2011年5月30日

 5月26日の参院総務委員会の議事録(山本一太の質疑)を掲載しておく。 未定稿なので、最終的に多少の字句の修正は入るかもしれない。 が、ザッと目を通した限り、特におかしな部分はない。 あ、ひとつあった。 最後に手を挙げて「時間切れです!」と委員長に遮られた参考人は、(松本会長ではなく)コンプライアンス担当の今井環理事だったと記憶している。

     ー5月26日:参議院総務委員会:山本一太の質問議事録ー

○山本一太君 私は野党の参議院の政策責任者で、野党の使命は行政をチェックすることですから、少し厳しい質問もさせていただこうと思います。
 まず、質問ではないんですけれども、松本会長に一つお願いがあります。
 五月の二十二日に和歌山県で全国植樹祭が行われました。NHKでも全国中継されました。天皇皇后両陛下も出席をされたイベントだったんですが、ここで実は、この資料によると、和歌山の方から何度も言われたんですが、開会挨拶を県議会議長が行う場面で、NHKのアナウンサーが和歌山県議会議長の氏名を前議長の谷洋一さんというふうに紹介した、テレビのテロップにも同様に前議長名が出ていたと。五月十三日には既に新しい県議会議長が誕生していまして、新議長は新島雄さんというんですね。
 会長、これは天皇皇后両陛下をお招きしたイベントで、松本会長もおられたと聞いていますが、和歌山県の方々にとってはとても大事なイベントだったんです。実際、県議会の方、かなり怒っています。
 私がお話を聞いたところによると、陛下をたしか南紀白浜空港か何かに送りに行ったときに、NHKの方から議長に対して簡単な謝罪があったということですが、これはやっぱり、本来であれば、正式に和歌山県庁の議長室に謝罪にどなたかをやはり派遣するのが、会長、筋じゃないでしょうか。NHKの震災報道については私も評価しますが、ちょっと気が緩んでいるんじゃないでしょうか。そのことだけちょっとまずお願いをしてから質問に入らせていただきたいと思います。
 私は、前回に引き続いてNHKのコンプライアンスの問題を取り上げさせていただきます。NHKに公共放送としてふさわしい役目を果たしてもらいたいと、特にこの重要な時期にNHKにしっかりと報道していただきたいと思うから、このコンプライアンスの問題をやらせていただきたいと思います。事業の中身は片山委員から、あるいは経営委員会の問題は山本順三委員の方からいろいろお話があると思いますので、私はコンプライアンスの話をさせていただきたいと思います。
 私は、アンチNHKでも反NHKでもありません。NHKを本当によく見ています。朝七時のニュース、夜七時のニュース、最近踏み込んだ発信をする「ニュースウオッチ9」、それから震災報道も食い入るようにNHK見ています。やっぱり民放に比べてNHKの情報量も情報の質も一歩抜け出ていると思います。大河ドラマも見ています。朝の「おひさま」も見ています。何しろ「サラリーマンNEO」も録画しているし、それに「SONGS」まで私は録画して見ておりますので、NHKファンと私はもう言ってもいいと思うんですね。
 これだけの番組を作れるということは、それはNHKには人材がそろっているんだと思うんですよね。ところが、会長、これだけプレステージがあって人材がある、人材がそろっているNHKで、何で一月からこれほど恥ずかしい不祥事が起こっているのかと、これを私は非常に不思議に思っています。
 実はネット等を通じて私に寄せられてくるNHK関係者からの数多くの情報、これに接してみて、NHKには人材がいると、NHKはいい仕事もいっぱいしていると、だけど、もしかするとこういう不祥事を誘発するような構造的な問題があるんじゃないか、何か組織の上で間違いがあるんじゃないか、何か組織文化の上で問題があるんじゃないかと、これが私の問題意識なんです。
 会長がこれまでおっしゃっていた発言、ずっと実は私注意深くフォローしていまして、会長はやはりNHKのリーダーになってから、NHKの人材はすばらしいと、特に報道なんかは対応能力がすばらしいとか、組織は余りいじっちゃうとよくないので、いいところを残すためには改革は気を付けなきゃいけないなんて、どっかの政党の長老議員みたいな、派閥の長みたいなせりふもおっしゃっているんですけれども、私はどんな組織にもいいところがあり問題もあると思いますが、会長にはそういういいことばかりじゃなくてぎざぎざの情報も入っているのかどうか、それをお聞きしたいと思いますし、会長はこれまでNHKのリーダーとして四か月やってきた中で、これはすばらしいというのはいいんです、ここはちょっと変えなきゃいけないということがあれば簡潔にお答えいただきたいと思います。

