第３次小泉改造内閣が発足した。同時に自民党執行部（党３役）の人事も発表された。今回の改造の目玉は、党と内閣の２つの枢要ポスト（官房長官と幹事長）に誰をつけるかという点に尽きていた。小泉首相は、安倍幹事長代理を官房長官に抜擢し、武部幹事長を留任させた。個人的に言うと、総理はベストの選択をしたと思う。全体的に見て、実力者を適材適所で配した「手堅い内閣」という感じだ。特に、与謝野馨政調会長の金融担当大臣と額賀福志郎氏の防衛庁長官は、まさに適役だ。小泉総理の任期はあと約１年。この「実務型内閣」で、しっかりと改革の「総仕上げ」をやって欲しい。
今度の組閣で２つのことが明確になった。ひとつ目は、小泉総理が安倍晋三氏を高く評価していること。もっと具体的に言うと、安倍氏を明らかにポスト小泉レースのフロント・ランナーに位置づけているということだ。小泉首相と安倍氏の間には、外交政策や政治手法に微妙な温度差がある。今回の組閣（安倍氏の処遇）に関して、小泉総理には２つの選択肢があった。前者は外交政策の違いを表面化させることを避け、安倍氏に厚生労働大臣のようなポストを与えるという方法。後者は、あえて官房長官や外務大臣のような閣僚に抜擢して、政策の違いを解消させること。つまり一種の「踏み絵」を迫るやり方だ。小泉総理は明らかに「後者の道」を選んだ。小泉総理が安倍さんに送ったのは、こんなメッセージではないだろうか。「官房長官として最後まで小泉改革を支え、引き継いでもらいたい。外交政策についてはもう少し視野を広げ、自分の後継にふさわしいリーダーになってほしい！！」
もう一つは、小泉総理の頭にあるポスト小泉の候補者が、４人の有力者（麻生、谷垣、福田、安倍の４氏）だけではないということだ。この組閣で「新内閣にポスト小泉を目指す有力者を起用する」との総理の発言に照らしてみると、小泉首相の頭にある「後継候補」は９人いるということになる。安倍晋三氏、麻生太郎氏、谷垣禎一氏、福田康夫氏、竹中平蔵氏、小池百合子氏、中川昭一氏、額賀福志郎氏、小坂憲司氏までが含まれるということだろう。
今回の改造では「山本一太も入閣するのではないか」と予想するマスコミ関係者もいた。実際、週刊誌やスポーツ紙の記事でも、何度か自分の名前が出されたようだ。が、以前のレポートでも何度か書いたように、今回の改造で「自分が抜擢される」可能性は最初からゼロだった。万が一チャンスがあったとしたら、組閣の当日（しかも閣僚人事が決まる前）にテレビ出演して改造人事についてコメントするなどということをするワケがない。ワイド・スクランブルのスタジオで政治評論家の三宅久之氏から、「安倍さんが官房長官なら、副長官は山本さんじゃないか」と水を向けられた。「それは１００％、ありません。今日、このスタジオにいることが何よりの証明です。（笑）」と答えた。
「絶対に入閣なんてありませんよ。それでも、いいならどうぞ。」朝から密着取材をさせてほしいという某テレビ局の記者にそう話した。結局、群馬県での朝の街頭演説の風景から東京の議員会館事務所で組閣名簿の発表を見る場面まで、「カメラ」がピタリとくっついてきた。熱心で感じのいいＴＶジャーナリストだった。議員会館のテレビの前で、最後のインタビューを受けた。「ようやく改造が終わったわけですが、山本さんとしてはこの閣僚人事をどう評価しますか？」「全体的には、実務型の『いい内閣』だと思います。特に、安倍さんが官房長官になったことと、武部さんが幹事長として留任したことが嬉しいですね。」
最初から「入閣」はあり得なかった。だからこの組閣劇を楽しく観戦することが出来た。が、国会の仲間や一部メディアから「入閣候補の末席」に加えてもらったことは、けっして悪いことではないと考えている。（＊ちょっと嬉しかったりして…（笑））だって、そうでしょう？ 今回の総選挙でそれだけ「存在感を発揮した」「活躍した」（少なくとも世間的にはそう見られた）ということなのだから。（＊世耕弘成氏も同じ気持ちだろう。）もちろん、改造前も改造後も、小泉改革を支持する気持ちは全く変わらない。むしろ「ポスト」なんてないほうがいい。より自由な形で小泉総理や安倍官房長官を応援出来るというものだ。今週もどこかで官邸に足を運んでみよう。「アイ・ワイ懇」は続く。
追伸：
１．ポストを求めずに、ポストに頼らずに政治家をやってきて本当によかったと思う。そうでなければ、参院自民党の「停滞と絶望のルール」を受け入れざる得ない。組閣の度に「一喜一憂」することになる。今回入閣候補に挙げられながら大臣になれなかった政治家、又は「自分は入閣する」と思い込んでいたのにお呼びがかからなかった議員がいたとしたら、さぞかし小泉総理のことを恨んでいるだろう。閣僚ポストは１８しかない。大多数の議員は人事の度に「アンハッピー」な状態になるということだ。小泉総理もぶら下がりのインタビューで言っていた。「（政界の）人事というのは、本当に難しい」と。
２．明日の朝、午前８時から９時まで、テレビ朝日「スーパーモーニング」に生出演する。テーマはもちろん「内閣改造とポスト小泉」について。スッキリした気分で発言出来そうだ。