2009年1月2日

 たった今、「この国を作り変えようー日本を再生させる10の提言」(富山和彦/松本大氏:講談社)を読み終わった。 「富山和彦氏」は経営共創基盤代表取締役CEO、「松本大氏」はマネックスグループ代表取締役社長CEOだ。 この気鋭の40代経営者2人の討論本、スゴく面白かった! 両氏とも(政治家もマスコミも目をそむけたがる)「世代間の利害対立」を正面から見据え、「問題の本質は若者の所得を収奪する団塊世代だ」と断じている。
 
 とりわけ、「産業再生機構」の代表取締役専務兼業務執行最高責任者でもあった「富山和彦氏」の舌鋒は鋭い。 「品格ブームの胡散臭さ」を突き、「要するに、既存のシステムで安定した地位にいる人が、新興勢力を攻撃するときに持ち出す典型が品格なのです」と切って捨てる。 
 
 更に富山氏はこう指摘する。 「最近、欧米を中心に巨大な金融バブルが崩壊した。これを『市場原理主義の崩壊だ』『米国中心の金融資本の覇権の終焉だ』と、日本ではまたぞろ旧世代の『品格』おやじがはしゃぎたてている。しかし、つい20年前に、この国はがちがちの規制と護送船団行政の中で、当時としては市場空前の金融バブルを作り出したのである。そう、政府に任せても、市場に任せても、貨幣経済の宿命としてバブルは次々生まれ、またはじけていくのだ。だから今回のことがあっても、資本主義や金融市場システムの時代が終わるわけでもなんでもない。」と。 
 
 富山氏によれば、現在の世界の最先端の学者や政策立案者は、「行動経済学に基づいて、いかに社会が効率的に動くようなインセンティブデザインを描けるかを研究している」とのこと。 「市場経済についても、自由放任によって効率的で公正な市場が形成されるといったナイーブな考え方をしている人も、世界ではもう小数派です。現実の市場は不完全性と情報の非対称性にあふれています。政策の焦点は、市場のルールや政府の介入メカニズムをどのようにうまくつくれば『市場の失敗』と『政府の失敗』をそれぞれ防止出来るかにあります。」と説明している。
 
 この「インセンティブデザイン」という言葉、自分にはとても新鮮だ。 一度、「ダニエルカーネマン氏」(ノーベル経済学賞受賞者)の論文を読んでみよう。 確かに、党内でも、国会でも、日本の経済政策論議は「極端な」気がする。 選択肢は「市場に全てを委ねる新経済主義」か、「政府の積極関与を唱えるケインズ主義」か、その2つしかないみたいな論調が多い。 ちょっとでも新経済主義がうまくいかなくなると、富山氏の言う「オールドケインジアン」が登場して「財政出動と所得再配分」を主張するというサイクルが繰り返されている。 なるほど。 世界を見れば、経済学の「イデオロギー論争」なんてもうないってことだ、な。
 
 「松本大氏」の主張で最も印象的なのは、日本社会に「ポジティブ・デビエントを育てよ」という部分だ。 松本氏は次のようなことを言っている。 「デビエント(deviant)とは『逸脱した人』という意味で、以前はあまりいい意味には使われていませんでした。しかし、アメリカでは数年前から、ビジネスや社会がいい方向に発展していくには、ポジティブ・デビエントの存在が重要だというように、むしろ肯定的に使われることが多くなってきています。ところが、日本の社会はいまだに、そういう世間の常識にとらわれない成功者を好意的に評価するところまで、とうてい至っていません...。」
 
 ふむふむ、「型破りな成功者が尊敬されれば、みんながあの人みたいになりたいと頑張るので、社会全体の活力が増す」のか! うーむ。 「山本一太」は参院自民党の「ちびっこデビエント」を目指したんだけど...なあ。(笑) 「実力と能力」が不足しているために、ちっとも成功していない!!(ガクッ!)
 
 さて...と。 続けて「クルーグマンの視座」(ダイヤモンド社)と「金融大崩壊ーアメリカ金融帝国の終焉」(水野和夫著:NHK出版)を読む。 熱い紅茶がもう一杯、必要だ。
 
 
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