大リーグの年間安打数新記録(259安打)を樹立したイチロー選手が、試合後のインタビューでこんなことを言っていた。「小さなことを積み上げていくことが、とんでもないところに到達する唯一の方法だということが改めて分かりました。」ううむ。これもイチローならではのセリフだ。「天才」は日々の「努力」によって支えられている。

 

 体調はまだ完全に回復していない。が、イチローのこの言葉を思い出しながら、今日も一日、地元の挨拶回りをこなした。移動中の車の中で何度も「気絶」しながら、自宅の呼び鈴を押し、名刺を置いて挨拶する(握手する)というプロセスを、淡々と(しかし心をこめて)繰り返した。

 

 さて、小泉改造内閣の全容が固まった夜、「士志の会」が都内で会合を持った。「士志の会」のメンバーは、ポスト小泉の有力候補と言われる4人の政治家(麻生太郎氏、平沼赳夫氏、高村正彦氏、古賀誠氏)だ。会合の後、メンバーの1人から、「中二階と言い出したヤツのことを、ずっと心に銘記しようと誓い合った」という話がマスコミに伝えられた。翌日の朝刊各紙の政治面で、この言葉が大きく取り上げられていた。

 

 「中二階と言い出したヤツ」というのが誰のことを意味するのか、諸説ある。そのまま素直に取れば、「中二階を吹っ飛ばせ」というキャッチフレーズを発明した山本一太ということになる。自民党副幹事長に就任した河野太郎氏から、さっそく電話がかかってきた。「あれは一太さんのことですよ、絶対に。(*嬉しそうに言うなよ!)」

 

 2つ目の説は、ニューヨーク出張中の内政懇談会で「中二階の人々には改革の情熱が足りない」と批判した小泉総理に対する怒りの表現(牽制?)ではないかというもの。さらには、「新世代総理を創る会」の活動及び会のメンバーに対する警戒の現れ(警告?)ではないかという分析もあった。

 

 もし、これが自分に対して出されたメッセージだとすれば、ドキドキするほど光栄なことだと思う。(*山本一太も捨てたもんじゃないってことだ。)が、残念ながら(?)それはないだろう。仮にも次期総理を狙う大物4人が、何のポストにもついていない(しかも参議院議員)山本一太という政治家の存在をそこまで意識しているはずがない。やはり、小泉総理の「中二階発言」に対する怒りの表現と考えるのが自然だろう。

 

 断っておくが、自分はこの4人の政治家のことが、けして嫌いではない。さらに言えば、次の首相を目指そうというこのメンバーの中に、「中二階と言ったヤツを許さない!」などという了見の狭いコメントを(わざわざメディアに働きかけて)発信するような人物がいるとは…にわかには信じられない。もし、この言葉が「ポスト小泉に大きく世代交代の針を進めようとしている若手」に対して発せられたものだとしたら(*そんなことはないと信じているが)、本当にガッカリする。ため息しか出ない。「あんな若手の連中なんかに、この日本は任せられない!」とか、「自分たちが次期総理にならなければ、日本は再生しない!」とか、「場合によっては、小泉内閣も吹き飛ばす!」というなら分かるけど…。いずれにせよ、「中二階世代」の方々には、若手を蹴散らすような迫力と行動力を見せて欲しい。健全な世代間の競争こそ、絶滅の危機に瀕した恐竜「自民党」を活性化するただ一つの方法だ。ただし、この勝負は我々が勝たねばならない。それ以外に自民党を存続させ(*別に無くなっても構わないが)、日本復活のための改革を引き継ぐことは出来ない。そう確信している。

 

 麻生太郎氏(現総務大臣)は(以前、このレポートに書いた憶えがあるが)若手議員に人気がある。とてもチャーミングな人物だからだ。(*総理になったら、舌禍事件とか起こしそうな気がするけど(笑))昨年7月。若手有志による勉強会で、与野党に先駆けて独自の「マニフェスト」を練り上げた。そのマニフェスト作成のために開催したセミナーにも、「しょうがねえなあ」と笑いながら、出席してくれた。党の政調会長というポストだったにもかかわらず。(河野太郎も言っていたが)そのハートの大きな麻生さんが、こんなつまらないことを言うはずがない。

 

 古賀元幹事長のことは個人的にはよく知らない。仲良しの菅義偉衆院議員によれば、「極めて戦略的な政治家」だそうだ。これだけの迫力を持った党人派が、自分のカリスマを自ら失わせるような言葉を発するとは、どうしても思えない。

 

 外交政策に取り組んできた政治家として、高村正彦元外相のことは、かなり尊敬している。「外交には対話と抑止が必要。何かあった時のための道具立ては整えておく必要がある。」そう言って、若手有志6名で練り上げた対北朝鮮経済制裁法案を最後まで応援してくれた。高村氏の人柄を考えても、「言ったヤツはけしからん」みたいな感情論を唱えるとは考えにくい。

 

 元経済産業大臣の平沼赳夫氏は、盟友の水野賢一衆院議員が、「心から信頼出来る」「包容力がある」と評する数少ない政治家だ。平沼氏が会長を務める「日本ーマレーシア議員連盟」の事務局長は山本一太だ。親分肌の平沼氏と会って話をする度に必ず出てくるフレーズがある。それは「うちの水野君」という枕詞だ。「あ、山本さん。うちの水野君と一緒に頑張ってるようだね」とか、「うちの水野君に聞いたけど…らしいね。」

 

 同じグループの先輩として(高校の先輩でもあるようだが)、若手の水野さんを本当に可愛がっている様子(包容力)が伝わってくる。派閥では常に「問題児」扱いされている自分とは雲泥の差だ。(*ちょっと羨ましい)その水野さんは「新世代総理を創る会」の主要メンバーの一人。この会について、(ずい分前のことのようだが)水野氏が平沼氏からこんなことを言われたらしい。「ああ、そんな動きはいつの時代にもあったことだよ。若手がどんどん動くことが党の活性化になるんだ。」ううむ。「中二階と命名したヤツは許さない」というのが平沼氏の口から出たというのも、ちょっと信じられないなあ。

 

 続きは次回のレポートその2で。