった!」などと後から文句を言う情けない政治家なんているはずがない。 そりゃあ、そうだ。 そんなことを後になって愚痴るくらいなら、(誰が何と言おうと)行けばよかったのだから。

 そのTV出演によってどんなマイナスが生じようと、どんな批判を浴びようと、次の選挙を(もちろん選挙区で)勝ち抜き、戻ってくればいいだけのことだ。

2.政治家が出演する地上波のTV番組は半減(?)した。 が、逆にBS放送では、「政策を徹底的に議論する」空間が広がっている。 これはこれで、ひとつの時代の流れかもしれない。


◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」