前回のレポートの続き。亡くなった両親のうち、なぜ母親のことばかり思い出すのか。それには理由がある。父親は最後の瞬間まで政治家だった。66歳はちょっと若すぎると思いつつも、これだけ自分の思い通りに生きたのだから本望だろうという気持ちがある。これに対して、母は、父の選挙で長年苦労してきた。不本意にも息子の選挙にまで引っ張り出してしまった。これからゆっくりと余生を楽しんでもらおうと思っていた矢先に、突然の病魔で(しかもあっという間に)逝ってしまった。「こんなことなら生前、もっと親孝行しておけばよかった。」そういう後悔の念が、ちょっとした拍子に母の笑顔や仕草を心のスライドに映し出す。きっとそうだ。

 

 母親がよく、こんなことを話していた。「人にはそれぞれプライドというものがあるんだから。大勢の前で(公の場所で)名前をあげて人を中傷したり、悪口を言ったりしたらいけないのよ。他人を批判して名前を売ったり、のし上がったりする人には必ずいつか(しっぺ返し)がくる。還元の法則というのがあって、悪い言霊を発すると必ず自分に戻ってくるものなんだからね。」

 

 なるほど。このアドバイスには不思議な説得力がある。政界においても悪役の疑惑追及なんかで名を馳せた政治家って、ほとんど躓いている。怒りにまかせて「相手の人格や存在そのものを否定するような」フレーズが出かかった時には(このレポートで実名をあげて誰かを批判したい衝動にかられた時にも)いつも母のこの言葉をかみしめるようにしている。

 

 ああ、自分はなんてハートの小さな人間だろう。だって(正直言って)「どうしても好きになれない政治家」(人を憎むことは出来ないけど)がいるし、「どうしても許せないこと」がある。そしてどうしても許せないことについては、必ず相手に責任を取ってもらおうと思っている。状況をじっと見極め、耳をそばだてながら、いつか必ず反撃する(痛撃を与えてみせる)と心に決めていたりする。もっと恐ろしいのは、無意識にそのための準備を進めていたりすることだ。

 

 おっかしーなあ。ラテン系でいやなことはすぐ忘れてしまうたちなのに。(重要なことまで忘れるのが問題だけど。)こんなにアグレッシブ(攻撃的)な一面があったなんて。政治家になるまで全く気がつかなかった。「心に潜む悪魔」を追い払うためにも、時々は母の言葉を思い出す必要がありそうだ。

 

こんなことを国政レポートに書く政治家っているだろうか。またまた「あなたのレポートは私小説ですか?」なんてメールで言われてしまいそうだ。でも、このまま掲載する。立派なことばかり書いてあるレポートなんて、どこか嘘くさい。

追伸;昼過ぎ。ここ数日連絡不能だった友人から電話が入ってきた。それだけで元気になれた気がした。