10月8日:パート6




 午前1時。寝る前にもう一本だけレポートを書く。安倍総理の訪中に触れておかねばならない。その前に熱い紅茶を一杯飲もう。ふう。これは...イングリッシュ・ブレックファーストか。

 

 結論から言うと、日中首脳会談は成功だった。すべての懸案が一度の首脳会談で解決するはずがない。が、日中首脳による対話の扉が再び開かれた。そのことの意味は大きいと思う。安倍ー胡錦濤会談実現の背景には、日中双方に「首相の靖国参拝問題を何とか凍結し、安定した日中関係を築きたい」というインセンティブがあった。中国は新首相を「破格の待遇」で迎えた。短い滞在の間に、安倍首相と3人のトップリーダーの会談をセットするという異例の対応に、中国側の関係改善への意欲が現れている。

 

 安倍首相は今回の会談で(大きくいって)4つの「外交的成果」をあげたと思う。ひとつ目は、日中首脳間の対話のチャンネルを開いたこと。ふたつ目は、危険な「タカ派ナショナリスト」という中国側のイメージを払拭したこと。3つ目は、北朝鮮の核開発阻止に向けての日中連携と中国政府の更なる働きかけ(影響力の行使)を約束させたこと。4つ目は、拉致問題の解決について中国側の協力表明を引き出したことだ。

 

 中国政府にとっても、今回の首脳会談は幾つかの成果をもたらした。第一に、日中関係修復のきっかけを掴んだこと。第二に、安倍首相から「納得出来る歴史認識」の表明があったこと。第三に、靖国参拝問題に関して安倍総理から「適切に対処する」(当面は参拝しない?)という発言を得たことだろう。

 

 中国政府は安倍首相の「アジア諸国の人々に苦痛を与えたことを反省する」という言葉(=歴史問題への認識)を高く評価した。実際、記者会見に臨んだ報道局長が、今回のトップ会談を「日中関係の発展に希望の窓を開いた」とまで持ち上げていた。胡錦濤国家主席は(最後まで)「靖国」という表現を使わなかった。

 

 日本のマスコミは(日中首脳会談の再開は評価しつつも)靖国問題に関して、「中国は譲歩したわけではない」とか、「安倍首相は曖昧戦術を貫き、双方が関係改善を演出した」とか、「対立の火種は残っており、次回以降の会談に持ち越し」などと報道しているようだ。え?「靖国参拝問題」が曖昧になっている。そんなの当然ではないか。日中双方の顔が立つように演出しなければ「棚上げ」なんて出来るはずがない。

 

 両首脳は「今度とも会談を続ける」ことを確認した。ここからが本当の外交交渉だ。11月のAPEC、来年の胡錦濤国家主席の来日という流れの中で対話を積み重ね、両国のリーダーがそれぞれ政治的リスクをとって「凍結のアレンジ」を固めていくしかない。その上で、冷静に、戦略的に「ウィンウィン」の日中関係を模索していくことになるだろう。

 

 あ、もうこんな時間(午前2時)か。続きは明日のレポートで。

 

追伸:某テレビ局の特番の収録は今日ではなく、明日の午後だった。どのみち、選挙応援のスケジュールが入っている。明日も大阪に入る予定だ。 




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