日本の常任理事国入り問題や教科書検定等に抗議する中国の反日デモが、昨日(9日)、とうとう首都北京に飛び火した。約1万人が抗議行動に参加し、日本大使館の窓ガラスが割られたり、いくつかの日本料理店が壊されたりした。中国国内でこれだけ大規模な反日デモが起こったのは、72年の日中国交回復以降、初めてのことだ。

 

 驚いたのは、中国の警備当局(中国政府)が、学生らによる日本大使館への投石を黙認したことだ。北京のレストラン(?)で日本人客2人が数名の中国人に殴られて怪我をしたという最新情報も入ってきた。こうした事態を受け、中国政府の報道官が、「これは我々が見たくなかった事態だ。が、今回の責任は中国政府にはない。すべて日本政府が招いたことだ」という声明を出した。

 

 たとえば、東京で大規模な「反中デモ」が発生したとしよう。どんな理由があろうと、日本の警察当局がデモ参加者の中国大使館への投石や破壊行為を許すだろうか。答えはノーだ。そして(東京に滞在する中国人が日本人に暴行されるという事件まで起きている状況の中で)日本政府が、「これは遺憾な事態だ。が、この事件を引き起こした原因は、すべて中国政府にある」などとコメントするだろうか。普通は、「遺憾の意を表明し、再発防止を約束する」というのが常識でしょう。

 

 今回の反日デモとそれに対する中国政府の対応を見て、ハッキリ分かったことがある。それは「中国は先進国ではない」ということだ。中国政府には、「こうした反日行動を容認し見せつけることで、歴史問題や領土問題について日本の譲歩を引き出そう」という戦略があるのかもしれない。また、一連の抗議行動を頭から押さえつけることで、反日キャンペーンが政権批判に転ずる事態を恐れているという側面もあるだろう。が、日中関係が重要だと言いながら、日本大使館や日系商店への破壊行為を止められないとしたら、それは日中間の信頼関係を低下させる。同時に、国際社会における中国のイメージをも悪化させるだろう。

 

 国連の安保理改革についても、尖閣諸島の問題についても、日中の見解が異なることは事実だ。が、政府の立場が一致しないということと、デモによる破壊行為を容認するというのは次元の違う話だ。中国政府には、自国内の日本企業や日本人の安全確保を図る責任がある。常軌を逸した行動には断固たる措置を取ってもらいたい。