午前2時30分。ホテルの部屋で出張1日目のレポートをしたためている。本日の日程を振り返ってみると…午前11時にダレス空港に到着。ワシントンDC市内のヒルトンホテルにチェックインした。ホテルの部屋でシャワーを浴び、背広に着替えてから、旧知の日本大使館公使主催(加藤米国大使は不在)による昼食会へ。前日から近くのホテルに泊まっていた山本事務所の外交スタッフ(スウェーデン人)も同行させた。3人の公使と参事官を相手に、日米関係の現状(日米関係は本当に成熟したのか)について(たっぷり)議論した。

 

 午後3時。米国国務省にジェームズ・ケリー国務次官補を訪ねた。ケリー氏は言わずと知れた六者協議の米国チーム代表。やはり6者協議の中国側の代表であり、間もなく日本大使として赴任する予定の王毅外務次官とは何度も会っている。北朝鮮問題に関わってきた参院外交委員長として、ケリー次官補にはどこかで会いたいと思っていた。ケリー氏は会うなり、「ええと。この会談に通訳は必要ですか?」と聞いてきた。「いいえ、要りません」と答えると、ニッコリしながら、「ああ、良かった。それじゃあ、時間を有効に使えますね。」と言っていた。通訳を介したミーティングには飽き飽きしている様子だった。約30分。前回の六者協議の成果や北朝鮮の真意、日米韓の連携のあり方、今後の交渉の展望等について意見を交わした。「実は明日の上院外交委員会の公聴会に呼ばれているんです。そこで今日話したようなことを証言しないといけない」と話していた。

 

 会談の最後に、「あなたは、六者協議のプロセスで実際に北朝鮮政府と交渉してきたわけですが、北朝鮮は核武装という選択肢を本当に完全廃棄すると思いますか? そうだとすると、この問題はどのくらいで解決すると考えていますか?」と聞いた。ケリー氏の答えは、「北朝鮮が核開発を放棄するというのは十分可能性があると思う。どのくらいかかるかと言えば、かかるだけかかるということでしょう。」というものだった。ケリー次官補は、噂のとおり、真面目で優しい人物。が、それにしても、この人、縦も横も、おっきいなー。(身長は190センチ以上、あると思う。) 

 夕方。大使館を通じてアポイントを申し入れていたオルブライト元国務長官の秘書から、「残念ながら、今回はどうしても日程が取れない。次はぜひお目にかかりたい」というメッセージが返ってきた。そもそも、クリントン政権で国務長官にまで登りつめ、現在もジョージタウン大学の教授やコンサルタント事務所の代表(?)として多忙を極めるオルブライト氏に対し、数日前に面会を申し込むこと自体が(普通なら)無謀なことだ。が、そこは米国留学時代(ジョージタウン大学院時代)の恩師。「夕方なら少し時間が取れるかも知れない」という反応を返してくれていた。次回訪米した際には、きっと時間を作ってくれるだろう。ホテルの部屋に戻り、明日のミーティングの資料を読むことにした。

 

 夜は議会関係のシンクタンクに務める米国人の友人と夕食を食べた。ここでも、「日米関係は本当に深化し、成熟しているのか」が話題になった。少なくとも議会のレベルでは、日本に対する関心は急速に薄れている。今に始まったことではないが、国務省も国防総省も完全に中国シフトだ。

 

 気がつくと午前3時を回っている。明日は、今回の訪米の主目的であるルーガー上院外交委員長との会談がセットされている。ルーガー委員長に渡す英語の提言メモは少し修正する必要がありそうだ。明日の朝、隣のホテルに宿泊している外交スタッフを呼んで打ち合わせることにした。ホテルのフロントにモーニングコールを頼んでおかないと。それにしても、レポートをタイムリーに載せられないのが、ちょっと悔しい。