2011年8月19日:パート3

 参院政審の「ODA基本法検討プロジェクトチーム」(座長:中村博彦参院議員)は、来週から精力的に勉強会を重ねていく予定。 援助の仕事に携わって来た自分の政治家としてのライフワークの1つを、中村博彦・参院ODA特別委員長の手に委ねた。 中村氏なら、必ず形にしてくれると信じている。 政審会長としても、全力でバックアップするつもりだ。

 今から13年前、参院自民党の政策審議会に設けられた「ODA基本法推進プロジェクトチーム」の座長に任命された。 考えてみたら、当時の政審会長は、中曽根弘文氏(現・参院議員会長)だった。(これも何かの因縁か?) 3ヶ月かけて議論を積み重ね、「ODA基本法骨子案(山本座長私案)」をまとめ上げた。 その法案要項原案が、1998年9月18日付けの読売新聞の1面と5面に掲載され、大きな反響を呼んだ。 党の幹部からは、「山本一太の暴走だ!」とお叱りを受けた憶えがある。(笑)

 当時の原案のポイントは、ODAの透明性確保のための国会報告、実施体制の一元化、核実験国への援助停止条項等だった。 世界一の援助供与国だった13年前と今とでは、援助を取り巻く環境も大きく変わっている。 新しいJICA(国際協力機構)の誕生で、「援助庁」の構想もすっかり萎んだ形だ。 が、しかし、(自分で言うのも何だが)今、読み返してみても、「我ながら結構、よく出来てるなあ!」と思ったりする。(笑) 少なくとも、新しいODA基本法を作る上では、参考になる部分もあると考えている。

 山本一太座長による、幻の「政府開発援助(ODA)基本法案骨子」は以下のとおり。

     <政府開発援助基本法案骨子(試案)>
                    自由民主党 山本一太

前文

 我が国は、人類の福祉及び国際平和を基調とする日本国憲法の精神にのっとり、政府開発援助を多年に渡って行ってきた。政府開発援助は、開発途上国にある海外の地域に住む飢餓と貧困に苦しむ人々への人道支援や、それらの地域の安定と発展による国際社会全体の平和と繁栄の実現に大きな役割を果たすものである。また、政府開発援助は、環境問題、人口問題、食料問題等国際社会が共同して取り組まねばならない問題の解決に寄与するものでもある。このような政府開発援助を適正かつ効果的に推進していくことは、国際社会全体の利益となるとともに、我が国自身の平和と繁栄につながるものである。
 我らは、このような政府開発援助の意義が今後においても変わることなくその重要性を保持していくものと確信し、引き続き政府開発援助を積極的に行うこととした。
 政府開発援助を今後も適正かつ効果的に推進していくためには、政府開発援助の在り方について透明性の確保を諮り、国民の理解と関心を深めることが何よりも重要である。そして、政府開発援助について実績を有する我が国が政府開発援助の基本原則を明らかにすることは、国際社会の秩序ある発展に寄与することにもなる。
 ここに、政府開発援助の基本原則その他政府開発援助に関し基本となる事項を定めるため、この法律を制定する。

第一章 総則

◉政府開発援助の基本方針
 国は、次章に規定する政府開発援助の基本原則にのっとり、相手国からの要請の内容、相手国の社会経済情勢、相手国と我が国との関係等を総合的に考慮して、政府開発援助を適正かつ効果的に行うものとする。

◉人員の養成及び確保等の施策
・国は、政府開発援助に関する業務の遂行に必要な人員の養成及び確保を図るため必要な施策を講ずるものとする。
・国は、政府開発援助のため開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)に派遣される者等の安全が確保されるよう務めるとともに、それらの者の職業及び生活の安定に資するため必要な施策を講ずるものとする。
・国は、教育活動、広報活動等を通じて、政府開発援助に関する国民の理解を深めるよう務めるものとする。

