前のレポートに、森会長は「練達の政治家」だと書いた。 ひとつひとつの言動には理由があり、意味がある。たとえば、先日の事務局長解任騒動を振り返ってみよう。自分はこの9年間、「自民党観光産業振興議員連盟」の事務局長を務めてきた。 100名以上の自民党国会議員が名前を連ねるこの議員連盟は、全国旅館組合の会長を務めた先代の父が党内に働きかけて立ち上げた組織だ。今から3年前。三塚博・議連会長の引退を受け、森さんに会長職をお願いした。幹事長、事務局長は、細田博之氏(現国会対策委員長)と山本一太のコンビが留任した。(*本来なら、この時点で事務局長は辞めておくべきだったかもしれない。) 先般、その事務局長ポストを突然、解任された。 

 

 事の発端は、約1ヶ月ほど前のこと。議員連盟の総会をセットしようと森会長の事務所に連絡を入れたことに始まる。 そのすぐ後に、森会長から細田委員長のところに「怒りの電話」がかかってきたらしい。さっそく、細田氏から自分の携帯に電話が入ってきた。細田氏と次のような会話を交わした。「あ、山本さん? なぜか分からないが、森会長がたいそうご立腹なんだ。オレは議員連盟の会長を辞めるって言ってる。しかも、オレも辞めるが、事務局長の山本一太も同時にクビにしろって言うんだよな。これが。君、何か、怒らせるようなことやったのか?」「いや、心当たりが多すぎて、分かりません。が、多分、私の言動が原因かもしれません。」「とにかく、明日、会長に会ってくるからさ。また、その上で連絡を入れるよ。」「ハイ、よろしくお願いします。」

 

 翌日、律儀で優しい細田委員長から再び連絡があった。「細田:さっき、森会長と話してきたよ。やぱり、君の言動が原因だ。前の参院選挙のこともあるようだけど、何と言ってもポスト小泉をめぐる発言がけしからんということらしい。君が『安倍さんがいい!』とTVタックルかなんかで発言したんだって? とにかくオレは議連会長を辞める。山本も辞めさせろ。新しい会長は細田君、君がやれよという話なんだよ。」「山本:やはり、そうでしたか。細田先生にご迷惑をかけて申し訳ありません。そういうことなら、私、事務局長をやめさせていただきます。考えたら、ここのところ、(いろいろなことがあって)森会長と丁寧にコンタクト出来ない状態でした。 議連総会の運営について森会長が怒るのも無理はありません。 もっと早く退くべきでした。」 人情派の細田氏がこうつけ加えた。「うん。まあ、『江戸の敵を長崎で討つ』みたいな話だけどなあ。 会長にもいろいろとお考えがあるんだと思うから、仕方がないかな。」

 

 草津温泉の老舗旅館の息子として生まれた自分は、この議員連盟に特別な思い入れがある。けっして「儲かる商売」ではないが、「旅館ほど素晴らしいビジネスはない」と信じている。三塚会長や細田幹事長、伊吹文明氏や宮下創平氏といった大物幹部、旅館・ホテル関係団体を力を合わせ、特別地方消費税の撤廃、旅館業法の改正、公的宿泊施設に関する閣議決定等を実現させてきた。 こうした活動を通じて、全国の旅館関係者(特に青年部)に多くの同志を作った。 苦しかった2回目(5年前)の参院選挙では、全国から旅館・ホテルの若手経営者が(約束どおり)ボランティアで応援に入ってくれた。 涙が出るほど嬉しかった。

 

 森会長は、特別地方消費税や公的宿泊施設をめぐる戦いがどんなものだったのか、その中で山本一太がどのくらい必死に飛び回ったのかは、全くご存知ないと思う。が、旅館関係者との繋がりが自分にとってどれほど大切かは十分に分かっておられるはずだ。 もしかすると、森さんは「事務局長をクビにする!」と言えば、自分のところに謝りにくると考えたのかもしれない。 が、自分は辞めることを即断した。 もっとも、たとえ謝りに来なくても、結果としては政治的に「不良少年」をパワーダウンさせられるのだから、マイナスは何もないということになる。

 

 森・議連会長の下で事務局長としての役目を十分果たせなかったことは反省している。が、会長が辞めるにあたって、「事務局長の言動がけしからんから、あいつも一緒にクビにしろ!」などと言ったケースも、実際にそんな理由で議連ポストを解任された事例なんて、一度も聞いたことがない。 ましてや、観光振興の問題にはライフワークのひとつとして、一生懸命、取り組んできた。 相手が(お世話になった)森会長でなければ、もっと激しく反応したことは間違いない。少なくとも、全国の旅館経営者に「怒りの手紙」を書いていたに違いない。(笑)

 

 森会長の「練達さ」を示すもうひとつの事実。それは、森元総理が「森派内の2人の候補者の名前をあげた上で、自分を名指しして批判した理由」にある。これについては次回のレポートで。

 

追伸:午後6時30分から敬愛する地元の元大物県議と会食した。このミーティングのことは次回のレポートで書く。が、ひとつだけ言っておきたい。 この9月の総裁選挙では、迷わず「新世代総理実現」のために全力を尽くす。安倍内閣と引き替えに「議員バッジ」を失うとしたら、それはそれで本望だ。 ううむ。いよいよ「政治活動終了時計」が現実味を帯びてきた。