2014年6月4日

 午前零時過ぎ。 今晩は最高にクールなカップルと食事をした。 あっという間に4時間。 クールジャパン戦略を熱く語り合った。 スゴく刺激的で、楽しい会合だった。

 さて、ここからは、「韓国通貨危機に対する日本の金融支援の評価:その5」の続き。 眠気をこらえながら、一気に書いてしまおう。

 「97年の通貨危機の際、日本政府が緩い条件での支援を拒否したため、韓国はIMFへの支援を要請せざる得なかった。」 フジTV「新報道2001」で金准教授が言及した韓国側(?)の認識について、過去、韓国の政府高官が同趣旨の発言をしたことがあったかどうかを、改めて調べてみた。 が、具体的な発言録は見つからなかった。 つまり、韓国政府が公式にこんなコメントをしたことはないということだ。

 ただし、ひとつ目に留まった記録があった。 1997年11月まで経済副総理を務めた姜慶植氏の回顧録を引用した韓国記者の2012年の報道記事だ。 日本の金融支援が当時、韓国内でどんな受け止め方をされていたかを知る手がかりになる。 姜慶植氏の事実認識がどこまで正確なのか、どれだけ日本側の認識と一致しているのかは分からない。 そのことを断った上で、とりあえず、以下の部分を抜粋する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(仮訳):2012年8月12日付インターネット記事「記者 趙甲済の世界」

 通貨危機の際に経済副総理であった姜慶植氏が、「国家が行わなけらばならないこと、行ってはならないこと」と題する回顧録の中で、日本の支援を受けようとして拒否された過程を紹介した。

「償還能力に対する不安感が拡散し、通常90%以上であった短期対外債務の満期更新比率(Roll Over Rate)が60%以下に落ち始めた。外貨保有高が急激に減少しはじめ、これ以上耐えられなくなった。オム・ナギョン次官補(後に韓国産業銀行総裁を歴任)が、為替市場の動向がただならない状況にあるとして、緊急資金支援を日本に要請してきたいと述べた。

 私からは、日本への資金支援の要請に関連し、予想される問題を指摘した。まず、米とIMFが、日本と直接締結するバイの方式を特段、歓迎するようには思われないこと(AMF構想の挫折が想起されるためだ。)、また、成功する可能性も疑問視されたこと(11月初めに外信にクリントン大統領が橋本龍太郎総理に、今後、金融危機で困難に直面する国があってもバイの解決方式をとらないでほしいとの書簡を送ったとの報道があった)等の懸念を述べた。また、韓国国民が日本の助けを受ける場合、自尊心が傷つきうる。このように見れば、日本政府に支援を要請するよりも、むしろ、IMFに支援要請をすることが正しい道であるという私の考えを述べた。

 日本に行く場合には、政府対政府の支援ではなく、日本の金融機関が満期延長等に特別な配慮をしてくれるよう「行政指導」を行う方向で交渉するように指示した。満期延長さえ順調に実施されれば、大きな困難はないだろうと考え、また、非公式な影響力行使は、8月末に三塚大蔵大臣が訪韓した際の例を見ても、喜んで協力してくれるように思えたためだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 この記事で紹介された姜元経済副総理の回顧録では、さらに「日本政府に対して日本の金融機関が満期延長等の特別な配慮をしてくれるような指導をお願いしたがうまくいかなかった」「日本銀行の韓国銀行に対する通貨スワップの可能性も打診したがだめだった」等の記述が続く。 

 さらに、姜慶植氏は日本からポジティブな反応が引き出せなかった理由を、「資金難解消のための支援はIMFを通じてのみ行うよう日米が合意済みだったので、日本政府がそうした支援を何も出来ない立場だった」と分析している。

 が、しかし、この見方は正しくない。 結果として(過去のブログでも触れたが)、1997年の年末、日本の大手銀行は韓国の金融機関に持っていた貸出しのうち、75億ドル分を短期債務から長期債務に転換したのだ。 欧米の銀行もこぞって支援に回った。 この動きが韓国を財政破綻から救った。

 各国の金融機関が協力に乗り出したのは、IMFを中核とする国際的な支援の枠組みがあったからに他ならない。 そのスキームの下で、日本は韓国に対する二国間援助として、関係国最大の100億ドルの支援を表明した。 この政府の姿勢が、日本の民間金融機関の動きを後押したことは間違いない。

 事実、その3でも触れた98年の国会演説の中でも、金大中大統領は次のように明言している。 「昨年(97年)の12月、我が国の外債総額は1550億ドル。これ対して外貨保有高は38億ドル。国家破綻の危機に瀕していた。こうした外貨危機を克服する過程で日本の支援が大きな力になった。日本は韓国の短期債務延長にあたって、79億ドルを中期債務に転換してくれた。世界のどの国よりも多くの協力をしてくれた」と。

 もし日本の金融支援に全く効果がなかったとすれば、韓国政府の最高責任者(=大統領)が、わざわざこんなことを言うはずがない!

 あ、電話をかけないと。 次回のブログに続く。


「fs山本一太オリジナル曲「素顔のエンジェル」「マルガリータ」「かいかくの詩」