夜8時。青山の中華レストランで、のびのびになっていた安倍晋三幹事長代理の慰労会が始まった。メンバーは、派閥横断の衆参議員20名。木のカーテンで仕切られた個室には丸いテーブルが二つ。それぞれ10名ずつに別れて座った。安倍氏が到着したのは午後8時30分過ぎ。約2時間、安倍さんを囲んで大いに盛り上がった。午後9時。出席者がほぼそろったところで、幹事役の菅義偉衆院議員から一言。続いてメインゲストである安倍さんから挨拶をもらい、ビールで乾杯した。政策や政局の話はほとんど聞こえてこなかった。安倍氏は、終始、リラックスした表情だった。

 

 言うまでもないことだが、これは(けっして)安倍グループ立ち上げの会合ではない。安倍幹事長代理の人柄を考えたらすぐに分かる。安倍さんは筋を通すタイプだ。幹事長代理という立場にありながら、党内に(しかもこの時期に)自ら働きかけて自分の派閥を作るなどということはあり得ない。事実、今晩の会についても、「あまり大袈裟にならないようにね」と話していた。当然、メンバーの人選にも一切かかわっていない。

 え、会の趣旨?だから、慰労の会ですって。党のために奔走する安倍さんを「激励したい」と思う議員が、自発的に(ふわーっと声をかけあって)集まっただけのことだ。実際、この会を定期的に(同じメンバーで)やるという話にもならなかったし、会に名前をつけるようなこともしなかった。まあ、そこは政治の世界。しかもポスト小泉の有力候補を囲んでの会となれば、様々な憶測を呼ぶかもしれない。が、今晩の会はあくまでも懇親会だ。そこに出席していた自分が言うのだから間違いない。

 

 断っておくが、自分は(安倍さんのことはとても好きだけど)安倍晋三氏の「側近中の側近」などではない。そこまで自惚れていない。どっちかと言えば「片思い」の状態に近い。荒井広幸氏と安倍氏の友情にはもっと歴史があるし、同世代を引っ張ってきた石原伸晃氏や塩崎恭久氏は、安倍さんにとって特別な存在だろう。実務能力ということについても、「派閥のクラスター爆弾」と呼ばれる山本一太より、党改革で活躍している世耕弘成氏のほうを買っているかもしれない。

 

 さらに言えば、安倍さんを独占しようなどとケチなことも考えていない。(*そんなことが出来るはずもない。)安倍晋三氏を激励したいとか、いろいろと意見を言いたいとか、一度安倍氏の話を聞いてみたいと思う議員は、どしどし懇親の機会を作ってもらったらいい。党の締め付けがあんなにも強かった時代でさえ、YKK(グループ新世紀)は堂々と会合を開いていた。ましてや派閥の求心力自体が変質しつつある昨今のこと。個々の議員(特に若手)が、所属派閥にこだわらず「次世代のリーダー」を囲んで懇親を深めたいと思うのは自然のことだ。何らやましい話ではない。

 

追伸:政治の世界にルールがあるように、マスコミの世界にもルールがある。今晩の会合には(突発的な事故?のようなもんだけど)いささか不愉快な状況が生まれてしまった。なるほど。こういうエピソードを通じて、仲間の本質や本音が見えてきたりする。改めて自分に言い聞かせた。政治家は常に「注意深く」なければならない。