午前9時。ホテル「ニューオータニ」の一室で、来日中の曹永吉・韓国国防部長官(国防大臣)に会った。実は明日朝の便で韓国に飛び、外交通商相(外務・通商大臣)と会談する予定になっている。その際、国防大臣も訪ねるつもりだった。が、その日は「東京にいるので不在」という返事が返ってきた。早速、訪日のスケジュールをチェックし、急遽、面会を申し入れたというわけだ。

 

 国防大臣が最初に発した言葉は、「外交と防衛の両方を扱う重要な常任委員会の委員長と聞いたので、もっと年輩の政治家だと思っていたが...若いんですね」というものだった。韓国の国防大臣は歴代、軍の出身者が務めることになっている。もの静かな口調の中にも、生っ粋の職業軍人らしい迫力が感じられた。在韓米軍の再配置の問題、北朝鮮の軍事的脅威等について、約30分間、率直な意見を交わした。

 会談の最後に、「北朝鮮に対する外交カードを考える会」の有志6名でまとめた外為法改正案(すでに党内手続きを完了)の件に触れ、来年の通常国会で成立する可能性が高いこと、この法律改正はあくまで日本外交の抑止メカニズムを構築することが目的であることを説明した。軍事転用可能な技術や部品が日本から北朝鮮に流出している問題については、国防大臣も懸念を抱いている様子だった。

 

 午前10時15分。その外為法改正案の成立を確たるものにするため、「北朝鮮に対する外交カードを考える会」のメンバー4名と党本部の幹事長室を訪ねた。安倍幹事長に法案の最後のプッシュをお願いした。さらには、外為法改正と同時に「外交カードの会」で検討してきた「特定船舶入港禁止法」(仮称)に関しても、来年の通常国会への提出を目指して準備を始めたことを報告。安倍幹事長は2つの法案に対する全面的なサポートを約束してくれた。午後3時からの「北朝鮮による拉致問題対策本部」(本部長は自民党幹事長)の会合にも出席し、外為法改正の現状と船舶法案の流れについて説明した。集まった党幹部や党所属の国会議員に対し、改めて協力を要請した。

 

 「外交カードの会」として安倍晋三幹事長に手渡した要請文は以下のとおり。昨晩遅く、眠い目をこすりながら20分で書き上げた。朝、各メンバーに送ってチェックしてもらうつもりだったが、「要請文の内容は山ちゃんにまかせる」ということで、結局、山本案がそのまま採用された。

 

          「安倍晋三幹事長への要請」

 

 我々6名の自民党有志グループは、衆議院選挙前の臨時国会において、外国為替及び外国貿易法(いわゆる外為法)の改正案を議員立法によって成立させるべく奔走した。その目的は、現在の外為法を改正することで、日本の安全保障に脅威を与える第三国に対し、日本政府独自の判断で経済制裁(貿易・資金規制)を発動することを可能にするということだった。

 国会日程等の事情もあり、残念ながら臨時国会においてこの法律改正を実現することは出来なかった。しかしながら、この間、自民党の関連部会・政調審議会・総務会の了承を経て、同法案提出のための党内手続きを完了する段階までは到達している。

 昨日の衆議院予算委員会において、自民党を代表して質問に立った安倍晋三幹事長の「北朝鮮に対して我が国独自の判断で経済制裁を発動出来るようにしておくべきだ」との指摘に対し、小泉首相は「状況が悪化すれば検討しなければならない。いろいろ議論はあるが、選択肢を持つのはいいことだ」と前向きな答弁を行っている。

 こうした流れを受け、来年の通常国会における外為法改正案の成立を確実なものとするため、安倍幹事長には引き続き「単独で経済制裁を可能にする体制」を整備する推進力となっていただくことを切に要望する。

 さらに我々6名は、外交における抑止メカニズムのもう一つの道具立てとして「日本の安全保障に脅威を与える外国船舶の入港を禁止する法律」についても検討を重ねてきた。我々は、船舶に関するこの法案についても、12月末までに議員立法の原案をまとめ、来年1月の通常国会への提出を目指したいと考えている。こちらの法整備に関しても、安倍幹事長の力強い後押しをお願いしたい。

 小泉政権を支える党の顔としての安倍幹事長の八面六臂の活躍に改めて敬意を表する。対話と抑止のバランスに立脚した戦略的な日本外交を構築するため、今後も果敢な決断と行動を心から期待するものである。

平成15年11月27日

「北朝鮮に対する外交カードを考える会」

衆議院議員:菅義偉、河野太郎、水野賢一、増原義剛

参議院議員:小林裕、山本一太

 来週、早速6名で集まる予定だ。12月末までに「特定船舶入港禁止法案」(仮称)の原案をまとめたい。かなり大変な作業になりそうだ。