2009年5月5日:パート2

 「国会議員の4割が世襲議員」という「自由民主党」の現状は「異様」だ。 何しろ、自民党は戦後50年間、一貫して(数年の例外を除いて)「政権」を担って来た「日本最大の政党」なのだ。 こんな状況は、諸外国でも例がないと思う。 
 
 自民党が「新しい政党」に生まれ変わっていくためには、政界に「最高の人材」をリクルートする仕組みを作ると同時に、選挙区における「既得権益の継承」を(どこかで)断ち切る改革が必要だ。 自分自身が「先代の地盤と看板を引継いで当選した」世襲議員だからこそ、「政治における世襲の弊害」(全てがマイナスだとは言わないが)について声をあげなければならない。 そう考えている。
 
 そのことを断った上で、今回は亡父・山本富雄(やまもと・とみお)のエピソードを書いてみたい。 最近、なぜか「政治家だった亡きオヤジ」のことを思い出すのだ。 「身内」のことを褒めるのはどうかと思うけど、たまにはいいでしょう?!(笑)(まあ、「故人」だから許してください!) 
 
 14年前に亡くなった父は「演説の達人」だった。 特に初めて立候補した参議院選挙の直前に急性肝炎(劇症肝炎)を煩い、選挙告示後にたった一度だけ本人がマイクを握った利根川河川敷の大集会での「魂を込めた演説」は、今でも「語り草」になっている。 古いカセットテープを何度聴いても、心を揺さぶられる。 オヤジにとって「一世一代の名演説」だった。
 
 それは、主治医の先生にお願いして与えられた「一度きりの舞台」だった。 ステージの支柱に掴まりながら、亡父はこう訴えた。 「私は故郷の群馬県を歩き回って泥だらけになったこの靴で、そのまま国会の赤い絨毯を踏みたいのです!群馬県の土をそのまま国会に持っていかせてください!!」 この瞬間に、選挙キャンペーンの合い言葉は「群馬の土を国会へ」になった。
 
 20代だった「山本富雄」は、急逝した父親(祖父)から草津温泉の旅館経営を引き継いだ。 最後はオリンピックのコーチまで務めたスキー選手のキャリアを引っさげて政界に転身。 草津町の町会議員を12年、群馬県の県会議員を10年努めた後で参議院選挙に立候補した。 もう少し正確に言うと、「知事選挙」への立候補を断念した代わりに「国政」に挑戦したのだ。
 
 「政治家にとって地元の陳情はとても大事だ。たとえ柄杓で一杯一杯の水を大海に注ぐような作業であっても、絶対に手を抜いてはいけない!」「誰よりも尊敬する福田赳夫先生にこう話したことがある。自分は何をとっても福田先生にかなわない。でも、日々、歩き回って来た故郷群馬県の状況は私のほうがよく知ってますって!(笑)福田先生はニコニコしてたなあ。」 いつもそう話していた「叩き上げの亡父」の言葉だからこそ、説得力があった。 ひとつひとつの言葉に、聴衆の気持ちを揺り動かすスピリットがあった。 その時、そこにいた支持者の方が言っていたもの。 「あの話には、皆が泣いた!」って。 結局、亡父が「当選の報」を聞いたのは入院していた病院のベッドの上。 国会への初登庁はそれから3、4ヶ月後だったと記憶している。 それほど危険な「劇症肝炎」だった。
 
 信じてもらえないかもしれないが、山本一太は「応援演説の名手」と言われている。 地元では「一太さんの演説は他の政治家と違う!」なんておだてられたりもする。 が、こんな命懸けのスピーチ、自分には「生涯出来ない」と思う。(同じ政治家として、ちょっと悔しい!)
 
 亡父は大学で教育を受けたわけではない。 「陸軍士官学校」の試験に合格した(?)直後に終戦を迎えたのだ。 この点では「東京の女学校」に通っていた亡母のほうが学歴が高いかもしれない。(ちなみに、亡母はとても「教養」のある人だった。) が、亡くなったオヤジも、「左翼の思想」に傾倒していた時代には「マルクス」「ニーチェ」から「キルケゴール」まで、様々な書物を読破していた。 書斎には「経済学」の本もあった。 母を口説く時に多用したという「映画の話」にも詳しかった。 学歴は高くなかったとしても、政治のプロとして「清濁併せ飲むタイプ」であったとしても、本質的には「幅広い知識」と「高い志」を持った政治家だった。 家ではワガママで気難しい「体育会系の恐いオヤジ」だったが、こういう点はとても尊敬していた。(本人が生きていたら、とても言えないセリフだ。)
 
 それに(どういうわけか)「山本富雄」は「山本一太」よりずっとハンサムだった。(ガクッ!) 若い頃から、いや、地元の女性有権者から「顔は長島、頭はケネディー」などと言われていた県議時代から「女性にスゴくモテていた」ことも(かなり後になって)判明した。(笑) 詳細は書かない。 父よりも好きだった「愛すべき母」を苦しめた若い頃のエピソードは赦すことにする。 晩年は「母のことをとても大切にしていた」からだ。(まあ、あれだけ苦労をかけたんだから、あたり前ではあるが...)
 
 とにもかくにも、「セクシーである」(=女性にモテる)という部分はオヤジに似なくてよかったと思う。(チキショー!) だって「女性にモテる政治家」は、それだけで「高いリスク」を負うことになる!(って、何のこっちゃ?!) でも、オヤジさん! 選挙の票は「山本一太」が「山本富雄」をオーバーしましたから、ね!!(ニッコリ)
 
 この続きは「皮肉なDNA:その2」で。


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