8月8日。午後11時30分。東京の部屋でパソコンの電源を入れた。2杯目の熱い紅茶をすすりながら、今日一日を振り返っている。ふむ。本日の最大の成果は、「自民党総裁選挙」の構図や現状について抱いていた自らのイメージを再確認(又は修正)出来たことだ、な。

 

 午前9時。党本部で自民党EPA/FTAプロジェクトチームの会合。座長は総合農政調査会長である谷津義男氏。いわゆる自民党農林族の「本流」である谷津氏が、EPA(経済連携協定)推進の旗頭になっているところに大きな意味がある。政調会長代理の甘利明衆院議員の顔もあった。司会を務めた事務局長の大村秀章氏がテキパキと会議を取り仕切っていた。(相変わらずの切れ味のいいこと。)その様子を見ながら思った。「ううむ。大村さんて、見れば見るほど愛嬌のある表情をしてる。あの眉毛とか、鼻とか、映画『グレムリン』に出てくる『ギズモ』にそっくりだ。あのタッチで『大村人形』かなんかを作ったら、女性有権者からは『かわいい!』って言われるんじゃないかな。(笑)」(*大村さん、ごめん!でも、そう言ったほうが人気出ると思うよ!)

 

 大村氏の横には、西村康稔代議士。西村さんは、あちこちのプロジェクトチームで事務局長とか、事務局次長を努めている。政策も出来るし、マスクもいい。ここにも「スター性を持った政治家」がいる。

 

 午前10時。党本部の同じ階の会議室で行われた「対北朝鮮経済制裁シミュレーション・チーム」の会合へ。「特定金融取引の規制に関する特別措置法案」(仮称)の要綱案を取りまとめ、会議終了後の記者ブリーフィングで発表した。16日に海外出張(イラン出張)から帰国する予定の逢沢一郎幹事長代理(党拉致対策本部長)と相談し、今月中には拉致対策本部の総会にかけてもらおうと考えている。




 拉致対策本部で要項が了承されれば、直ちに条文作成作業に入る。当然、9月の臨時国会での成立を目指すことになるだろう。何とか4つ目の「圧力のカード」を整備出来そうだ。立法府の役割は外交政策の「手段」を作ること。外交のツールとして、いつ、どう行使するかは政府(=総理)の判断にかかっている。9月に誕生する新首相の手に新たな「外交カード」を渡せたらと思う。




 午前11時。自民党の政策調査会に新たに設置された「外交力強化のための特別委員会」(委員長:森喜朗元総理)の初会合へ。麻生太郎外務大臣も同席していた。「文化交流が大事といいながら、なぜ、国際交流基金と(英国の)ブリティッシュ・カウンシルの予算が5、6倍も違うのか」と質問した。

 

 午前11時50分。永田町付近の中華レストランで行われたランチョン・ミーティングに遅れて合流。久々に「勝手補佐官」のフルメンバー(下村博文、高市早苗、世耕弘成、山本一太)が顔を揃えた。これまで「勝手補佐官マイナス山本一太」の会合には意識して出席を控えていた。が、「懇親会だから」ということで、下村さんが声をかけてくれた。(*いいとこ、あるなあ。)個室に入るなり、3人の顔を見回して、「いや、久しぶりですよね。4人で集まるのって、5年前のニューヨーク以来だったっけ?」と言うと、世耕氏から「そんなことないですよ。ほら、数ヶ月前に一度、安倍長官を囲んで集まったじゃないですか」という反応が返ってきた。(そういえば、そんなこともあったな。)約1時間、総裁選挙等について意見を交わした。なかなかいい雰囲気だった。「ああ、そうだった。同じ政策グループのこの4人で、何年も前から安倍さんを応援してきたんだよなあ。安倍長官がまだスターになる前から!」改めてそんな気持ちがわき上がってきた。

 

 「勝手補佐官」の面々や、安倍さんと旧知の「ナイス・グループ」のメンバー(石原伸晃氏や塩崎恭久氏)の中に、「政治家・安倍晋三とずっと親しくつき合ってきたのは自分たちだ!」「勝ち馬に乗るために急遽、安倍支持者になった政治家たちとは違う!」という自負があるのはよく分かる。が、今回は、「どうやったら、安倍内閣を実現出来るか」「特定の派閥に縛られず、いかにフリーハンドを持って安倍総理にスタートを切ってもらうか」ということを最優先しなければならない。だから、自分の目には、下村さんを含む「勝手補佐官」のメンバーも、「再チャレンジ議員連盟」の山本有二会長や菅義偉総務副大臣も、石原さんや塩崎さんも、派内で安倍長官のために走り回っている某先輩議員も、すべて安倍さんにとって「大事な人々」に見える。そうそう。下村氏には、こう言っておいた。「安倍長官が総理になったら、『教育改革』を内閣の大きな柱に据えると言ってる。そうなったら、まさに下村さんの出番ですよね!」下村氏は、「うん。どんな立場になっても、安倍首相を支えたいと思ってる」と話していた。 高市さんも世耕さんも、それぞれのやり方(分野)で、安倍長官へのサポートを考えているようだ。

 

 午後3時過ぎ。総理官邸で井上官房長官秘書官に会った。2人だけで40分近く話した。午前中に発表したばかりのシミュレーション・チームによる「金融制裁法案」の要項案について説明した。井上秘書官は日々、成長している。万一安倍政権が誕生した時には、安倍総理の「頼りになる右腕」になることだろう。

 

追伸:夜。大村秀章氏から携帯に電話が入ってきた。「あ、山本さん。オレだけど、今晩、このあと、どんな予定?もし時間があったら、夕食でもと思ったんだけど。」「うん。いいよ、ひとつ会合がキャンセルになったので、ポカッと空いたんだ。イタリアンでも食べようか?」




 赤坂のイタリアン・レストランはほぼ満席。結局、畳の和食になった。約1時間、本音でやり合った。「安倍さんの勝利は動かないかもしれない。でも、ちゃんとした対抗馬を立てないと、消化試合みたいになってしまう。それじゃあ、党のためにも、安倍さん自身のためにもならないと思う。」「うん。オレは最後の最後まで(自分のやり方で)全力で安倍さんを応援する。でも、大村さんのやろうとしていることに違和感はないよ。口だけでなく行動してるのがいい。本当に対抗馬(額賀防衛庁長官)を立てるつもりなら、山本一太なみに「熱烈に」やって欲しいな。」

 

 愛知県の「ギズモ」(=コンピュータ付きランドクルーザー)は、いつもアグレッシブで、ガッツがあって、そして熱い。山本一太の「サムライ度ランキング」に登場するだけのことはある。