○参考人(松本正之君) 最初に、和歌山の件をお話しします。
 私は参列させていただきまして、大変感激して式典を見させていただきました。大盛会だったと思います。その中で、終わった後、今のお話のように、私に放送局長からこういうことがありましたという報告があり、そしてまず議長に謝罪を申し上げ、そしてこれは誤りだったという放送をするということで報告がありましたので、すぐやるようにと、こういう指示をいたしました。
 そして、なぜ誤ったかというと、和歌山県のホームページを記者がそれを見てそのとおりにやったようなんですけれども、これ自体がチェックの仕方が甘かったと、こういうことがそもそもの原因であります。
 放送局長と放送部長は早い方がいいということで、ちょうど陛下とずっと議長が御一緒だったものですから、そこにお話しすることはできず、空港でお見送りした後、直後に謝罪をしようと、こういう手当てをしますという話をすると、こういう話でした。したがって、それをやるようにと、こういうことですが、今お話しのように、議会に行ってきちんと礼を尽くすべきだと、こういうことについてはそれは指示をしたいというふうに思います。
 それから、私がNHKに参りましてからやっぱり幾つかの点、感ずることがございます。そして、一番最初に、誤解をちょっとされるといけませんのでお話ししておきますと、私が変えていいところと変えていけないところがあるというのは、例えばNHKにはNHKの長い歴史の中で積み上げてきた一つのシステムがあります。そのシステムを生かしながら、しかし変革をするということでないといけないと。例えば、NHKに商社のフラット化をそういうものをぱっと導入するということはできるかもしれませんけれども、そうしましたら、先ほど先生がおっしゃったようなNHKの良さというのが殺されちゃうんですね。そういうことをしてはならないと、しかしそういうことを守りながら改革は大胆にやらなきゃいけないと、こういうことを申し上げております。
 それから、私が思いますのは、例えばNHKの中では組織がかなり縦割りであります。縦割りの組織はいいところがあるんですけれども、横断的にそういう情報が共有化されないと、これがあります。それから、コストの意識については、今それをやりかけていますけれども、これについてはきちっとそういう価値観を持つということが必要だと思います。
 それから、グループ会社の管理とかそういうことを含めてトータルとしてやはり全体を見なきゃいけないと。全体を見る中で改革していくと。しかし、壊したらNHKの良さがなくなるというところは守ってあげた方がいいと、こういうふうに考えています。

○山本一太君 今日はコンプライアンス担当、新たにコンプライアンス担当になられた今井理事と、それから報道局の担当になられた冷水理事にも来ていただいていますけれども、二人の責任非常に重いと思うんですね。会長来られてまだ四か月ですから、やはりお二人がしっかり会長を支えて、松本会長がNHK改革、経営効率化できるようにしっかりとサポートしていただかなきゃいけないんですが、今井コンプライアンス担当理事に一つだけ私確認をしたいと思います。念のためのことですから、余り気になさらないでください。
 NHKあるいは関連の団体が、過去に例えば不祥事、使い込みとか不正経理とかこういう事件があって、それを隠しているようなことはこれは一切ないですよね。NHKはもう公共機関として、何かあったときには即しっかりとそれを公表するという立場ですから、そういう過去の今言ったような事例を隠しているということはないですね。ないと言っていただければ結構ですから。

○参考人(今井環君) 不祥事があっていろいろ調査をして、処罰の対象、処分をしたというような不祥事に関しましては協会報に掲載をして公表しております。したがって、そういう不祥事で処分があったような場合というのは、積極的に報道するかどうかは別として、公表はしております。

○山本一太君 いや、もう今のお話を聞いて、本当に私はほっといたしました。今の言葉、もちろん一〇〇%信じたいと思います。
 冷水理事にお聞きしたいと思うんですけれども、昨年十月のNHK記者の捜索情報漏えい事件、これはいろんなメディアの持つ問題点もあると思いますけれども、これは決して報道機関がやってはいけない、言語道断のことだと思いますが、こういうことが二度と起こらないようにしっかりと記者教育をやっていただけますね。大丈夫ですね。それだけちょっと確認させてください。

○参考人(冷水仁彦君) 記者教育改革チームを立ち上げまして外部の有識者の方の意見も参考にしながら、今年から記者教育の体制を大きく見直しております。既に四月に入ってきた新人研修からその内容の見直しに着手しておりまして、入社時から、入局時から、それから退職するまで、ジャーナリストとしてしっかりとした教育をしていかなければならない、そのことを継続的に取り組んでいかなければいけないというふうに認識しております。

