11月28日。朝の成田エクスプレスで空港へ。いつものように往復のエコノミー席を予約していた。が、大韓航空の「お客様感謝キャンペーン」(?)の期間中とかで、ビジネス席にアップグレード(振り替え)してもらえることが判明した。ラッキーと思っていたら、空港のチェックイン・カウンターでさらなる幸運が。ビジネス席が満杯なので、ファースト・クラスに移ってほしいとのこと。エコノミーの料金でファーストに乗れるとは...すっかりご機嫌でジャンボに乗り込んだ。

 

 巨大なインチョン空港から1人でタクシーに乗り、ソウル市内のホテルに向かう。日本大使館には送迎を頼まなかった。政治家の世話なんかしてる暇があったら、その分は日韓外交に費やしてもらったほうがよっぽど生産的だ。空港から市内に向かう弾丸道路を約1時間走って、常宿(ホリデー・イン)に到着した。午後3時30分。迎えに来た大使館の車で外交通商部へ。ユン・ヨングァン外交通商部長官(大臣)と通訳を入れずに、たっぷり1時間、英語で意見を交わした。もしかすると、日韓外相会談より長かったりして。そうそう、説明しておくと、韓国では金大中政権下で外交部(外務省)と通商部(通産省)が合体して外交通商省というのが作られた。韓国では最も影響力のある官庁だ。

 

 中国の王毅外交部副部長(外務次官)の時と同様、この委員長ー外相会談のことは事前に発表しなかった。うーん。委員長のプレステージ(存在感)を高めるという点では、もう少し宣伝しておいたほうが良かったかもしれない。米国上院のルーガー外交委員長とか、アナン国連事務総長にアポが取れた時は、そうすることにしよう。

 

 さて、ユン長官は米国の大学で博士号を取得した国際政治学者。冷静で論理的なジェントルマンだった。北朝鮮をめぐる六者協議や韓国のイラクに対する対応等について率直な議論をやった。「米国と韓国の関係がスムーズにいっていないことを心配しています。非武装地帯の在韓米軍の再配置問題も気になります。ご存じのとおり、ノ・ムヒョン大統領の側近グループ(青瓦台スタッフ)は、ブッシュ政権からタリバンとまで呼ばれてます。」「このままでは日米韓の局長級協議は形骸化し、日米中になってしまう可能性があります。」「北朝鮮に対峙するには日米韓の連携が欠かせません。アジア太平洋における日本の真の戦略的パートナーが韓国であることは言うまでもありません。」次々に本音をぶつけた。

 

 これに対してユン長官は、さすがに外相という立場を考えながら、「ご心配はありがたいが、米韓の信頼関係は依然強固だ。」とか、「イラクに対する韓国の貢献は米政府から高く評価されている。」などと答えていた。が、こちらの意見には、きちんと耳を傾けてくれた。「長官、ちょっとストレートに言い過ぎたかもしれません。自分の言い方に無礼があったらお許しください。」「いやいや、山本委員長の率直な意見には感謝します。参考になりました。」

 

 会談の最後に外為法改正と特定船舶入港禁止法案(仮称)について説明することも忘れなかった。ユン長官は、「いささか懸念をおぼえる。北朝鮮に対して強硬策を取るというのは一つの選択肢だが、タイミングを良く考えるべきだ。北が交渉の姿勢を示しているのだから、外交努力を優先させるべきだ」とコメントした。すかさず、「外為法を改正したからといって、そのまま経済制裁を発動するというわけではありません。政府に抑止の選択肢を与えるということです」とつけ加えておいた。夜はソウルの大学路を一人で歩きながら、カフェに入った。ハーブティーを飲みながら、久々に韓国の雰囲気を味わった。

 

 翌朝(11月29日)も朝のフライト。朝7時にホテルを出発し、再びタクシーでインチョン空港に移動。東京行きの飛行機に飛び乗った。そのまま成田空港ー東京ー高崎というルートで選挙区に入る。地元の吾妻郡で弔問や挨拶回りをすませ、午後10時過ぎに東京に戻った。気がつくと午前12時を回っている。急遽、明日の「サンデープロジェクト」に出演することになった。ううむ。疲れて脳が働かない。頭の整理は、朝5時に起きてやることにしよう。