国会議員には、それぞれ「選挙区の事情」というものがある。また、それぞれの「政治的信念」というものだってあるだろう。だから、郵政改革に賛成でも、反対でもいい。問題は、郵政法案の採決にあたって政治家として取った行動(賛成、棄権、反対)を、国民(有権者)にきちんと説明出来るかどうかだと思う。

 

 国民にとって、今回の郵政解散は、個々の政治家の「能力」を見極める絶好の機会だろう。あなたの選挙区の政治家は、郵政改革を支持していますか?それとも反対ですか? そしてその理由を自分の言葉(*どっかで聞いたような理屈ではなく)で語っているだろうか? 郵政法案への賛成、反対(又は棄権)の根拠について、十分に納得のいくような発言をしているだろうか?この政策についてちゃんと勉強し、その上で自らの姿勢を貫こうとする本物の「信念」を感じるだろうか? 郵政法案に反対する政治家にも、それなりの理由がある。が、まさか「この法案が成立すると、山間部や過疎地の郵便局がなくなる」などという、不正確で単純で情緒的な論理を「決まり文句」のように繰り返すような「程度の低い政治家」はいないと信じたい。仮にも選挙で選ばれた国会議員なのだから。

 

 一部のメディアは、「郵政法案に反対した37人」を公認しない小泉総理を「冷酷なリーダー」と描写し、選挙区に対抗馬を擁立された反対派をまるで「被害者」のように扱う傾向がある。が、国民(有権者)には叡智がある。こんなチープなトリックに騙されるはずがない。郵政民営化(=小泉構造改革)の賛否を問う選挙なのだから、反対派を公認しないのは当然だ。反対派の選挙区に立候補する人々は「刺客」ではなく、有権者に選択肢を与える「対抗馬」だ。

 本日、武部幹事長が、「37選挙区のすべてに候補者を立てる」という方針を改めて表明した。心強い言葉だった。小泉首相には最後までひるむことなく、信念を貫いてもらいたい。そうすれば必ず「求心力」が生まれてくる。「自公で過半数を穫る」ことは可能だ。え?もし負けたら??その時はスッキリ退陣し、自民党も下野すればいいではないか。

 この選挙が、日本の政治史に新しい1ページを開く画期的な戦いになることは間違いない。日本の政治が「情治政治」のレベルを脱却し、政策で(能力で)国会議員を選べるようになるか。(*地縁や血縁だけで「能力のない議員」を生み出すシステムは壊さねばならない。)個々の議員の後援会という「個人商店」に属している自民党支持者(党員)が、党の政策を支持するメンバーに成長していけるかどうか。そして、自民党が選挙公約「マニフェスト」を守れる本当の「政党」に進化していけるかどうか。

 「郵政民営化選挙」は、日本の政党政治が本物になるための「最初の試金石」(別の言い方をすれば「産みの苦しみ」)になる。党本部と県連の対立も、反対派からの「お涙頂戴」の悲鳴も、永田町内外の「小泉・暴君論」も、日本政治が成熟していくためのプロセスだ。自分はそう思う。