2008年7月7日:パート2

 参院で野党が過半数を握った。 参院民主党は「数の力」を最大限に生かして、与党を揺さぶっている。 前国会では、長く守られて来た「全会派一致」の原則を破って証人喚問を断行。 参院で憲政史上初の「総理大臣問責決議」も可決させた。 ところが、民主党が「参院の優位」を戦略的に使えば使うほど、実は「参院の存在意義」や「第2院の機能」を低下させるという結果に繋がっている。
 
 衆議院は「3分の2条項」に基づいて、既に「3度の再可決」をやった。 民主党は参院での問責決議を可決させながら、「国民生活に必要な審議」には前向きに対応するという方針らしい。 すなわち、参院での対総理問責が可決されている状況の下でも、必要に応じて「委員会の開会に応じる」ということだ。 党の戦略としてはありかもしれない。 が、別の見方をすれば、「参院の問責決議の重み」を「自ら否定している」ように見える。 なんとも「皮肉な話」だ。(苦笑)
 
 ここからは「政界再編という幻想:その5」の続き。 先日、テレビ番組で会った民主党の某議員が言った。 「自民党が300小選挙区でやった世論調査、かなりひどいらしいねえ!」 山本一太も見ていない党の「最新の世論調査」(本当にやってるのかなあ?)の情報(数字)が、野党の政治家に流れているとしたら、これは困った話だ。(苦笑) が、世論調査の数字なんて見なくても、都市部の自民党議員が「どれほど強い逆風に晒されているか」は容易に想像出来る。 
 
 そりゃあ、そうだ。 ついこの間まで「保守王国」などと呼ばれていた群馬県でさえ、(実際に歩いてみると)「一度は民主党にやらせてみよう」シンドロームが万延しつつある。 東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知あたりの「もともと民主党の強い地域」は、「数倍の反自民感情」に覆われているはずだ。 実際、都市部を選挙区とする親しい若手議員たちから、「このままだと、次の選挙を自民党の看板で戦うのは難しいかもしれない!」「自民党であって自民党でない。つまり、旧来の自民党とは違うタイプの新しい自民党議員だということを強調するしか勝機はないと思っている!」みたいな「切実な声」(というより「悲鳴」)が聞こえてくる。 彼らの「危機感」は尋常ではない。
 
 先日、久々に食事を共にした都市部選出のある衆議院議員がこんなことを言っていた。 「今、多くの衆院議員が考えているのは、どうやったら次の選挙に勝ち抜けるかということだ。自民党のブランドで戦えないということになったら、選挙の直前に離党して『新しいグループ』を作る、すなわち『選挙に勝つための新党』があちこちで生まれる可能性があるよ!」 さらに別の衆院議員もこう話していた。 「なぜ、皆が小泉元総理の言動を気にするかって言うと、小泉さんが本気で動けば再び新しい波が起こるんじゃないかって漠然と思っているからなんだ。つまり、誰もが勝ち馬に乗りたいんだよね!」 こんな本音を披露してくれた若手政治家もいた。 「選挙が近くなって、自民党への逆風があまりに強いようなら、都会の議員たちが集まって『都市新党』みたいなものが出来るかもしれない。え?自分だって、場合によっては本気で考える」と。
 
 自民党の執行部は選挙区情勢の厳しい「都市部の議員たち」の立場や主張に十分耳を傾ける必要があると思う。(*もっとも地方であっても県庁所在地などは同じ現象が起きつつあるが。) よほど注意しないと、次回の選挙の直前に「自民党の一部が離反する」という現象が起きかねない。 「民主党の分裂」を期待する前に、そっちのほうを心配するべきだ。
 
 衆議院選挙の前の情勢については、十分に書いた。 次回のブログ「政界再編という幻想:その7」では、「総選挙後の政局」について分析する。 選挙が終わった後に「政界再編が起こる」可能性はある。 そして(何度も言っているように)次の与野党全面対決の「地獄のような戦い」に生き残った政治家だけが、「政界再編という新しい秩序作り」に参加出来るのだ。
 
 
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