2013年5月3日:パート2

 ボーイング777は、日本に向かって順調に飛行を続けている。 到着まで、あと3時間くらいだろうか? 窓から見る半月がスゴく綺麗だ。 これ以上、寝られそうもないので、米国出張報告その7を書く。

 米国競争力評議会(COC)に続き、米国科学振興協会(AAAS:American Association for the Advancement of Science)を訪れた。 AAAS(トリプルエーエス)と言えば、あの有名な科学雑誌「サイエンス」の出版元。 科学者間の協力を促進し、科学的自由を守り、科学界からの情報発信を奨励し、全人類の幸福のために科学教育を支援することを目的としている。

 AAASに加入している学会は262。 すなわち、1000万人以上の会員を抱える世界最大級の学術団体だ。 驚くのは、AAASの米国政府、議会への影響力の大きさ。 科学技術に関する様々な政策を常に注視し、議会や国民に対する啓発活動を続けている。 特に、AAASの科学技術・議会センター(今は違う名称になっているようだが)は、科学技術を政策形成に反映させるための重要な役割を担っている。

 政策への参画という点で特筆すべきは、AAASが1973年から独自の「科学技術フェローシップ制度」を実施していること。 これは、科学者や技術者を原則1年間、議会や上下両院の委員会、議員事務所又は官庁等の行政機関に派遣するというもの。 科学者や技術者に科学技術政策立案のプロセスを実体験させる一方で、議員に対して彼らの科学的専門知識や専門的分析を提供するという狙いがある。 総合科学技術会議の事務局機能強化を検討するにあたっての1つのヒントになるかもしれない。

 今回の米国訪問の最後の日程は、ハワードヒューズ医学研究所(HHMI)の「ジャネリアファーム・リサーチ・キャンパス」の視察だった。 ここは、文科省の予算で実施しているWPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)やOIST(沖縄科学技術大学院大学)のモデルになった画期的な研究施設だ。

 HHMIは、1953年に設立された。 生物医学分野における大学学部教育の助成から大学院生への奨学金、将来性のある若手研究者への助成、トップクラス研究者への資金提供を行っている。 財産総額は約148億ドル、年間事業総額は4億8300万ドル。 ビル&メリンダゲイツ財団に次ぐ全米第2位の慈善団体であり、英国のウィリアムトラストに次ぐ世界第2位の医学研究財団でもある。

 研究費の提供は、研究助成金(グラント)ではなく、大学等に所属する研究者を在籍のまま同研究所の研究員として雇用する形で行われるとのこと。 研究員1人あたりの平均年間研究費は、約100万ドルだそうだ。 

 ジャナリアファームというくらいだから、もともとは農場(ファーム)だったに違いない。 研究施設を取り囲む自然環境の素晴らしさ、施設のデザインと規模、プログラムの独自性、充実した研究サポート体制、研究資金の潤沢さ、5年間は何の制約もなく研究に没頭出来るシステム…。 全てに圧倒された。 

 このリサーチキャンパスに、優秀な研究者が集まって来るのは当然だ。 最先端の科学技術イノベーション分野で世界を引っ張って来た米国の底力を見せつけられた気がした。(ため息)

 あ、そろそろ朝食(機内食)が出て来るようだ。 ええ、和食でお願いします。 この続きは、米国出張報告その8で。

  
山本一太オリジナル曲「素顔のエンジェル」「マルガリータ」「かいかくの詩」