2015年2月20日

 本日の衆院予算委員会で民主党を代表して質問に立った前原誠司衆院議員(元民主党代表)が、「朝鮮総連本部ビルの転売問題」を取り上げた。 

 TV中継された質疑の様子を見ながら思った。 「参院では、大臣をやるとなかなか質問するチャンスが回って来ない。でも、この総連ビルの問題は、自分が参院の委員会で突っ込みたかった。もっと鋭く切り込めるのに…なあ!(残念)」と。

 朝鮮総連本部ビル転売問題に関する安倍総理の答弁を聞きながら、2つのことが頭を過ぎった。 ひとつは、今回の競売問題の発端となった朝銀信組の破綻に関する党内の議論だ。 自民党内で最初に朝銀信組破綻処理の問題点を指摘し、注文をつけたのが安倍総理(当時の官房副長官)だったこと。 あの時、安倍官房副長官の主張は少数意見だった。

 もうひとつは、約20年前の党本部の会議で安倍総理が熱弁を振るったシーン。 自分が政界に入った時、自民党外交部会の下に北朝鮮問題を議論する小委員会(正確な名前は思い出せない)があった。 当時、自民党の部会で拉致問題を扱うことについては、党内(上層部?)に慎重意見があった。 これ以上、詳しいことは書かない。 

 そうした雰囲気を跳ね返して孤軍奮闘していたのが、40代の安倍晋三衆院議員だった。 そう、安倍首相は20以上前から拉致問題に取り組み、拉致被害者の方々を救出するために戦っていたのだ。 安倍先輩から誘われて、自分もこの会議に何度か出席した記憶がある。 

 日本の対北朝鮮政策の原則は「対話と圧力」のアプローチ。 平壌に圧力をかけるメカニズムは、基本的に(一部を緩和したとはいえ)2本の経済制裁法案しかない。

 この2本の法律が成立するまでの経緯は、過去のブログに詳しく書いてある。 僭越ながら、対北朝鮮経済制裁法の成立に関して山本一太が中核的な役割を果たしたことは間違いないと自負している。 全ては自分が呼びかけて作った勉強会「対北朝鮮外交カードを考える会」の議論から始まったのだ。

 経済制裁法案については、当初、党内でも反対の声が強かった。 仲間と一緒に関係部会の幹部を回ったが、法案審査の了解は得られなかった。 その時の某外相経験者(故人)の言葉を、今でもよく覚えている。 「いや、君たちが制裁のメカニズムを議論するのは外交メッセージとして悪くない!でも、実際に法律を作るのはやめたほうがいいな!」
 
 慎重論の強かった2本の対北朝鮮経済制裁法(改正外為法 と 特定船舶入港禁止法)をなぜ成立させることが出来たのか?! それは、安倍総理が、自民党党幹事長として、さらには官房長官として強く後押してくれたお陰だ。 もちろん、法律による制裁という舞台装置を整えたのは正解だった。 前述したように、日本政府にとって現時点で「北朝鮮に圧力をかける手段」はこの2本の法律しかないのだから。

 北朝鮮が約束した拉致被害者の再調査は、なかなか進展しない。 が、拉致問題解決のためには、粘り強い交渉を続けるしかない。 核やミサイル問題についても、日朝政府間の協議を続けていくことは重要だ。

 この点で政府の足を引っ張るつもりは全くないが、対話と圧力を機能させるためにも、常に新たな圧力メカニズムを研究・検討する必要がある。 そのために自民党有志のグループ「対話と圧力による北朝鮮外交を進める会」を立ち上げたのだ。 

 いろいろな意味で、総連本部ビル転売を日朝交渉の材料に使うのは不適切だ。 朝銀信組の破綻処理のために、1兆円以上の公的資金(国民の血税)が投入されたのだ。 朝鮮総連本部ビルの転売問題は、国民が納得出来る形で決着させなければならない。 

 本日の衆院予算委員会で、安倍首相は「商行為と日朝の交渉は全く別だ」と明言した。 「違法行為があれば、違法行為に目をつぶって交渉を進めるということは安倍政権ではあり得ない!」とも。 とても心強い言葉だ。 

 今回の朝鮮総連本部ビル転売は納得出来ない! 政府の毅然とした対応を強く期待している。  

 
◇山本一太オリジナル曲:
「素顔のエンジェル」
「マルガリータ」
「かいかくの詩」
「一衣帯水」
「エイシア」