大晦日の夜。東京の部屋でパソコンに向かっている。あと3時間で2004年が終わる。4時間後には、テレビ朝日のスタジオで元旦のテレビ・マラソンが始まる。午前1時30分から5時20分まで「朝まで生テレビ」、午前6時から8時30分までTBSの「サタデー、すばっと」(正月特番)に生出演する予定だ。妻がテキパキと作ってくれた温かい「年越しそば」をちょっと早めに食べた。体調はベストの状態ではないが、全力を尽くすつもりだ。

 

 さて、今年最後のレポートは「仲間」のことについて書くことにする。まずこんなフレーズで話を始めよう。政界の人事ほど難しいものはない。「適材適所」と期待された大臣が全くダメだったかと思うと、畑違いだと思われていた大臣が予想以上に活躍したりする。政治家の能力は単に政策の知識や試験の点数だけでは測れないからだ。一度、中曽根元総理に聞いたことがある。「適材適所の人事を行うために、最も効果的なシステムとは何でしょうか。何を基準にしたら一番いいと思われますか?」中曽根氏の答えは、「それが難しい。政策作りや政局を一緒に経験する中で、相手の能力や胆力を発見していくしかないかもしれない。」というものだった。

 

 日々の政治活動を通じて、回りの政治家の本質が明らかになっていく。思わぬ弱点にガッカリすることもあれば、相手の良さを再発見することもある。ガッカリしたことは具体的に書かない。ひとつだけ言えることは、いいとこ取りだけして自らはリスクを負いたくないという「中途半端な姿勢」はすぐに見透かされてしまう。加えて、政治家の行動には一貫性というものが必要だ。功を焦るあまり、矛盾した二つのことを同時にやろうとすると、たちまち仲間の信頼を低下させる。こうした他の政治家の行動を、常に自分自身の教訓にしていかねばならないと思う。

 

 昨年の終盤、同僚議員の長所(魅力)を改めて発見した嬉しいケースが二つあった。ひとつは菅原一秀衆院議員に関する件。もうひとつは水野賢一衆院議員についてのエピソードだ。昨年11月。ある学生グループから東京大学の学園祭(駒場祭)に招かれた。彼らの主催する政治セミナーにパネリストとして参加して欲しいという依頼だった。真面目ないい企画だと思ったので受けることにした。東京の政策秘書が、事務所を訪ねてきた学生サークルの代表者と打ち合わせをした。その翌日、彼らと話をした秘書に、「打ち合わせはどうだった?参加するのはいいけど、ちゃんと人数集まるのかな。」(*政治家の第六感というヤツだ)と聞いてみた。「大丈夫です。大教室を会場にするので、少なくとも200人近くは集めると言ってました。自信満々でしたよ。」という返事が戻ってきた。

 

 「新世代総理を創る会」のメンバーにも声をかけて欲しいということだったので、東京都選出の菅原一秀氏を誘ってみた。菅原さんは、「ええと、その日なら何とか時間を作れると思います。喜んで行きますよ」と快く引き受けてくれた。当日(確か午前11時?だと思ったが)、東大のキャンパスに出向くと、数百名が入る会場の近くの小さな教室(控え室)に案内された。しばらくすると、菅原氏がスタッフを連れてやってきた。2人が揃ったところで、このシンポジウムを主催した学生グループのリーダーから、議論の進め方について説明があった。

 

 さて、開演の時間が近づくにつれ、嫌な予感が現実味を帯びてきた。予定の時間になっても、大教室には10名弱の聴衆(そのうち、数名は菅原氏の知り合い)しか集まっていないとのこと。会を企画した学生達の表情がみるみるこわばっていくのが分かった。窓の外から下を見ると、数名の学生が懸命に参加者を呼び込もうとしている様子が目に入ってきた。

 

 「あの、本当に申し訳ありません。私たちの準備不足で、聴衆が思ったより少なくて…。」少し青ざめた顔で謝る学生に、こう提案した。「それはもう仕方がない。でも、この人数だと200人以上入る大教室でセミナーをやってもちょっと絵にならないでしょう。いっそのこと、この控え室(小さな教室)の机と椅子を並びかえて、ここでやりませんか。菅原さん、それでいいですかね?」「ええ、そうしましょう。」主催者側の了解を得るや否や、早速、新しい会場の整備に着手した。菅原氏と2人で机を並べたり、椅子を運んだり、黒板をきれいに拭いたり…。もちろん、学生グループもこの作業に合流した。これまでいろいろなシンポジウムやセミナーに参加したことはあったが、会場作りまでやるというのは初めての経験だった。(笑)

 

 学園祭のセミナーは予定より15分遅れて始まった。大教室から移ってきた10名に加え、急に聴衆が増えてきた。始まって30分もすると(驚いたことに)小さな教室は一杯になっていた。議論の中で、菅原氏のライフ・ストーリーを初めて聞いた。参加者とのQ&Aのコーナーでも、活発な質疑が交わされた。最終的には、結構いいイベントになった感じがした。このプロジェクトを主催した学生達には、今回の経験をしっかり活かしてもらいたいと思う。次回の企画は(少なくとも)「参加者の数を心配しないですむ」ようなイベントに仕上げてください。(頑張れよー!)

 ギリギリで会場の変更を余儀なくされたり、自ら机や椅子を並べなければならなかったことについて、特に不快感は持っていない。企画を読んで「意味がある」と判断したから参加したわけで、その点では、たとえ参加者が数名であっても、クレームをつけたり怒ったりする筋合いはない。このセミナーに関係した学生も皆、感じのいい若者だった。ただし、菅原一秀氏と自分の立場はちょっと違う。菅原議員は、山本一太という政治家の言葉を信頼して、わざわざ機会を設けてくれたからだ。「時間を調整して来たのに、参加者は少ないし、会場作りまで手伝わされるなんて話が違う」と怒られても仕方がない。実際、気むずかしい政治家だったら、途中で帰ってしまったかもしれない。

 

 小さな教室で一緒に机を運びながら、「菅原さん。ごめんなさい!こんな状況になるなんて思っていなかったんです。せっかく時間を割いてくれたのにねえ。」とお詫びした。菅原氏は、「いや、いいんですよ。パネリストとして呼ばれたシンポジウムで会場作りまでやらされるなんて滅多にないことですから、かえって記憶に残ります。それに、自分も早稲田大学時代にこんな企画をよくやってたんで、人が集まらなくて困った経験があるんです。」と笑っていた。ううむ。政治家になる前にいろいろな苦労を経験しているだけあって、菅原氏には他人への思いやりというものがある。こんな時に真の人間性が出る。選挙区の皆さん、お世辞を言うワケじゃないけど、菅原さんてハートの温かい人物ですよ。

 

 あ、休み休み書いていたら、2005年が近づいてきた。水野氏のエピソードは元旦のレポートで。皆さん、どうぞ、素晴らしい新年をお迎えください!!