今回の総理訪朝が成功するかどうかは分からない。日朝の事務レベルでいかに詳細に事前のシナリオを書こうとしても、常に不確定要素が残る。専制君主である金正日総書記に「事前に振り付けをする」などということは誰にも出来ないからだ。北朝鮮側から出てくる大まかな感触を踏まえ、具体的な交渉内容や合意文書については、小泉総理が首脳会談の現場で(その時の状況に応じて)判断するという局面も多くあるだろう。

 

 今回の訪朝には、川口順子外務大臣が同行すると聞いた。当然、外務省の田中・藪中コンビも一緒に違いない。出来ることなら(総理の判断のバランスを取るためにも)安倍幹事長のような立場の政治家を訪朝チームに加えるべきだと思う。この布陣では(小泉首相がいかに「政治的天才」であったとしても)北朝鮮のしたたかな外交に振り回される可能性がある。少し心配だ。

 

 政治家、ましてや政治リーダーの決断には常にリスクが伴う。永田町では、今回の再訪朝を「危険な政治的カケ」だという人が多い。小泉応援隊と言われる自分だって、総理再訪朝には(どちらかと言えば)慎重な立場だ。が、こうした小泉流は今に始まったことではない。

 

 小泉純一郎という政治家は尋常の総理大臣ではない。政権発足以来、これだけ様々な批判や攻撃を受けながら、30年かかっても出来なかった有事法制を成立させ、イラクへの自衛隊派遣を決断し、人質問題を解決し、日米首脳の間に空前の信頼関係を築き、構造改革(道路公団や郵政事業の民営化等)を断行し、自民党の既得権益にメスを入れ、派閥文化を溶解させ、憲法改正へのロードマップを描き、財政出動を伴わない景気の自立回復にメドをつけ、そしてその上で、政権開始3年目にして、50%という(自民党総裁としては異例の)高い支持率をキープしている。もちろん弱点もないわけではないが、「戦国武将のような政治的天才に天運がついている状態」という山本一太流の表現はポイントを外していないと思う。菅直人さん程度の人物が対抗出来るような「タマ」ではない。

 

 自分が小泉総理の立場だったら、こんな決断が出来るだろうか。改めてこの問題に対する自分の見解を述べておこう。総理が(このタイミングで)北朝鮮を再訪朝するという「切り札」を切ることが、(中・長期的に見て)核開発や拉致という日本国民の安全や主権に関わる問題を解決するために果たしてプラスなのか、それともマイナスなのか。それはよく分からない。が、いったん決断した(自ら平壌に出向く)からには、外交的成果をあげてもらわねばならない。最初のステップとして8人の家族を全員、救い出してもらわねば(最初から)訪朝の意味がない。日本再生のための構造改革は道半ばだ。自民党の古い体質や既得権益の壁を乗り越えて「痛みのともなう改革」を断行できる突破力をもった総理は、他には全く見あたらない。あと3年、きっちりと「ぶっ壊して」もらう。そして、その後は我々の世代がしっかりと「改革」を引き継いでいく必要がある。

 

追伸:妻は仕事関係の夕食会(?)があるとのこと。都内の某レストランで一人で夕食を食べている。夜は何も会合を入れなかった。さあ、早めに家に戻って「憲法」の勉強をしないと。