2015年4月26日~5月2日:パート2


<ワシントンDC編:No.1>

 4月27日。 安倍総理は昼過ぎの飛行機でワシントンDCに移動。 夕方からアーリントン国立墓地、続けてホロコースト博物館を訪れた。 前日に引き続き、総理にぴったり同行した。

 新しい内閣総理大臣にとって「訪米」は常に外交日程のトッププライオリティーだ。 そして公式訪問した日本の首相はアーリントン国立墓地を訪れるという慣例がある。 あそこで儀仗兵の出迎えを受ける場面は、新総理にとって「日本のリーダーになったこと」を実感する瞬間の一つではないかと思う。 

 考えてみたら、安倍総理がアーリントン墓地を訪れるのは、第一次安倍政権以来2度目のこと。 無名戦士の墓に献花をする安倍総理の姿を見ながら思った。 総理の胸にはどんな思いが過ぎったのだろうか、と。 あの苦しかった雌伏の時期を乗り越え、もう一度、日本の総理になったことの「重み」を改めて噛み締めていたのではないか。

 国立ホロコースト記念館「ヤド・バシェム」は、思ったより大規模な施設だった。 総理はここで約1時間を費やした。 終始、真剣な眼差しで展示品や写真に関する説明に耳を傾けていた。 

 見学後、記者団の前で行ったスピーチの中で、「差別と憎悪が人間を残酷にする。このような悲劇を2度と繰り返してはならない。世界の平和により貢献していきたい!」という趣旨のメッセージを発した安倍総理。 この言葉に強い共感を覚えた。 次に米国に来る機会があったら、個人的にもう一度、この記念館に足を運びたい。 1日かけてじっくり見学したい空間だ。

 翌日の4月28日は終日、ホワイトハウス関連の行事。 残念ながら、この日の総理のスケジュールには密着出来なかった。 午前9時から13時までは首脳会談等の重要日程。 前々回のブログにも書いたが、総理とオバマ大統領の日米首脳会談が始まった(?)頃、ネット戦略アドバイザーである自分は、同じホワイトハウスのイーストウィングにいた。 オバマ大統領のデジタルチームの責任者に会うためだ。

 13時30分から副大統領、国務長官主催の昼食会。 この昼食会には日系企業の関係者も大勢、出席していたらしい。 晩餐会は難しかったとしても、この昼食会の雰囲気は見てみたかったなあ。 19時過ぎからのオバマ大統領主催の晩餐会(State Dinner)は盛大だったと聞いている。 もちろん、マスコミも中には入れない。 終了後、日米の複数の出席者から一生懸命、情報収集した。 いろいろ面白いエピソードもあったが、詳しいことは書かない。 一言でいうと、異例の歓待ぶりだったとのこと。

 ちなみに、日本の首相による米国公式訪問は小泉元総理以来、9年ぶり。 小泉元総理訪米の際の晩餐会も(違う意味で)スゴく盛り上がったそうだ。 小泉元首相とブッシュ大統領の性格を考えれば想像に難くない。(笑) それでも、9年前の総理訪米に同行したあるひとが、「今回の米国政府の対応は小泉首相訪米の際より厚いのではないか」という感想を述べていた。

 翌29日の米国上下両院合同会議における総理演説こそ、間違いなく今回の訪米のハイライトだった。 過去のブログでも触れたように、この歴史的瞬間に立ち会えたことは、日本の国会議員として(特にずっと安倍総理を応援してきた政治家として)本当に幸運だった。 

 この日、安倍総理は午前10時から第2次世界大戦メモリアルを訪れた。 「今後も平和国家として世界に貢献していく」という日本の決意を内外に示す意味でも重要な視察だった。 視察を終えた後、そのままアメリカ合衆国国会議事堂(キャピタルヒル)に向かった。 

 キャピトルヒルには何度も行ったことがある。 が、下院の本会議場に入るのは初めてだった。 この米国の民主主義の本丸で総理の登場を待った。 自民党からも10名を超える議員が駆けつけていた。

 演説の時間が近づくにつれて、下院本会議場に続々と上下両院の議員たちが集まって来た。 こんなに大勢の米国の国会議員が一堂に会する場面は、もちろん見たことがなかった。 ある意味、壮観だった。 

 総理の演説が始まるまでに結構、時間があった。 すかさず議員外交を展開した。 先ずは、近くに座っていた仲良しのローラバッカー下院議員とガッチリ握手。 「おお、ichita!昨晩の夕食会は面白かったなあ!」 ローラバッカー議員がその場で何人かの同僚議員を紹介してくれた。 

 「日本の総理のスピーチを聴きに来てくれて、ありがとうございます!」とお礼を言うと、全員から「日米関係は大事だ。今日の安倍総理の演説を楽しみにしている」という答えが返って来た。 あ、議場の向こうにも知り合いの議員がいる。 挨拶に行きたかったが自粛した。 「あんまり目立ち過ぎてもいけない!」と思ったからだ。(笑)

 後で2階席から演説を傍聴していた親しい友人からこう言われた。 「どこにいても活動的な一太さんが、随分、遠慮してましたねえ!(笑)」と。

 そうこうしているうちに、下院議長の「間もなく合同会議を始めます」というアナウンスがあった。 議員たちが席につき、ざわついていた議場内が静かになった。 下院議長に呼ばれて、安倍信三首相が登場。 議員全員が立ち上がり、大きな拍手で総理を迎えてくれた。

 総理の演説は…素晴らしかった。 議場の雰囲気は、あの場所にいなければけっして分からないだろう。 今回の訪米最大の目玉というより、安倍総理の政治家人生における最高の舞台の一つだったと思う。 あ、お湯が沸いた。 熱い紅茶を飲まないと。 演説の様子については次回のブログ<ワシントン編:No.2>で。


◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」