午後3時30分。 上野駅近くのファーストフードの店でパソコンの電源を入れた。 午後2時から上野駅付近で講演。「ポスト小泉」というテーマで熱弁を振るった。 上野公園を少しだけ散策し、この店の2階席に座った。 時々、眠気が襲ってくる。 氷の入っていないコーラに差し込んだストローをくわえながら、本日2本目のレポートを書き始めた。 この後、午後4時過ぎの新幹線で地元に入る。 

 

 さて、昨日の昼。 森派の派閥総会でのこと。 派閥の会務報告や国会報告が終わった後で、森会長がマイクを握った。 演説の中身は、もっぱら前日行われた新人議員の勉強会(「新政治研究会」)のことだった。 話を要約すると、「昨日の一年生議員の会には、山本一太君をはじめとする我が派の数名の議員もテューターと称して参加している。 中川政調会長まで講演した。 そういう意図がなくても、安倍別働隊のように報道されている。 微妙な時期だけに行動は慎重にしてもらいたい」ということだった。 

 

 これに対して、中川政調会長がこんなふうに(わざわざ)「弁明する」場面があった。 「メディアの報道には気をつけないといけないと思うが、昨日の会は新人議員による政策の勉強会だった。 政局に絡んだ動きではない。 この件で事前に山本さんたちと打ち合わせたということもない。 新人グループ内の話し合いで、先輩議員を何人かテューター(アドバイザー?)として呼ぼうということにしたのだろう。 そのテューターも、うちの派閥のメンバーだけではなかった。 自分は、1時間にわたって、経済と財政の問題を論じた。 総裁選挙の話題など、一切、出ていない!」 的確かつ正確な説明だと思う。

  

 森会長のスピーチに話を戻そう。 「新人議員の会」のような会合への出席に関して派閥メンバーの「慎重な行動」を促した後で、会長の口からこんなセリフが飛び出した。 「私は古い人間だ。 が、古いところがいいと思っている。 そんな自分のことを、テレビの画面で古いなどと批判する人間が我々のグループにもいる。(*回りの皆が一斉にこちらを見た。 ああ、やっぱり来たか。)」 さらに怒りのフレーズが続いた。 「テレビで発言するということには責任がある。 党を背負うことになるからだ。 そんな中でも私を古いなどと言う人間が、この中にいるということなんです!」 最後はこんな言葉だった。 「とにかく、自分の言うことをちっとも聞かない。 この立場を離れたら、私も徹底的にやってやる。(*正確な表現は憶えていないが…たしかこんな言い方だった。) そういうつもりだ!」 ちょっとしたどよめきと拍手(?)が起こった。 この発言が、山本一太を念頭に置いたものであることは、100%、間違いない。

 

 先週の日曜日の朝。 「報道2001」に生出演した。 テーマは日朝関係だった。 番組終了間際に、黒岩キャスターからこんな質問をぶつけられた。 「森派の会長である森元総理が、派内の候補者は一本化すべきだと言ってますが、安倍応援団の急先鋒である山本さんはこれについてどう思いますか?」 瞬間的にこう反応した。 「森会長にもいろいろとお考えがあってのことだと思います。 が、派閥で候補者を一本化する(派閥主体の総裁選挙)というのは、古い考え方だと思いますね。」

 

 もう少し別の表現の仕方があったかもしれない。 「古い」という言葉が会長の気に障ったとしたら、それは率直にお詫びしたいと思う。 そこまでの怒りを買うような「ひどい発言」だとは考えていなかった。 が、「テレビでの発言には責任が伴う」とおっしゃるなら、(「古い」発言をお詫びした上で)冷静に次のことを言わせていただきたい。 

 

 総理まで経験された最大派閥の長が、(ズラリと並んだテレビカメラの前で)自分の派閥のメンバーの名前まで上げて、「あいつはけしからん!これ以上、やったらクビだ!」と批判する。 これはテレビの前の責任ある振る舞いなのだろうか? 某雑誌との対談で、「安倍はいいが、取り巻きが悪い」「回りに太鼓持ちみたいなのがいる」という意味の発言をすることは、(いくら目下とはいえ)同じ国会議員を侮辱することにはならないのだろうか? 同じグループの親しい若手議員に(ある時は他派閥の若手にまで)「山本一太とは付き合うな!」という主旨のことを言ったり、有力なマスコミ人に、「山本をこれ以上、あなたのテレビ番組に出さないでくれ!」と頼んだり、さらには自分が一生懸命務めてきた議員連盟の事務局長を突然解任することより、「考え方が古い」発言のほうがずっと「許されない行為」だということなのだろうか?

