午後4時。党本部の新憲法起草委員会(国会に関する小委員会)に出席した。議論は「二院制を見直すかどうか」に集中した。珍しく、参院議員の出席者が衆院議員を上回っていた。片山幹事長が幹部席の中央にどっかと座り、個々の議員の発言に目を光らせていた。

 

 出席した議員から、二院制の堅持を訴える意見と、一院制に変えるべきだという主張が交互に述べられた。手をあげて4番目に発言した。次のような話をした。「参議院議員になって約10年になるが、現在の衆参のあり方はどう考えてもおかしい。先ほど、先進国はほとんど二院制だという意見があったが、日本の二院制は(欧米のシステム)とは少し違う。議決権の面からいうと、他の先進国の二院制は実質的な一院制だからだ。」

 

 さらにこう続けた。「現在の衆参の選挙制度には違いがない。同じ選挙制度で選ばれておきながら、両院の権限がここまで違う(衆議院の優越性)二院制は日本だけだ。しかも、衆参は全く同じ審議をやっている。このままの状態が続くのであれば、二院制である意味がない(一院制のほうがいい)と思わざる得ない。もし、二院制を維持するというなら、衆参の機能を明確に分ける必要がある。たとえば、6年の(安定した)任期がある参議院には外交の優越性(条約の先議権等)を持たせるとか、そういう大胆な改革がやれるなら、二院制でもいい。」

 

 最後にこう締めくくった。「自分は参議院改革の方向性は大きく言って二つしかないと思っている。ひとつは、米国の上院のようなシステムにして、参院が外交の優越権を持つというやり方。もうひとつは、参院に衆院とは異なった選挙制度を導入し、名実ともに(抑制・補完の府)になることだ。河野参院議長の時代から、後者の改革案は幾度となく提示されている。まとめると、衆参の機能を大胆に見直して二院制を続けるか、それとも実質的な一院制に変えるか。そのどちらかしかない。衆参の機能分化が出来ないのであれば、一院制のほうがベターな選択肢だと思う。」

 

 「二院制の可否」についての発言が続いていたが、後ろ髪を引かれる思いで党本部の部屋を出た。早足で3つの議員会館の前を通り過ぎ、首相官邸に入った。午後4時45分。いつもの応接室(?)で、飯島秘書官に会った。郵政改革に対する小泉総理の姿勢を確かめるためだった。細かい会話の内容を書くわけにはいかない。が、飯島氏にガッチリ注文をつけておいた。「政府と党の話し合いは、ぜひともまとめて欲しいと思う。が、郵政事業民営化の意義が薄れるような形での妥協には反対だ。小泉総理にはちゃんと初心を貫いてもらいたい。政府も党も(勝利宣言)するような曖昧な決着になったら、それこそ、小泉総理の神通力は消え、小泉改革のモメンタムは完全に失われてしまう!」頷きながら聞いていた飯島氏の顔を見ながら、続けざまに言った。「総理が最後まで本意を貫くなら、こちらも覚悟を決めて最後まで応援する!!」

 

 飯島秘書官が何と答えたかは、書かない。が、十分に成果はあった。側近の言葉の端々から、「小泉首相が本気で腹を括っている」ことを確信したからだ。来週の初めから、さっそく政府と党の「ガチンコ勝負」が始まることになるだろう。この厳しい状況の中で、「戦国武将・小泉純一郎」がどうやって突破口を切り開いていくのか。しばらくは目が離せない。

 

追伸:

1.飯島秘書官と話しているところに、フラリと町村外務大臣が現れた。

町村:「お、山本君、来てたのか!」 

山本:「あ、町村大臣。いつもご苦労様です。」

飯島:「いやあ、大臣、今日も山本先生に突き上げられちゃって大変なんですよ。(笑)」 

町村:「山本さんは小泉親衛隊だからなあ。」

山本:「そう言えば、明日の朝の国連改革議連に顔を出していただけると聴きました。本当にありがとうございます。」 

町村:「うん、そうなんだ。明日の会合は行くからね。」

 

2.官邸を出て議員会館の方へ歩き始めた。時計を見ると午後5時40分。ありゃあ、40分以上も話してたってことか。これじゃあ、午後5時から始まっている新憲法起草委員会(地方自治に関する小委員会)には間に合わないなあ。