考えればとてもシンプルなことだ。自民党は先の参議院選挙で敗北した。党の執行部が目標に掲げた勝敗ライン(51議席)に届かなかったのだから、明らかに負けた。そして選挙の責任者である衆参の幹事長は選挙前から、「目標議席に届かなかったら責任を取る」と明言していた。「責任を取る」という言葉の意味は、「幹事長職を辞する」ということに他ならない。政界(永田町)の用語ではいろいろと柔軟な解釈があるようだが、それは国民の目から見たら単なる「ごまかし」以外のなにものでもない。

 

 自民党は今回の厳しい選挙結果をもっと正面から受け止めるべきだ。「負けた」原因を真剣に検証し、責任の所在を明確にし、その上で再スタートを図らねばならない。政党に限らず、失敗した時はどの組織だって担当の幹部が責任を取る。それが出来ない組織は停滞し、滅びの道を行くしかない。

 

 明日の午後2時30分に参議院自民党の議員総会(特別総会)がセットされた。この議員総会で青木幹雄幹事長の「議員会長昇格」が決定される。しかも3年の任期を持つ議員会長だ。7月の選挙で多くの同僚議員が落選した。その選挙の最高責任者は執行部にとどまり、昇進する。この人事はどう考えても理屈に合わない。青木幹事長が政策や国家ビジョンを語るのは見たことがない。が、少なくとも「自らの派閥を守り、参議院の秩序を維持する」という目的のためには「私心」を持たなかったはずだ。だからライオンでいられた。ライオンだと思っているから(向こうは歯牙にもかけていないと思いながら)リスクをかけて必死で抵抗してきた。今回の件ばかりは「保身」と言われても仕方がない。

 

 他の議員はこれで本当にいいと思っているのだろうか。先日の夜、都内の料亭で清風会(参議院森派)の総会があった。出席者のうち、数名の若手議員(名前は言わないが)が、「やっぱり、おかしいよなあ」と首をひねっていた。変だと思っても誰も声をあげない。なるほど、参議院自民党は北朝鮮のような状態だということが分かった。残念ながら自分一人が異を唱えたところで、この流れは変えられないだろう。が、この人事は必ず将来に「禍根」を残す。参院自民党のイメージを大きく悪化させることは間違いない。そして最初から苦戦が予想される3年後の参院選挙を、さらに壊滅的な結果へと導くだろう。自分で言うのもなんだけど、山本一太の予想はよく当たる。

 

 世の中にはバイオリズムというものがある。どんな組織にも透明性が求められ、自己責任と説明責任が厳しく問われる時代だ。自民党全体を揺るがすようなスキャンダルの芽もないわけではない。そんな中で、世の中の流れや国民感情に逆行したことを平然とやったら、必ず「しっぺ返し」を受けることになる。それが何なのかは分からない。具体的な理由やデータがあるわけでもない。政治家としての第六感だ。自分はいたずらに参議院の混乱を望んでいるわけではない。だから、こう言っておこう。「イヤな予感」がする。

 

追伸:先日、地元の支持者から電話があった。「安倍さんは、結局、責任取るって言ってたけど、辞めないんかい。なんだか、長老議員と同じような感じだいね。永田町の文化っつうか、さー。」「そんなこと、ありません。安倍晋三幹事長は本当はきっちりケジメをつけたかったんです。」 相手の言葉を聞きながら改めて思った。安倍氏は新世代の民主党リーダーに対抗出来る自民党の数少ない「切り札」のひとつだ。他の偉い人に責任が及ぶからという理由で無理矢理ポストに引き留めるのは、安倍氏を守ることではなく、安倍氏のカリスマを奪うことになる。本当に自民党の未来を考えるなら、スッキリと辞任させてあげたほうがいい。それが「安倍カード」を温存することになるのだから。