 

 何度も言っているように、自分は派閥会長の言動を重く受け止めている。 山本一太がもし、ここまで脳天気でポジティブ思考の人間でなかったら、「キャイーン!」と鳴いて大人しくなっていたに違いない。 生真面目なタイプの議員だったら(首相経験者に「徹底的にやる!」などと脅かされただけで)ガックリ落ち込むか、それこそ精神的に大きなダメージを受けたかもしれない。(*って、そんな気弱な人はいないか。一応、国会議員なんだから。) 

 

 断っておくが、私は回りで思われているより「頑固」でも「頑な」でもありません。 人の話にはちゃんと耳を傾けるし、相手に対して「間違ったことをした」と思えば、ちゃんと謝ることにしている。 が、どう考えても、民意で選ばれた1人の国会議員として「安倍支持」を表明することが「間違ったこと」だとは思えない。 森会長の発言を聞いていると、「総裁選挙について派閥の長である自分は誰に肩入れしてもいいし、どんな発言をしてもいい。が、派閥メンバーは自分の意図と反することを発言してはいけない。それなら派閥を除名する。」「派閥会長は誰をどう批判しても、悪口を言っても構わない。 が、他のメンバーがほんの少しでも自分の立場を批判することは許さない。 そのことには罰を与える。」という理屈になる。 その考え方ばかりは(さすがに)受け入れられない。

 

  実際、(公に口には出さなくても)、同じグループの若手・中堅議員の感覚は自分に近いと思う。 派閥総会の後、(けっして名前は言わないが)2人の若手議員がこう言っていた。 「派閥の長が候補者を1人に絞って皆を従わせるというのは、もう無理だよね。」「あそこまで言わなくても。 さっきの発言はシャレになりませんよ。」

 

 このレポートでも何度か書いた。 森会長のことは、けっして嫌いではない。(*むこうは、相当に嫌ってると思うけど(笑)) 派閥のリーダーとしてグループの結束を保つことに腐心されているのはよく分かる。 政治家としての立場を離れたら、きっと面倒見がよくて、心優しい人に違いない。 激しいDNAに火がつきそうになった時は、10年前の選挙のシーンを思い出すことにしている。 亡父の遺志を継いで立候補した最初の選挙では森会長にお世話になった。 忙しい日程をやり繰りしてかけつけてくれた。 

 

 今から5,6年前。 森内閣のあまりの不人気に「思い余って」立ち上げた有志4人の応援団(勝手補佐官)が派内の反発を招いた時も、総理訪米に合わせてニューヨークに渡ったこの「無鉄砲4人組」を、「彼らには、彼らの思いがあるんだから!」と言って温かく受け入れてくれた。 河野外務大臣の下で外務政務次官をやった時は、(河野外相からの推薦があったとはいえ)初めての日米首脳会談(森ークリントン会談)に同席させてくれた。(*以来、政務次官が首脳会談に同席したことは皆無だ。) 森会長には、人をホロッとさせるような部分もある。

 

 本当はいちいちつっかかったりしたくない。 が、派閥のあり方や総裁選挙に対する考え方が根本的に違う。 だから意見がぶつかるのはやむを得ない。 国会議員は、それぞれ独立した国民の代表だ。 常に派閥の長の意向に沿うような言動や行動をするというほうが、(自分にとっては)逆に不自然な気がする。

 

 森会長の「欠席したらペナルティー宣言」以来、毎週の総会は、ほとんど休んでいない。 が、毎週のホームルームで担任の先生からやり玉にあげられ、怒られたり、嫌みを言われたりするクラスの問題児みたいな状態だ。 まるで「女王の教室」現象だな。(笑) (*(笑)なんて書いているが、もちろん気持ちのいいものではない。) が、「清和政策研究会」の正式メンバーとして、これからも堂々と出席する。 こんなことではめげないし、くじけない。 ましてや、感情のままに「軽はずみな行動」に走るなんてことはしない。 「志」があれば、どんな屈辱(?)にも耐えられるものだ。

 

追伸:

1.ふむ。 そこは人情家の森喜朗元総理のこと。 もしかすると、「あいつには、ちょっと厳しく言い過ぎたかな?」と思う事だってあるかもしれない。 一連の発言を思い起こしてみると、「ちゃんと自分からオレのところに謝りに来い!」「そっちから説明や釈明に来たらどうだ!」と言っているようにも聞こえる。 が、呼ばれてもいないのに、こちらからご機嫌伺いをしたり、釈明したりするつもりはない。 そんなことをしたら、回りの人間から「何だ、口では断固やるなんて言っていながら、あいつはやっぱりうまく立ち回ろうとしている。 自分だけはいい子になろうとしている。 信用出来ない!」って思われるにきまっている。 

 たとえば、アポを取って派閥の会長室を訪ねたとする。 叱られた後で、優しい言葉かなんかをかけられたりすると、(もともとドライではない自分は)つい「分かりました。ご心配をかけました。これからは気をつけます!」なんて言ってしまう可能性がある。 その場では、森会長の怒りが解けるかもしれない。 が、政治家山本一太は「安倍内閣実現」のために、さらにスピードを増して9月の総裁選挙にまっすぐ突っ込んでいく。 

 これからの自分の行動をイメージすると、(本当に申し訳ないが)あくまでも「派閥内の秩序」を維持しようとする森会長の試みと激突することは必至だ。 その度にお伺いを立てるようなことは出来ない。 だから「その場だけご機嫌を取るような」中途半端なことはしない。 政治家として、それこそ「無礼な行動」だ。

 

2.またまた妻がポロッと言った。 「でも、森さんは総理までやった大物政治家でしょう? 知名度も影響力も、ちび議員のあなたとは比べものにならないのにね。 最大派閥の長でもある総理経験者から、ここまで怒られる(やっつけてやるとまで言われる)なんて、すごいじゃない! (よくも悪くも)それだけの存在感があるってことなんだから。 うーん、見直した!」 そんなこと言われても、ちっとも嬉しくない。