○山本一太君 私は実はインターネットにブログを持っています。まあちっちゃな発信装置ではありますが、意外と霞が関、メディア、あるいは政治家の間では視聴率が高いと言われているんです、本当かどうか分かりません。松本会長に初めて自民党の総務部会でお目にかかったときに、松本会長がわざわざ私の席の方まで来られて、ブログ読んでますとおっしゃいました、あなたのブログ読んでますと。近くにおられた小野副会長をわざわざ呼んで、山本さんと、この小野さんは私がしっかり見て選んだ人物ですから大丈夫ですと、そこまでおっしゃっていただいたんです。
 実は、私のブログ、インターネット、ほかのいろんなツールにNHK関係者の方々からいっぱいいろんな情報とか訴えが届いています。それ一々ここで言いません。私、NHK批判することが目的じゃないんです。でも、その人たちの思いは、決してNHKを、何というんですか、NHKの悪口を言うというよりも、もう本当にせっぱ詰まって、組織改革をやってもらわなければもたないみたいな本当に真面目な話が多いんです。その中で、個人名やら、もう個人の、組織の名前やら物すごい詳細に出てくるんですが、松本会長の悪口を付したものは一つもありません。つまり、やっぱりそういう問題意識を持っている方も松本会長にしっかりNHK改革をやってほしいと、私はそういうふうに思っているからだというふうに思うんですね。
 そこで、匿名じゃなくて実名のメールもありますし、実はネット上の短いブログのツイッターってありますね、あそこでこういうことありました。今年の二月に、私が、たまたまネットのニュースでまたNHK職員不祥事というニュースを見て、ツイッターで、えっ、また不祥事ってつぶやいたら、すぐにそこにNHKの現職のプロデューサーが実名で絡んでこられたんです。彼は何と言ったかというと、絡んだというのは変に絡んだんじゃなくてそのメッセージに答えたという意味ですから、この人ちゃんとした人ですから。で、こう書いてあったんですね。隠蔽せずに即自社のニュースで発表するから目に付きやすいが、結局同規模の社員数を抱えている会社の犯罪率とは変わらないと、一緒くたにされるのは至極迷惑だと書いていました。その後、もう一回ツイッターが来て、ほとんどのNHKの人間はより高い倫理観とモラルを持って職務に当たっていると。それだったら、のぞきとか更衣室撮って捕まるとか窃盗とかないはずなんですけれども、これは一緒くたにされると至極迷惑だと書いてあります。この人は、名誉のために言いますけれども、非常に立派な人だと思いました。NHKに誇りを持ち、しかも一生懸命やっているからこそやむにやまれずこれを書いたんだと思うんですけれども、私は、会長、この意識間違っていると思いますよ。ほかの同等の規模の会社と同じだけの犯罪率だからいいって、NHKは公共放送としてほかの機関よりも高いモラルが私は求められると思うんですけれども、こういう意識改革から是非やっていただきたいと思うんですけれども、会長、ちょっと時間がないので簡潔にお答えいただけますでしょうか。

○参考人(松本正之君) 同感であります。NHKにはやはり高いモラルが求められるというふうに思います。したがって、同率であったらいいというようなことにはならないというふうに思います。そういうことで指導をしてまいりたいと思います。

