小泉内閣誕生以来、小泉純一郎総理の改革路線を一貫して支持してきた。総理になってからご馳走になったことはほとんどないし、資金援助を受けたこともないし、ましてや、ポストで便宜を図ってもらったことなど、ただの一度もない。が、小泉首相は(安倍晋三氏と並んで)自分が最も好きな政治家の一人だ。

 

 実は、政治の世界に入る前から、小泉さんには親近感があった。小泉首相は、故福田赳夫元総理の下で書生をしていたこともあり、群馬県とは深い繋がりがあった。参院福田派の世話役的存在だった亡父とも親しい関係だった。9年前に参議院議員に初当選。政治家になって2ヶ月も経たないうちに、自民党総裁選挙が行われた。そこで、橋本元総理に対抗して立候補した小泉さんの選対チームに加わることになった。しかも、小泉候補擁立に必要な30名の署名を集めるために最初に立ち上がった7人の侍の一人として。今回の参院選挙で復活した荒井広幸氏と組んで、選対の企画も担当した。それ時、初めて身近に接した小泉純一郎という人物の、直情的で、スッキリした人柄が好きになった。今でもその気持ちは変わらない。

 

 ただし、小泉改革を応援しているのは、小泉総理に対する個人的な感情からではない。ポストが欲しいからでもない。小泉内閣が掲げ、実行してきた政策が、日本再生のために必要だと信じているからだ。構造改革の方向性は、けして間違っていない。現在の改革路線を進めていく以外に、日本という国の競争力を取り戻す方法はないからだ。もちろん、小泉改革は完璧ではない。改革の設計図が精緻でない部分もあるし、政策実現のためのインフラが十分に整備されていないという弱点もあるし、変化の痛みを和らげる装置が不十分な面もある。が、財政出動中心の景気対策からの脱却、道路公団の民営化、地方分権や規制緩和の推進、派閥主義の打破を柱とした自民党改革等の政策は、派閥の論理の外で誕生した小泉総理でなければ出来なかった。だいいち、これだけ自民党の既得権益に勇気をもって切り込んだリーダーはいない。

 

 考えてみてほしい。過去12年間、歴代内閣がどんなに大規模な財政出動をやっても、経済は上向かなかった。徒に財政を悪化させ、子孫に大きなツケを残すだけの結果に終わった。その景気を(財政のばらまきという手段を全く使わずに)回復に向けて動かした。外交・安全保障について言えば、30年来の懸案だった「有事法制」を成立させ、北朝鮮との間に拉致問題や核問題解決のためのチャンネルを開いた。小泉首相が政治的リスクをかけて訪朝し、首脳会談を行わなかったら、10人の家族を帰国させることは出来なかった。(もちろん、これで幕引きにするなどということはあり得ないが。)こうしたことは正当に評価されるべきだ。

 

 だから、小泉総理にはあと2年の任期を全うし、その間に迷うことなく改革を進めてもらいたい。憲法改正への道筋も(任期中に)しっかりつけて欲しい。心からそう思っている。が、小泉内閣が歴史的役割を終える2年後、改革路線を引き継ぐのは「新しい世代」でなければならない。万一、小泉総理が(そんなことは絶対にないと信じているが)改革を自ら逆行させたり、改革の途中で抵抗勢力に無理矢理引きずり下ろされるようなことがあれば、その時は一人の政治家として決断し、行動しようと心に決めている。時計の針が逆回りするようなことになったら、どのみち自民党に未来はない。以上、自分の立場を改めて明確にした上で、参議院の人事に対する批判その3を書くことにしよう。

 

 さて、参議院自民党には「幹事長と議員会長は1年ごとに改選する」という内規がある。そのルールが昨年、突然、変えられた。どう変更されたかというと、「幹事長任期は1年のまま。議員会長の任期だけを3年に延長する」という仕組みになった。これは一体、どういう理屈でなされたのだろうか?

 

 調べてみると、確かに参議院自民党の幹部会議(執行部会?)に議題として出され、承認されているようだ。この執行部会で、こんな理屈のないルール変更に異論を挟んだ幹部は1人もいなかったのだろうか? とにかく、この件は執行部会の決定を受けてどこかの議員総会(特別総会?)にかけられ、承認されたらしい。であれば、一応、正式なプロセスは経ていることになる。が、この「議員会長任期のみの3年延長」が議員総会で決まったという認識を持っている参院自民党の議員は、ごく少数だと思う。自分でさえ、いつどう決まったのかを思い出せないくらいなのだから。なぜ、幹事長はそのままで議員会長だけの任期を伸ばすのか??どう考えても、次期の議員会長を目指す人物が、自分の地位を安定させるために画策したとしか思えない。参議院自民党を長く見てきたあるスタッフがつぶやいていた。「こんなこと、あの参院自民党のドンと呼ばれた村上幹事長でさえ、やりませんでしたよ!!」

 

 本日の午後、中国出張から戻ってきた。現地で書きためたレポートは内容を修正した上で(掲載順が前後するが)少し後に掲載することにしたい。26日には議員総会で「青木議員会長」が正式決定することになる。それまでに書いておかねばならないことがある。続きは「不可解な人事:その4」で。

追伸:地元の有権者の中にも、「一太君、おれは小泉さんを応援してきたけどさ。でも、改革のスピードが遅いよな!」とか、「私が思うに、小泉改革は結局、中途半端じゃないかしら。道路公団の民営化なんて、最初の目的とちょっと違うんじゃない」などと批判する人々がいる。

 正直言って、自分も時々同じようなフラストレーションを感じないわけではない。が、現実の政治はそんなに生易しいものではない。小泉改革が不十分だと指摘する人たちには、一度でいいから、議員バッジをつけて(たとえ1ヶ月でも)永田町の内部を歩き回ってもらいたいと思ってしまう。そうすればきっと理解してもらえるだろう。現在の政治状況、特に、既得権益とガッチリ結びついた自民党の古い体質の中で、改革を進めることがいかに危険で、勇気のいることか。

 残念ながら、この古い政治システムをぶっ壊せる突破力を持ったリーダーは、今のところ小泉首相しか見あたらない。カッコいい理屈を言うのは誰でも出来る。