2010年1月29日:パート2

 昨日、参院本会議で川口順子前外相が行った補正予算案の反対討論の内容をそのまま掲載したい。 自分がこれまで聴いた「最高の反対討論」だった。 

<2010年1月28日:参院本会議場>

 私は、自民党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました平成二十一年度第二次補正予算二案に対しまして、反対の討論を行います。

 思い返してください。昨年の秋の臨時国会の所信表明演説で、総理は「あの暑い夏の日々を思い出してください。これから国会では、政党や政治家のためでなく、選挙のためでもない、国民のための議論をしましょう」と呼びかけられました。この何ヶ月かを振り返り、総理は自らの呼びかけを天に恥じることなく誇れますか。正反対のことをしていませんか。
 政権与党のあらゆる政策、手法は、民主党の議員が参議院選挙で勝つためだけを目的としたものであることが明確ではないですか。

 本当に残念です。経済は、鳩山不況といわれるように、後退色を強め、雇用情勢は厳しい状況にあります。日米関係は戦後かつてないほどの低いレベルにあります。国会においては、こうした内外の諸問題の解決に向けて、与野党挙げて政策を論じ、適宜的確に対応しなければなりません。
 しかし、「政治と金」の問題に民主党が自浄能力をもたないために、そうした政策の本質論はないがしろにされたままであります。そして国民は、政府与党のリーダーの金まみれの姿をみて、国政に対する不信を深め、日本の行く末に不安を強め、そして、あきれ、あきらめているのであります。
 
 また、我が国はその過程で、国際社会におけるリーダーシップと散在感を失いつつあるのです。今回の補正予算に反対するのは、その内容もさることながら、提出者である鳩山内閣そして政権与党である民主党に大きな問題があるためです。改めて指摘するまでもなく、鳩山総理、小沢幹事長は政治資金問題について何ら明快な説明もせず、やり過ごそうとする傲慢さだけが目立ちます。

 鳩山総理。あなたは友愛の精神を国政の精神的な柱に据え、さも温かく国民を包もうとするかのような錯覚を与えましたね。この予算委員会での議論で明らかになったように、あなたの言う友愛の精神とは、お母さまからの友愛にみちた十二億六千万円もの生前贈与のことだったのですね。
 また小沢幹事長。巨額の政治資金を不動産購入に充ててきたとの疑惑が濃くなっており、にもかかわらずなんら説明責任を果たしていません。さらに奇怪なのは、民主党を挙げて小沢疑惑、虚偽記載の問題を覆い隠すことに躍起になっていることです。

 我々が国会で小沢幹事長自ら身の潔白を説明する機会を与えようと参考人招致を求めているにもかかわらず、与党はかたくなに拒否しています。小沢さん自身は二十五日の記者会見で「国会対策委員会など現場で議論することであるが、その結果には従う」と明言されているではないですか。本人が応じるというものをどうして周りが拒否するのか、私にはわかりません。小沢幹事長は、頼まれた色紙に「百術は一誠に如かず」と揮毫されると聞きます。その一誠は、いつ国民に見せていただけるのでしょうか。早く見せていただきたい。

 民主党三巨頭の一人、菅大臣。予算委員会での答弁を聞いていると、経済財政政策の責任者としてはまったく頼りになりません。我が党の林芳正議員が、予算や新成長戦略に関係して、政策効果の観点から、公共事業と子ども手当の乗数効果に関しての判断を問いました。
 ところが、菅大臣は、乗数効果と消費性向の意味するところ、その違いについて、全く理解しておらず、国民に説明もできない体たらくでありました。予算、税制、経済の責任者ですよ。それが基本的な経済概念もわからずに、どうして政策を作り、運営することができるのでしょうか。
 鳩山内閣には、経済、財政の司令塔がいないに等しいではないですか。これでは、内外の投資家から、日本は見放されます。
 内閣や党を指導する人物がこのような状態ですから、新成長戦略それを財政面から裏付ける補正予算に賛成できないのは、当たり前のことです。
 さて、その補正に関して、問題点を指摘します。

 我が国においては、我々麻生政権下で、累次にわたり、大規模かつ有効な経済対策を進め、特に昨年五月には、経済危機対策十五兆円を盛り込んだ第一次補正予算を成立させたのであります。
 ところが、秋の政権交代により、状況は一変しました。鳩山政権は、第一次補正には不要なものがかなり含まれているとして、約三兆円の予算の執行を停止し、せっかくの景気回復に水を差したのであります。

 さらに問題は、その執行停止にした予算を鳩山政権になってからの第二次補正予算や、来年度の本予算で復活していることであります。数か月あるいは半年以上の予算の空白期間を意図的に作り、結局はもとに戻しただけではありませんか。我々の第一次補正予算を素直に、そのまま実行しておけば、鳩山不況は来なかったのですよ。
 ちなみに、麻生内閣での第一次補正予算とこの第二次補正予算を項目で比較すると、雇用対策、景気・金融対策、環境への対応、地方活性化、医療・子育て、など全く同じ内容が並んでおり、新成長戦略に関しても自公政権で行ってきた経済政策の焼き直し、というより内容を延長したにすぎません。

 さらに深刻な問題は、鳩山政権には、財政再建目標が存在しないことです。本来なら、第二次補正予算や本予算を取りまとめた昨年末の時点で、財政再建計画を同時に出して、財政規律を国民に示すべきでありました。そうした財政規律を生み出す努力を怠ったため、鳩山財政は国債増発のバラマキ財政という、極めて不名誉な評価を市場から受け始めているではありませんか。
 なお、今年六月をメドに、中期財政フレームを策定すると報じられていますが、遅すぎます。一刻も早く道筋を国民に示す必要があります。というのも、財政破たんの懸念が少しでも出てくれば、国債が大量に売られ、国債金利が上昇し、マーケットそして実体経済に深刻な影響が出るからです。これ以上の金利上昇に、経済活動が耐えられないのはいうまでもないことです。
 国民は、鳩山内閣によって経済が奈落の底に落ちていくことを本気で心配しています。

 以上、本補正予算に反対する理由を述べてきましたが、鳩山内閣におかれては、「政治と金」の問題について国民に説明責任を果たし、内外の諸課題に真剣に取り組まれるよう、切にお願いします。それが出来そうもないなら、躊躇なく総辞職するか、あるいは解散し、総選挙によって国民に信を問うべきである、と申し述べ、私の討論を終わります。


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