2014年9月19日~22日

 安倍総理が、国連総会が開催されるニューヨークに到着した。 総理が海外出張する度に、元気な表情をTVのニュースで見られるのはスゴく嬉しい!(ニッコリX10) 

 ただし、ぶら下がりインタビューの映像に登場する「スラッとした総理」の背後に、毎回、「無理矢理に(?)映り込んで来る違う顔」が目に入ると、ちょっぴり辟易とする。(笑) 本当に申し訳ないが、「総理の様子だけ見たいのに…なあ!」「総理だけのほうが絶対、絵としてはカッコいいのになあ!」と思ってしまう。  

 昨日も複数の人が同じことを言っていた。 安倍ファンの気持ちを代弁して、ひと言だけ書いておきたい。

 さて、ここからは前回のブログ(オスロの国際会議)の続編。 「Global Strategic Review」の第3日目に行われた4番目の主要セッション「アジアに新たな冷戦?!」(A Cold War in Asia?)は、午前11時にスタートした。 

 モデレーター(司会)は、IISSのハックスリー教授。 パネリストは3人。 中国の某ベンチャーファンド会長を務める若手起業家のエリック・リー氏、IISSの研究フェローであるサラ・レイン氏、そして山本一太前領土・海洋担当大臣だった。 セッションの冒頭、パネリストのテーブルの横にセットされたポディウム(演台)で、3人のパネリストがそれぞれ15分間のスピーチをやり、それを踏まえて議論するという流れだった。

 最初に演壇の前に立ったのは自分だった。 スピーチの中では、前大臣という自由度を生かして、中国の東シナ海、南シナ海での行動を手厳しく批判した。 中国公船の対重なる尖閣海域への侵入や一方的な防空識別圏の設定の不当性についても指摘した。 日本政府の「いかなる国も力で現状を変更することは許されない。全ての紛争は国際法のルールのもとで解決されるべきだ」という主張も当然、盛り込んだ。

 が、しかし、次にスピーチしたエリック・リー氏は、さらに過激だった。 あまり細かいことは書かないが、この中国次世代起業家の視点をひと言で表現すると、「中国は米国主導の今の国際秩序とは違うやり方でさらに影響力を強めていく。米国は中国のライバルであり、協調すべき相手だ。アジアは米中が仕切っていく。日本は独立のプレーヤーではない。」というものだ。 エリック・リー氏のこの戦略的思考(ナショナリスト的思想?)は、ネットの論壇でも世界的に物議を醸している。 

 米国の名門大学を卒業したグローバルな視野を持っているはずの中国の次世代経営者が、これほどあからさまな「中華思想」を口にすることに一種の驚きを憶えた。 が、逆に言うと、エリック・リー氏の考え方こそ、公には言わない中国政府のホンネだと強く感じた。 もちろん、彼の主張は多くの点で間違っている。 根本的に賛同出来ない。

 それはそうとしても、エリック・リー氏の発信には、インパクトがあった。 あそこまでハッキリしていると、嫌悪感も湧いて来ない。(笑) 英語も流暢だし、プレゼンも巧みだ。 個人的には、なかなか魅力のある人物だと感じた。 実は、セッションが始まる前に軽いジャブの応酬があった。 

 「ネットであなたの音楽活動を知った。あのPVはスゴく面白い!画期的だ!」というリー氏の右のジャブ(左利きだと思う)に対しては、「TED(日本では「フーパープレゼンテーション」というTV番組になっている)でのあなたのパフォーマンスを見た。とても刺激的だった」という左のジャブで応じた。

 それでも、議論では負けていなかったと思う。 会場の参加者からの「日本はウクライナ情勢から何を学んだのか?」という質問に対しては、「国際社会は、力で現状を変更する試みをけっして許してはならないということだ。中国のオピニオンリーダーたちが、『中国政府がウクライナ問題におけるロシアの立場を後押しすることは、中国の長期的な戦略的利益に繋がる』と発言していることに強い違和感を覚える。そういう思考には、民主主義、人権、法の支配、そして人間の安全保障といった基本的な価値観が全く反映されていない!」と答えた。 

 加えて、エリック・リー氏の「中国は戦争をせずに、東シナ海、南シナ海で現状を変えることに成功している」という見方には、真っ向から反論した。 中国の東シナ海や南シナ海におけるゲームがいかに危険であり、日中間に『緊急事態に対応するメカニズム』を立ち上げる重要性について強くアピールした。 ひとつ残念だったのは、中国の急激な成長の歪みがもたらした深刻な環境問題や貧富の格差の問題に言及する時間がなかったことだ。

 セッション終了後、大勢の参加者から声をかけられた。 「素晴らしいスピーチだった。」「実に興味深い議論だった。」 最前列で最初から最後まで議論を聴いていたチップマン所長とも、ガッチリ握手を交わした。 が、早々に会場を発たねばならなかった。 飛行機の時間がギリギリだったからだ。 いつものとおり、苦しくて、楽しくて、ドキドキする出張だった。

追伸:帰国後、複数のIISS関係者と電話で話をした。 セッション自体は好評だったようだ。 「あのパネルが一番、面白かった」という人が多かったとのこと。

 そう言えば、自分がパネリストをやった第4セッション(「アジアに新たな冷戦?!」)の前に同じ会場で行われたエネルギー問題に関するセッションを見た相川室長と金子企画官が、こう言っていた。 「前のセッションでは、パネリストのプレゼンが終わった直後に、3分の1の人が席を立ってしまいした。会場からの質問も少なかったですね。」

 前大臣として参加した今回のセッションでは、途中で席を立つ人は誰もいなかった。 3人の最初のスピーチが終わった瞬間に、10人以上の出席者から質問の手(正確に言うと名札)が上がっていた。

 それにしても、想像を絶する(?)エネルギーを消費した。(ふう) ダメだな、もっと英語を勉強しないと! 


「fs山本一太オリジナル曲「素顔のエンジェル」「マルガリータ」「かいかくの詩」