◉一元的な実施を確保するための行政組織の整備等
 国は、政府開発援助の一元的な実施を確保するため、行政組織の整備及び行政運営の改善に務めるものとする。

◉国際情勢の急激な変化に即応する見直し
 国は、国際情勢に急激な変化があったときは、政府開発援助が当該変化に即応するよう、その在り方について必要な見直しを行うものとする。

◉年次報告等
・政府は、毎年、国会に、政府開発援助の実施の状況及び政府が政府開発援助に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
・前項の報告には、開発途上地域における経済の動向、住民の生活水準の動向及び社会資本の整備状況その他政府開発援助の指標となる事項並びに政府開発援助の効果に関する評価が含まれていなければならない。
・政府は、毎年、政府開発援助の対象となる地域別に策定する援助実施方針を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

第二章 政府開発援助の基本原則

◉主権の尊重等
・政府開発援助は、主権の尊重、平等及び内政に対する不干渉の国際的諸原則に従って行われるものとする。
・政府開発援助は、開発途上地域の政府及び住民との相互理解の下に行われるものとする。
・政府開発援助は、開発途上地域の政府及び住民の自助努力を支援することを旨として行われるものとする。

◉住民の生活の向上
 政府開発援助は、開発途上地域の住民の生活の向上を、貧困の解消、教育の普及、保険医療の向上等に重点を置きつつ図ることを旨として行われるものとする。

◉生活水準が著しく低い開発途上地域についての特別の配慮
 政府開発援助を行うに当たっては、住民の生活水準が著しく低い開発途上地域について特別の配慮がなされるものとする。

◉女性及び子供についての配慮
 政府開発援助を行うに当たっては、開発途上地域の女性及び子供が最低限度の生活を維持することができるよう十分配慮されるものとする。

◉国際の平和及び安全の維持の見地からの考慮等
・政府開発援助を行うに当たっては、当該開発途上地域における武器の開発、生産、保有、輸出入等の動向、軍事支出の動向等を勘案し、国際の平和及び安全の維持の見地から適切な考慮が払われるものとする。
・核兵器の実験的爆発その他の核爆発が行われたときは、政府開発援助の停止その他の措置が速やかに講じられるものとする。

◉軍事的用途への転用の防止等
 政府開発援助を行うに当たっては、国際紛争等を助長することがないよう適切な考慮が払われるとともに、軍事的用途への転用の防止のため必要な措置が講じられるものとする。

◉民主化の促進の努力等についての考慮
 政府開発援助を行うに当たっては、当該開発途上地域における民主化の促進の努力及び人権の保障の状況について、適切な考慮が払われるものとする。

◉住民の生活及び文化に対して及ぼす影響についての配慮
 政府開発援助を行うに当たっては、当該政府開発援助に係る事業が当該開発途上地域の住民の生活及び文化に対して及ぼす影響について十分配慮されるものとする。

◉環境に対して及ぼす影響についての配慮
 政府開発援助を行うに当たっては、環境が将来にわたって維持されるよう、当該政府開発援助に係る事業が当該開発途上地域の環境又は地球の全体若しくはその広範な部分の環境に対して及ぼす影響について十分配慮されるものとする。

◉住民の参加に対する配慮
 政府開発援助を行うに当たっては、当該開発途上地域における政府開発援助に係る事業の計画の策定及び実施の過程において当該開発途上地域の住民の参加が促進されるよう十分配慮されるものとする。この場合においては、当該開発途上地域の女性の参加が促進されるよう特に配慮されなければならない。

◉二国間援助及び国際機関を通じた援助
 政府開発援助は、二国間援助及び国際機関を通じた援助を適切に選択し又は組み合わせることにより、行われるものとする。

◉地方公共団体、民間援助団体等との連携
 政府開発援助は、地方公共団体、民間援助団体等と連携し、かつ、必要な調整を図りつつ、行われるものとする。

付則

◉施行期日
この法律は、公布の日から施行する。


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