腕時計の針は午後5時を指している。海上保安庁の所有する最新型のジョット機「ガルフ・ストリーム」(22名乗り)で羽田空港に向かっている。冷たいお茶を飲みながら、機中でパソコンの電源を入れた。窓の外は快晴。それにしても、この飛行機、ほとんど揺れないし、小回りは効くし、(噂に聞いていたとおり)なかなかの優れものだ。

 

 今回の「東シナ海における海洋権益」視察に参加したのは、与野党の議員14名。超党派の議員連盟「新世紀の安保を考える会」と各党の海洋権益関係チームの中から視察メンバーを選んだらしい。自民党からは7名。視察チーム団長の武見敬三氏、前防衛庁副長官の浜田靖一氏、党国防部会長の岩屋毅氏、党国土交通部会長の渡辺喜美氏、党海洋権益特別委員会事務局長の森岡政宏氏、そして山本一太という組み合わせだ。公明党からは浜田昌良氏、民主党からは鳩山由紀夫氏、細野豪志氏、若林秀樹氏を含む6名が合流した。

 

 実は、自分はもともと今回の議員ミッションのメンバーには入っていなかった。先週、ガルフ・ストリームで尖閣諸島を視察するいうニュースを聞いて、団長の武見敬三参院議員に「いいなあ。もう席がないそうですね。万一、誰かが急に行けなくなったら、私に声をかけてください。」と頼んでおいた。数日前に武見さんから連絡があり、「舛添要一さんが急遽、来れなくなった。もし興味があればどうぞ!」と声をかけてもらった。何とか日程を調整し、海洋権益調査チームに潜り込んだというわけだ。(*武見団長、ご配慮、感謝します!)

 さて、今日の日程をざっと振り返ってみよう。午前8時30分に羽田空港の羽田航空基地に集合。午前9時に羽田空港を出発した。石垣島(石垣空港)に着いたのは(予定より1時間も早い)午前11時30分。「向かい風」が思ったより強くなかったらしい。石垣空港からマイクロバスで5分ほどの場所にあるレストラン(その名も「石垣」)でランチを食べて小休止。再び石垣空港に戻り、そこから尖閣諸島に向けて飛び立った。20分ほど(?)飛行すると、「魚釣島」が見えてきた。高度数百メートルの地点まで下降し、原始林状の緑に覆われた島を観察した。同様に、尖閣諸島の4つの島を(次々に)上空から視察した。

 

 まず驚いたのは、魚釣島が思ったより大きかったこと。周囲11キロメートルの尖閣諸島最大の島であるということは聞いていたが、頭の中でイメージしていた数倍のサイズだった。「実際に見ると、大きい島だなあ。」機内でもそんな声があがっていた。魚釣島の付近で旋回しながら、数回にわたり、かなり近くまで接近した。有名な魚釣島灯台(*こちらは思ったより小さかった)もハッキリ見えた。続けて、北小島、南小島、久場島、大正島の上空をくるりと回った。

 

 機内を動き回りながら下をのぞき込んでいると、「では、これから尖閣諸島を離れ、中国ガス油田の視察に向かいます。」という機長のアナウンスがあった。約20ほどで油田開発地域に到達。ここからさらに「高度100メートル」まで降下した。(*海に着水しそうな感じがした。)

 

 春暁油ガス田、天外天ガス田、平湖油ガス田の状況を上空からひとつひとつ観察した。「これってギリギリだろうな」と思う距離まで近づいた。春暁ガス田、天外天ガス田には構築物(井戸を掘るためのいわゆるプラットフォーム)が設置されていた。が、まだ稼働していない。中国側は8月頃に採掘を始める意向のようだ。これに対して、日中中間線付近にあるガス田の中で最も中国寄りにある平湖ガス田はすでに動いていた。平湖ー上海間の300キロメートルの海底パイプラインにより、ガスは上海に運ばれているということだった。施設からあがる炎が確認できた。

 今回の視察を通じて再認識したことがある。それは、「日本という国が海洋国家であり、海洋権益というものをけして疎かにしてはいけない」ということだ。東シナ海の海洋資源問題については、日本の国益を踏まえて中国側に毅然と主張していく必要がある。もちろん、先の見通しもなく、どこまでも強硬に押していけばいいという意味ではない。最終的には、双方に利益をもたらすような「何らかの決着」を図らねばならない。

 

 と、ここまで書いたところで、飛行機が降下を始めた。羽田には午後6時(あと20分)に到着する予定だ。午後6時20分にセットされた空港内で記者会見にも一応顔を出すつもりだ。(*まあ、会見で自分が発言することはないけど。)この続きは次回のレポートで。