○山本一太君 これはもう一々ここで紹介するのもちょっとあれなんですが、NHKのこれまでのやはりいろんな不祥事、私、一覧にしてみたんです。
 平成十六年ですか、プロデューサーの制作費着服というのもありました。例の空出張の問題もありました。インサイダー取引もありました。このときはNHKの受信料を払う人が減るという事件がありました。そこから努力してNHKは信頼を回復してきたと、さっき新しい経営委員長もおっしゃいましたけれども、今NHKは国民から大変な信頼を得ているということなんですけれども、これ、次のページを見て、一月になると、一月一日、首都圏放送センターの職員、車上荒らしで逮捕、一月三日、松江放送局のディレクター、のぞきまがいの行為で逮捕、一月四日、受信料契約担当の委託スタッフが飲酒運転で玉突き事故、二月十七日、名古屋放送局技術部職員、静岡局でオシロスコープを盗んで逮捕、二月二十一日、大津放送局男性ディレクター、ビデオリサーチのデータを不正投稿、諭旨免職、二月二十一日、札幌放送局千歳報道室男性記者、無免許運転で懲戒免職、そして、これは直接NHKのスタッフではありませんが、金沢放送局の死体遺棄で逮捕された委託カメラマンもおりました。
 やっぱり、これはどう見ても異常です。これだけ人材がそろっているはずの、本当に公共放送としてこれからより重要な役割を果たしていこうという組織としては異常ですから、これは。これは是非、会長、重く受け止めて、こういうことがないようにしてもらいたいんです。
 今日、なぜ二人の理事にこれだけ厳しく言っているかというと、これ、もし同じようなことがあったら松本会長の改革は頓挫しますからね。これ、もし後から隠蔽しているようなことが出てくれば、松本会長がやろうとしているNHK改革も、これからいろいろ質問出ると思いますが、経営効率化もできなくなるんです。
 だから、そのことは是非、支えておられるこの二人の理事にもしっかりと受け止めていただきたいと思いますし、あと二、三分なので、最後に松本会長に申し上げたいんですが、この間、あるNHKの職員と電話で話しました。何度か会ったらしいんですけれども、私、覚えていません。名前も言いませんし、所属も言いませんが、その人から電話があって言われたのは、山本一太さんのブログを毎日見ています、NHKのスタッフの悪口は一切言っていないというのも分かっています、ちょっと偉い人には批判的だから、でも私は政治家でも偉い人には全部批判的なのでしようがないと思うんですが、一般のNHKのスタッフの方々の悪口は言っていないですねとその人が言いました。そうだと言ったら、このブログの中には真実もあると、真実もあると。やっぱり自分がNHKで一生懸命やっていて、何か、この組織にはプライドを持っているしすばらしい職場だと思うけれども、何かモラルを低下させる、やっぱり時々絶望的になる何かがあるとその人が言っていました。それは何だと言ったら、これはどの組織でもあることかもしれませんが、いろんな社内ポリティクスがあるのかもしれませんが、本当の実力主義というものがないと。本当に努力して成果を上げている人がきちっと評価されないと、実は成果主義になっていないと、これが物すごく私たちにとってはつらいと。こういう若いスタッフと、これはもう私はうそをつかないのが取り柄なので、この人と真っすぐ二十分ぐらいお話をした中で出てきました。
 松本会長がコンプライアンスに対する対応について、いや、どうも一月からの不祥事は若い人が多いと、大体二十代から三十代なんです、だからやっぱり世代を超えたコミュニケーションを取っていかなきゃいけないというふうにおっしゃっているんですけれども、この点について、私が話した若いNHKの職員の気持ちもちょっと踏まえた上で、会長として何かNHKの職員の、本当に優秀なのに、何かこう誰か絶望的にさせる、モラルを何とか低下させて、こういうのぞきとか盗みとか、元々モラルが普通よりも高くならなきゃいけない公共放送の職員がこういうことに走る何かがあるということについてはどんなふうな対応をされていくのかということを最後にお聞きしたいと思います。

○参考人(松本正之君) 不祥事の中には大きく分けて二通りあると思います。組織ぐるみでそういうことをやるという体質のもの、それから個人の不祥事という形でそういう形が出るもの、この二通りがあると思います。個人のレベルで出たにしても、それは企業の中で出ることですから、そういうものを出さないようにしないといけない。
 一つは、やはりそういうものを抑えるという、原因を除去する、そして起きたものについては厳罰を要求するというやり方もあります。もう一つ、その前段で、先ほどコミュニケーションというお話ありましたけれども、コミュニケーションは、やはりそのコミュニケーションができる、安心のできる社風とか風土というものがあると思うんです。それは、昇進の制度とかあるいは本人の気持ちをどういうふうに吸収するとか、そういう先生のところに言う話もありますが、直接私の方にそういうものが入るシステムとか、そういうことも含めてそういう風土をつくっていかなければならぬのではないかと思います。

○山本一太君 あと四十秒ぐらいあるんで、最後に一言申し上げたいと思うんですね。
 やっぱりNHKは巨大な組織だと思います。松本会長がいかにJR改革で辣腕を振るった方だといっても、やっぱり本当にNHKの組織がどう動いているのか、どこにどういう人材がいるのかというのを理解するまでにはすごく時間掛かると思うんです。こんな中で大事な人事もやらなきゃいけない、あるいは受信料の問題にも向き合わなきゃいけない、さらにはインターネットとどう付き合っていくかということも考えなきゃいけない、本当に大変だと思います。人事についても、まさか会長に直接売り込みに来るような、そういう人はいないと思いますけれども、そこは本当に大変だと思いますが、ぎざぎざの情報も、いい情報も是非集めていただいて、本当に難しいと思いますが、この公共放送、特に震災が起こって以来ますますNHKの役割は大事ですから、是非国民の期待にこたえられるようないい組織にしていただくように心から私の方からもお願いと激励を申し上げまして、ぴったり三十二分で終わりですから、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○参考人(松本正之君) 委員長。

○山本一太君 いいです、いいです。

○委員長(藤末健三君) 時間が来ていますのでやめてください。時間守ってください。

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