今回の衆院選挙で当選した約80名の「改革チルドレン」(*小泉チルドレンとは呼ばない)のうち、約30名はすでに既存の派閥に入会したようだ。いわゆる「無派閥組」は、実質的に約50名。小泉総理が断行した「歴史的な選挙」で誕生したルーキーたち(特に公募で選ばれた新人議員たち)が「既存の派閥に入るべきではない」というのは当然の理屈だと思う。さらに、「来年の総裁選挙に立候補する有力政治家の下で、派閥は再編される。それまではじっとしていたほうが利口だ」という小泉総理のチルドレンに対するアドバイスも、なるほど説得力がある。が、自分にとっては、「どの新人がどこの派閥に加わるか」などというのは大した話ではない。大事なことは、どのグループにいようがいまいが、「改革チルドレン」の個々のメンバーが「独自の判断で」総裁選挙に一票を投じられるかどうかということ。これだけでしょう。

 

 80名の「改革チルドレン」は、郵政民営化に象徴される「構造改革」を支持した「民意の風」を受けて、当選した。だから、国民の気持ちには人一倍、敏感だと思う。総裁選挙が近づいてきたら、有権者の心がどこにあるのか、きっと分かるだろう。永田町の権力構造と国民の意識の間に大きなギャップがあることを、改めて感じ取るだろう。小泉政権(いわゆる小泉イズム)は、安倍晋三官房長官を筆頭に、石原伸晃元国土交通大臣、石破茂元防衛庁長官、茂木敏充元科学技術担当大臣といった「新世代のスター」を多く生み出した。新しい国会議員のビジネスモデルになりつつある竹中平蔵大臣や300議席獲得の功労者である武部勤幹事長、さらには筋金入りの改革派である中川秀直政調会長等の「新実力者」もデビューさせた。

 

 が、ひとつ忘れてはならない事実がある。それは「小泉劇場」における主役は常に小泉首相自身であるということ。逆に言えば、国民という観衆の前で、小泉総理以外のプレーヤーはすべて「脇役」だということだ。 小泉純一郎という恒星があってはじめて、回りの衛星が輝いた。極論すれば、そういうことだと思う。永田町の実力者は、国民にとっての実力者ではない。 国会での影響力は、国民への影響力と符合しない。

 

 来年の9月に官邸から「主役の顔」が消える。人気漫画「ガラスの仮面」ではないが、小泉首相に代わって伝説の「紅天女」(=構造改革)を演じられる役者が現在の自民党にいるだろうか。もう一度、「夢」に向かって聴衆を奮い立たせるような舞台を創れる俳優が、今の政界に存在するだろうか。「紅天女」を演じられる可能性があるとしたら、それは安倍晋三官房長官しかいない。自分は芸能プロデューサーでも、「大都芸能」の社長でもない。(笑)でも、伝説の舞台は、安倍さんに引き継いでもらいたい。初代「小泉流」の精神を次ぎ、さらに進化させ、「安倍流」の演技を完成させてほしい。